「北の山・じろう」時事問題などの日記

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公示価格の下げ幅縮小は朗報か!? 国交省の大本営発表と新聞各紙の提灯記事が見落とす実需不足と株式

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町田徹「ニュースの深層
公示価格の下げ幅縮小は朗報か!? 国交省の大本営発表と新聞各紙の提灯記事が見落とす実需不足と株式市場の"変調の兆し"
 2013年03月26日(火) 町田 徹
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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35249?page=2
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35249?page=3
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35249?page=4
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(1)

 国土交通省が先週21日に公表した地価調査で、前年より公示地価の下げ幅が縮小したことを受けて、アベノミクスが早くも効果をあげているかのように伝える提灯記事が溢れている。

 一例をあげると、「大都市地価、上向く 緩和マネー流入」(朝日新聞)、「脱デフレ 地価で先行」(日本経済新聞)といった具合だ。

 だが、こうした報道は、"大本営発表"を誇張するものに過ぎず、はしゃぎ過ぎの感が拭えない。

 新聞に期待される役割は、こんな報道ではない。国土交通省の言う地価底入れが本物かどうかきちんと検証したうえで、下げ止まりを一過性のものにせず、アベノミクスを成功させるために必要な政策課題を明らかにする姿勢が求められるのである。

珍しく明るい話題を報じた22日の新聞各紙

 先週もマスメディアでは、福島第一原発事故の冷却トラブルやTPP(環太平洋経済連携協定)交渉を巡る百家争鳴を伝える記事が目立ち、うんざりし た人もいるだろう。そうした中で、地価に下げ止まりの兆しが出てきたとか、地価が日本一高い場所、あるいは東日本大震災の被災地の地価上昇を伝えた22日 の新聞各紙の記事が珍しく明るい話題だったと記憶している向きが多いのではないだろうか。

 そう、東京都中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」と千代田区丸の内2丁目の「丸の内ビルディング」がそろって1㎡当たり2,700万円と2年 連続地価日本一の座を仲良く分けあったとか、宮城県が住宅地の地価上昇率で初めて全国トップになったことを伝えた一連の記事である。

(2)

 かつての土地神話が一変、長年低迷を続ける経済の象徴の一つになってしまった地価の下落が今度こそ終わりを告げて、本格的な上昇に転じるのならば、それを多くの人が朗報と捉えるのはある意味で自然なことだろう。

 しかし、それらの記事は信頼に足るだろうか。実際に、国土交通省の「平成25年度地価公示」の変動率(全国平均)をみてみると、全国の地価は前年比でマイナス1.8%。そこから言えることは、平成21年以来、今回で実に5年連続の下落となったということに過ぎない。 

 用途別地価の動きを見ても、住宅地がマイナス1.6%、宅地見込地がマイナス3.4%、商業地がマイナス2.1%、工業地がマイナス2.2%と四分野すべてで下落が続いている。

 逆に、プラスになったのは、都道府県別に住宅地、宅地見込み地、商業地、工業地の4つのカテゴリーをみて、宮城県の住宅地(プラス1.4%)、宅 地見込地(プラス2.7%)、工業地(プラス2.0%)、神奈川県の商業地(プラス0.2%)、愛知県の住宅地(プラス0.1%)だけなのだ。全部で 184ヵ所あるうちのわずか5ヵ所でしか上昇がみられないのである。

国土交通省の我田引水の大本営発表

 ところが、この貧弱な実態を棚に上げて、国土交通省は、「平成25年度地価公示結果の概要」で、「平成24年1月以降の1年間の地価は、全国的に 依然として下落を示したが、下落率は縮小し、上昇・横ばいの地点も大幅に増加し、一部地域において回復傾向が見られる」と我田引水の見解を公表した。

 その根拠は「都道府県地価調査(7月1日時点の調査)との共通地点で半年毎の地価動向をみると、前半に比べ後半は下落率が縮小している」ということぐらいだ。国土交通省の姿勢には、戦時中の大本営発表を彷彿とさせるものがある。

 こうした見解は、年号が平成に変わってから、ある年に地価下落率が縮小しても、その翌年に下落幅が再び拡大して2番底を付けたケースが繰り返されていることを無視した一方的見解と言わざるを得ない。

 ちなみに、公示地価の下落率は、平成7年にマイナス3.0%に縮小した後、翌8年にマイナス4.0%に再拡大した。また、10年にマイナス 2.4%に縮小した後、翌11年に再びマイナス4.6%に急拡大した例もある。特に、10年のケースは18年まで下落が継続した深刻なケースとして記録さ れている。

 ここ2、3年を振り返ってみても、「地価底入れ」は、大手不動産会社の売りたい強気に過ぎず、掛け声倒れに終わり、実態を伴っていない。

 にもかかわらず、国土交通省の根拠乏しき我田引水の発表姿勢を冷静に論評すべき立場の新聞各紙が、国交省の見解を煽る形で報道したのだから、何をかいわんや、である。


(3)

 諸紙の中で最も目を覆いたくなるのが、冒頭で触れた朝日新聞の記事だ。同紙は22日付朝刊の1面トップで、前述の「大都市地価、上向く 緩和マネー流入」という大見出しを掲げただけでなく、本文でも、

 「国土交通省は21日、2013年1月1日時点の『公示地価』を発表した。全国では住宅地、商業地とも5年続けて前年より下がったが、東京(首都 圏)、大阪、名古屋の3大都市圏は08年秋のリーマン・ショックで落ち込んだ地価がほぼ下げ止まった。さらに安倍政権の経済政策『アベノミクス』による金 融緩和で余ったお金が不動産に流れ込み、大都市を中心に地価が上がり始めている」

 と、露骨に安倍政権に媚びる姿勢を見せた。

新聞自身の混乱を映す提灯記事

 いくらなんでも、昨年暮れ12月26日に発足したばかりの安倍政権の経済政策によっておカネが不動産市場に流れ込み、不動産取引が活発化、その実 績をもとに算出される1月1日付の公示価格が大都市で上向いた、などということはあり得ないだろう。たったの5日しかなかったのだから。

 あえてアベノミクスに触れるにしても、せめて読売新聞のように「安倍政権の経済政策『アベノミクス』で円高修正と株高が進み、今年1月以降、不動 産市場への資金流入が続いており、取引の活発化を通じて日本経済全体に弾みがつくと期待が高まっている」と、今後を左右する要因にとどめるべきだったので はないだろうか。

 朝日は「東京(首都圏)、大阪、名古屋の3大都市圏は08年秋のリーマン・ショックで落ち込んだ地価がほぼ下げ止まった」と報じているが、実際の 発表データを見ると、東京圏の住宅地は前年比マイナス0.7%、商業地は同マイナス0.5%、大阪圏はマイナス0.9%とマイナス0.5%、名古屋圏はプ ラスマイナス0%とマイナス0.3%だ。

 また、新聞自身の混乱を映しているとしか思えないのが、日本経済新聞が22日の朝刊3面で報じた「脱デフレ 地価で先行」という解説記事である。

 この記事は、「安倍晋三首相の経済政策、アベノミクスへの期待も投資マネーを不動産市場に呼び込む。主役は不動産投資信託REIT)だ。(中 略)今年に入ってからの物件取得額は21日発表分までで約8,500億円。昨年1年間の7,800億円を超え、約1兆円だった08年に迫る」と政府を持ち 上げる内容だ。

 ところが、後段で「ただ、投資マネー主導の地価底入れには関門も多い。REIT相場の上昇はオフィス賃料の反転期待が支えだが、賃料は都心でも小 幅下落が続く。実体経済が上向いて賃料が反転しなければ、REITの魅力は薄れ、不動産市場への資金の流入は細る可能性がある」と自己否定する体裁をとっ ているのである。


(4)

 そもそも、経済指標として、遅れて経済実態を反映する性格の強い「遅行指標」と位置付けられている「公示地価」や「地価」を、「脱デフレ」という 経済の先行きを反映したものとして読み解こうとした解説記事の目の付けどころに無理があると言わざるを得ない。むしろ、現在のような局面で注目するべき は、経済の代表的な先行指標である株式市場の動きだろう。

アベノミクスで大切なのは「第3の矢」

 株式市場では、昨年11月半ば以来、政権交代やアベノミクス期待を囃して、日経平均株価が急騰してきたが、ここへきて"変調の兆し"とも取れる動きが出ているからだ。

 その異変とは、日経平均株価が先週3月18日に前週末比340円32銭安と今年最大の下げ幅を、そのわずか3日後の22日には前日比297円16銭安と今年2番目の下げ幅を、それぞれ記録したことである。

 株式市場では、急騰と急落が繰り返されるような局面は、それまでの上昇相場の上げピッチが早過ぎて高値警戒感が強まってきたことの表れとみなされ ることが珍しくない。単に、上昇ピッチが早過ぎただけで一過性の乱高下で終わることもあれば、ずっと深刻で歴史的な上げ相場の終焉が迫っている時もある。

 このところ、不動産市場、特にREIT市場でも、株式市場の急騰を追うように投資が急拡大しただけに、いつ高値警戒感が台頭してきてもおかしくはない。

 というのは、首都圏のオフィス需要にみられるように、人口減少社会に直面して「実需がないという構造的なネックが一向に解消されていない」(不動 産開発業者)からだ。また、「消費税増税前の駆け込み需要が一段落すれば、マンション・住宅需要が冷え込んでも不思議はない」(同)と警鐘を鳴らす向きも ある。

 本コラムでは何度も指摘してきたが、アベノミクスで大切なのは、「3本の矢」の3本目、成長戦略(構造改革)だ。マネーを操る金融政策(1本目の 矢)や、痛み止めのばら撒きのような補正予算(2本目の矢)はその場しのぎで、力不足なのである。3本目の矢が無ければ、日本経済の立て直しは覚束ない。

 まだ地価が下がり続けているにもかかわらず、公示価格を下げ止まりの兆候と決め付ける国土交通省の世論操作と、十分な検証もないままに、その発表に提灯を付ける新聞記事によって、デフレの克服や経済の成長が実現する道理などないのである。

安倍政権がいまだに打ち出せない「第3の矢」の具体策を速やかに示さないと、株式市場の"変調の兆し"が本物になりかねないのである。

 

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TPPの本協議はまだ始まっていない! 反対派の不安を煽るよりもまず、オバマ政権に「ファストトラッ

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町田徹「ニュースの深層
 2013年04月02日(火) 町田 徹
TPPの本協議はまだ始まっていない! 反対派の不安を煽るよりもまず、オバマ政権に「ファストトラック」獲得要求を!
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(1)

安倍晋三首相が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を公式に表明してから半月あまりが経過した。メディアには、相変わらず、米政府の強硬姿勢を演出して懸念を煽るような報道や、反対派の不満を代弁するような記事が後を絶たない。

 背景にあるのは、日米2国間の事前協議の内容について、両政府が開示しない方針を採っていることだろう。これが災いして、何か不都合なことが起きているに違いないと取材・報道する側が必要以上に疑心暗鬼になっているように映る。

 しかし、筆者がより突っ込んで取材をしたところ、そうした記事は、事実を正確に伝えるとは言い難いという印象を持った。むしろ、ようやく日本が交 渉参加を正式表明したことを、とりあえず歓迎するムードが事前協議の米側窓口には強いようだ。自動車や保険といった個別の問題を含めて、強硬かつ理不尽な 要求を持ち出した形跡は確認できなかった。

 そこで、あえて、この段階で、政府に対米要求として掲げて貰いたい問題がある。それは、本来、米議会の権限である通商に関する外交交渉の権限を大統領府に委ねる「ファストトラック」(一括承認手続き)の獲得だ。

 今後、両政府がギリギリの交渉の末に辿り着くであろう妥協案が議会による卓袱台返しに遭うリスクをなくすため、是非、早期に「ファストトラック」を獲得するようオバマ政権に働きかける必要性があるのではないだろうか。

自由貿易は日本の生命線

 「今がラストチャンス。この機会を逃すと、日本が世界のルール作りから取り残される」

 安倍首相は3月15日に官邸で開いた記者会見でこう語り、満を持して準備してきたTPPの交渉参加を正式に表明した。

 

(2)

 太平洋を取り囲む11ヵ国は、今年10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での大筋合意を目指している。残された協議は、5、7、9月の3回だけ。

 日本がなんとか7月から協議に参加するためには、すでに日本の参加を事実上、了承、歓迎する姿勢を示しているチリ、シンガポール、ペルー、ブルネ イ、マレーシア、ベトナムの6ヵ国に加えて、農産物や木材の関税引き下げなどで日本と利害が対立し易い米国、オーストラリア、ニュージランド、日本に先駆 けて交渉参加を表明したカナダ、メキシコと事前協議を行って交渉参加の承認を取り付ける必要がある。そうした根回しに残された時間は、まさに残りわずか だ。

 自由貿易は、日本の生命線だ。列強の関税引き上げ競争とブロック経済圏の構築が引き金になった第2次世界大戦の轍を踏んではならない。

 自由貿易体制は、それぞれの国が相手国に比べて優位にあるモノやサービスを輸出し合い、相互に雇用機会を増やすことによって、それぞれの繁栄を保障し合うものだ。

 戦後の日本は、原材料を輸入して完成品を輸出する加工貿易や通商を足掛かりに、戦後復興と高度成長の道を切り開いてきた。

 リーマンショックを克服し切れず、尖閣諸島などの領土問題が存在する現状は、大恐慌満州事変日中戦争を抱えていた戦前と背景が酷似している。 それだけに、以前にもまして、自由貿易体制の維持と拡大が重要になっている。日本として積極的にTPPにコミットしていく重要性が増していることも言うま でもない。

米側の強硬姿勢を報じる記者たちの勇み足

 筆者は、チリ、シンガポール、ペルー、ブルネイの4ヵ国が「パシフィック4」という名で自由貿易協定交渉を進めて、そのTPPへの拡大を密かに日 本に打診してきた福田康夫内閣当時から、早期の交渉参加を主張してきた。歴代内閣が先送りを繰り返した結果、遅すぎた感はある。が、それでも救命ボートの 最後の空席に乗る意思を表明できたことは、発足から100日間あまりの安倍政権の施策の中では、最も意義深い事例と高く評価している。

 ただ、外交交渉では、双方が主張する成果を得るために、相互に譲歩することが避けられない。交渉の途中段階で、譲り合うカードをガラス張りにした のでは、それぞれの国内の反対派の不満が再燃し、交渉の妨げになりかねない。それゆえ、関係閣僚たちは、日米事前協議について「中身は言えない」の一点張 りだ。直接交渉を担当する官僚たちにも厳しい情報管制を敷いている。

 この秘密主義はある程度やむを得ないのかもしれない。しかし、こうした情報管制は、諸刃の剣だ。日々、政府の動向を取材している政治部、経済部所属の新聞記者たちがネタ枯れになるからだ。隠すのは何か悪いことが起きている証拠と早合点する記者もいる。


(3)

 そうした記者たちの勇み足としか思えないのが、日米事前協議の自動車、保険といった個別分野での米側の強硬姿勢を報じる記事だ。

 例えば、自動車では、日本独特の軽自動車優遇税制について、米国車の輸出を阻むものとして撤廃を迫っているとか、米側の乗用車2.5%、トラック 25%の輸入関税の引き下げをTPPに先んじて発効した米韓FTA協定よりも大幅に遅らせることを了解するように日本に迫ったと示唆する報道だ。

 具体例をあげると、3月22日付の日本経済新聞は「TPPを知る」という連載の中で、「米国との事前協議 車や保険 決着遠く」という記事を掲載し、「(米側の輸入関税を)当面保つ方針で折り合った」「完全な決着はまだ遠い。(中略)乗用車とトラックの関税を維持する猶 予期間をどの程度にするかも論点だ」と報じている。

 だが、筆者が政府やその周辺を取材する限り、そもそも軽自動車優遇税制の撤廃を米政府が要求しているという話は誰も聞いていないようだ。関税につ いても、本協議の場で議論すべき話なので、その際に、全体の行方を見ながら決定したい、というのが米側の意向だったというのが本当のところのようだ。

 つまり、本来、本協議の場で議論するテーマを、事前協議で取り上げなかったという当たり前の話に過ぎないのだ。それにもかかわらず、事前協議で決 着できなかった論点として報じるのは無茶としか言いようがない。米韓FTA云々の話もすでに発効しており、自由化が始まっている協定と同格で実施スピード を比較するのは筋違いだ。

一つの業界のエゴに固執せず全体の利益を直視せよ

 これらの記事を書いた記者たちは、フォードに代表されるデトロイト3の言い分とその影響力を過大に評価しているのではないか。業界の主張を、いちいち米政府がまともに事前協議で主張したとする報道は行き過ぎだ。

 むしろ、米有力紙ワシントンポストが3月15日付の「日本との自由貿易交渉の恩恵」と題した社説で、米自動車業の利益を代弁する連邦議会の議員グ ループがオバマ大統領に送り付けた書簡を槍玉に挙げて、「自由貿易の要点は双方の比較優位性を極大化できることであって、すべてのものの流れを等しくする ことを保障するものではない」と切り捨てていることにこそ注目すべきだろう。

 米国の良識あるメディアは、自動車という一つの業界のエゴに固執せず、全体の利益を直視せよと訴えているのである。

 問題の日経記事は、保険についても、「米国はがん保険などの市場での公正な競争を確保するよう要求。特に政府が株を持つ日本郵政グループのかんぽ 生命保険の新規参入に強く反発している」としているが、同社は斉藤次郎前社長時代にがん保険への早期参入の自粛を表明済み。がん保険は両国間の主要な争点 にはなっていない。

 

(4)

 そもそも、株式の政府保有を問題にするならば、21あるTPPの協議分野の中の「金融サービス」ではなく、「政府調達」や「競争政策」といった分野のはずである。

 余談だが、この分野は、自由競争の拡大に伴う消費者利便の向上よりも、現行のシェアを維持しようとする国内業界の既得権優先という業界エゴと、そ うした業界に肩入れする金融当局の問題が根底に潜んでいることも見逃してはならないはずである。が、最近の大手紙の報道には、そうした真相を追及しようと いう気概が見られなくなった。

オバマ政権にとってもファストトラックの獲得は避けて通れない

 ようやく事前交渉に辿り着いた今、期待されるのは、国内の反対派の懸念や不安をいたずらに煽るような報道ではない。

 冒頭でも述べたが、安倍政権はもちろん、新聞各紙にももっと関心を持って貰いたいのは、北米自由貿易協定(NAFTA)や米豪FTAなど過去の通商協議で不可欠だった「ファストトラック」を、オバマ政権が今なお議会から取り付けていない問題である。

 ファストトラックとは本来、「追い越し車線」「出世街道」などの意味で、転じて、米議会に帰属する外交交渉の権利の一部を大統領府に委託して、同 府が外国政府との間で合意した協定案に関して、議会に部分的な修正を行う権限を放棄させて、無修正で批准するか否かだけを問うことができる権利をいう。通 商法の重要項目で、1970年代に原型が確立されたが、94年から数年間にわたって失効、ブッシュ前大統領時代の2007年にも再び延長を拒否されて、今 日に至っている。

 日本など交渉相手国から見れば、国益がぶつかりあう米政府との交渉でギリギリの妥協点を見い出すことができたとしても、米議会の政治的エゴで修正を要求されて、せっかくの交渉結果を反故にされかねないリスクが存在しているのだ。

 米通商代表部(USTR)のマランティス代表代行はここへきて、米政府に交渉の当事者能力がないと言われかねない状態を解消するため、議会にファストトラックの付与を求める方針を強調し始めているという。

 与党・民主党内には慎重論が多くオバマ大統領には逆風だが、在任中の大きな業績のひとつとしてTPP交渉を妥結させたいのならば、ファストトラックの獲得は避けて通れない重要なステップだ。ここは安倍首相も、大統領の議会工作の側面支援を欠かしてはならないはずである。


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「円安」値上げの春がやってきた 電気・ガス、小麦、食用油にブランド品…<J-CASTニュース>

J-CASTニュース
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「円安」値上げの春がやってきた 電気・ガス、小麦、食用油にブランド品…
2013/3/29 18:58
http://www.j-cast.com/2013/03/29171839.html
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(1)
  アベノミクス効果による円安で、2013年4月以降、さまざまなものが値上がりする。

   電気・ガス、小麦や食用油、「シーチキン」にトイレットペーパーやティッシュペーパー、宝飾ブランドの「ティファニー」なども値上げに踏み切る。輸出企業には追い風でも、輸入品には「副作用」となる。

電気料金は「まだ上がる」

   電気・ガスの値上げは深刻だ。電力10社と都市ガス大手4社は2013年3月28日、5月の料金を値上げすると発表した。円安の進行で液化天然ガス(LNG)や原油の輸入価格が軒並み高騰を続け、4月に続いて2か月連続の一斉値上げだ。

   5月の料金は12年12月~13年2月の平均燃料価格から算出。12年11月~13年1月と比べてLNGは7.5%、原油は4.4%、石炭も4.3%とそれぞれ高騰。原燃料価格の変動を料金に反映させる原燃料費調整(燃調)制度に基づいて値上げする。

   電気料金は、再生可能エネルギー全量買い取り制度に伴う上乗せ分も5月から増額となる見通しで、その分値上がりする。さらには、関西電力と九州電力は料金体系そのものを見直し、国に認可を求めているところ。認められれば、5月にも値上げする予定だ。

   東北電力四国電力も値上げ申請、北海道電力も申請を表明している。

   一方、国が輸入して製粉会社に売り渡す小麦の価格が4月1日から平均9.7%引き上げられることに伴い、製粉最大手の日清製粉は6月20日の出荷分から業務用の小麦粉を値上げする。

   円安による輸入価格の上昇とともに、小麦の国際価格の上昇が原因だ。値上げ幅はパンの材料になる強力系小麦粉が25キログラムあたり145 円、うどんや菓子の材料になる中力系・薄力系小麦粉で215円、国内産小麦100%の小麦粉で170円。家庭用の小麦粉も4月下旬に値上げを打ち出す見通 しという。

   値上げは12年12月以来ということもあり、食品メーカーや小売店がどこまで応じるかは不透明だ。とはいえ、材料コストが上がれば、パンやうどんの価格に転嫁されることになる。

   また、日清オイリオグループとJ‐オイルミルズは4月1日の出荷分から食用油を値上げ。値上げ幅は、大豆や菜種を原料とする家庭用が1キログ ラムあたり30円以上、業務用が1缶(16.5キログラム)あたり500円以上。食用油の値上げは半年ぶりだが、上げ幅はそれを上回る。

(2)

「シーチキン」は内容量減らして「実質値上げ」

   はごろもフーズは、急激な円安と原料の「びんながまぐろ」や「きはだまぐろ」「かつお」の価格が漁獲規制の強化の影響で高騰。また輸入頼みの食油の価格上昇で、「シーチキン」ブランドの16品目を5月1日の出荷分から2.2%~6.1%値上げする。

   さらに6月出荷分からは、「シーチキンLフレーク」と「シーチキンマイルド」の内容量を80グラムから70グラムに減らして販売する。実質的 な値上げだが、2品だけ価格を改定せずに容量量を変更にしたことに、同社は「値ごろ感を維持したかった」と説明。値上げによる売り上げ減を最小限にとどめ ようと腐心した。

   海外の宝飾ブランドも相次ぎ値上げ。英国の宝飾販売大手「デビアスダイヤモンドジュエラーズ」は3月22日、ほとんどの商品を平均8%前後値 上げした。米高級宝飾ブランドの「ハリー・ウィンストン」も同日から値上げ。「ヴァン クリーフ& アーペル」は3月25日から平均9%程度引き上げた。ティファニーは4月10日に平均10%前後値上げするという。

   宝飾ブランドは為替レートの変動や、ダイヤモンドや金・銀、プラチナなどの価格変動を反映し、これまでも価格を見直してきたが、今回はアベノミクスによる急速な円安が影響して値上げ幅が大きい。

   ただ半面、足元の「株高」もあって高額品の販売は好調で、値上げ分の影響は少ないとの見方もある。

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「円安」値上げの春がやってきた 電気・ガス、小麦、食用油にブランド品…



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輸出減少は一時的なのか、構造的なのか 日本経済の行方はここにかかっている<J-CASTニュース>

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輸出減少は一時的なのか、構造的なのか 日本経済の行方はここにかかっている
2013/3/24 17:00
http://www.j-cast.com/2013/03/24169965.html
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(1)

   日本の国際収支の悪化が止まらない。2013年1月の国際収支速報(財務省まとめ)によると、モノ・サービスなど海外との取引状況を示す経常収支の赤字は3648億円だった。

   現行方式の統計が始まった1985年以降では初めての3カ月連続赤字だ。赤字額は過去2番目の大きさだが、政府がミャンマーに対する延滞債務 を解消したことに伴い、帳簿上で発生する返済額1585億円を計上したという特殊要因がなければ赤字額は5000億円を超え、2012年1月の4556億 円を上回る過去最大になっていた計算。円安・ドル高が進んだことで燃料や原材料価格が上昇し、輸入額が膨らんだことが響いた。

円安で輸入が膨らみ、貿易赤字が拡大

   輸出入を差し引きした貿易収支が1兆4793億円という過去最大の赤字になったのが経常赤字の最大に理由。特に、輸入が前年同月比6.6%増 の6兆1254億円に増えたためで、円安・ドル高のため円換算の輸入が膨らんだ。例えば、円換算の原油価格は1年前より約1割上昇している。原発の停止に 伴う火力発電所向け液化天然ガス(LNG)の輸入増も赤字額を押し上げた。一方の輸出も米国向けの回復や東南アジア諸国連合(ASEAN)向けの好調で、 全体では6.7%増の4兆6461億円と伸びたが、赤字の拡大には到底、追いつかなかった。このほか、旅行や輸送などの動向を示すサービス収支は1802 億円の赤字、企業などが海外投資から受け取る利子や配当などの所得収支の黒字は6.8%増えて1兆2284億円と堅調だった。

   経常収支は2012年通年で、黒字額が4兆7036億円。LNG輸入急増を主因に、前年より半減し、1985年以降では過去最少を更新した が、黒字は確保している。これが、年末からは、アベノミクスに伴う円安で輸入が膨らみ、貿易赤字を拡大し、経常収支を赤字に転落させているわけだ。

   もちろん、経常赤字が必ずしも悪いというわけではない。赤字によって、直ちに経済成長がマイナスになるとか、失業率が上昇するといった国民経 済的なマイナスが起きるわけではない。ただ、問題は国内の資金不足の心配だ。経常赤字で国内の資金が海外に流出しているということで、巨額の財政赤字を抱 える国にとって、赤字の補てんを海外に依存せざるを得なくなる。もちろん、現在は基本的に国内資金で財政赤字を賄えているからいいが、高齢化の進展で貯蓄 が減っていけば、国内資金だけで賄えなくなり、日本の国債の国際的な信認が問われ、海外の資金を吸収できなければ財政に穴が開き、具体的には国債金利の高 騰という局面がおとずれるかもしれない。ただし、それはまだ先の話。

(2)

円安で輸出がそれほど増えるとは限らない?

   それ以前の問題として、海外への直接投資で得られる収益、つまり所得収支が、貿易収支の動向と並んで、大きなポイントになる。その収支の前提 になる日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)は2012年1年間で515件と、前年から13.2%増え、1990年の463件を上回って22年ぶ りに過去最高を更新した。金額も、円高のため円換算が目減りしたにもかかわらず、同14.9%増の7兆3389億円と、過去3番目に多かった。国内景気の 低迷の中、円高を背景に海外投資への企業の意欲の高まりを示している。

   この海外投資が円安で失速する懸念もある一方、海外から日本に戻ってくる所得収支の黒字は円安により円換算では膨らむプラス面もある。「直接 投資の進展で、海外に生産拠点をかなり移していることもあって、経済の教科書に書いてあるように、円安で輸出がそれほど増えるとは限らない」(官庁エコノ ミスト)との指摘がある一方、「数カ月先には輸出数量増加もあって、海外、特に米国の景気回復にも支えられて、貿易赤字は緩やかながら減っていく」(民間 シンクタンク)との見方もある。

   輸出減少を一時的と見るか、構造的と見るかで、経常収支の見通しへの見解も別れるが、その動向は、アベノミクスの成否を含め、日本経済の行方を見極める上で目を離せない。

J-CASTニュース
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輸出減少は一時的なのか、構造的なのか 日本経済の行方はここにかかっている



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ドイツ太陽光パネル新設が過去最高、原発23基分に<alterna>

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ドイツ太陽光パネル新設が過去最高、原発23基分に
2013年1月10日(木)11:59
http://www.alterna.co.jp/10356

▼全文転載

 

 

ドイツの太陽光発電設備の容量が2012年末、32400メガワットを達成した。天気が良ければ太陽光発電だけで、原発23基分をまかなえる計算となる。

2012年は毎月、買い取り価格が下がったため、駆け込みで設置が増加。2012年の新設は7630メガワットと過去最高となった。

ドイツは2000年から自然エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT制度)を導入している。1キロワット時あたりの太陽光発電の買い取り価格は当初49セント(53円)だったが、現在は17セント(18円)と下がっており、20年間固定価格となる。

太陽光発電は、この3年間で22500メガワット増と急激に伸びた。現在はドイツの電力の5%をまかない、昼間のピーク時の電気料金値下げに貢献している。2013年の太陽光発電の買い取り助成額は、約100億ユーロになると見込まれる。

ペーター・アルトマイヤー環境大臣は2012年6月、各州と「太陽光発電容量が52000メガワットとなったら、太陽光発電への助成を撤廃する」ことを同意。2015年には助成打ち切りが予想されている。

もともと固定価格買い取り制度は、自然エネルギーを市場に広めるために導入された。いずれは助成なしでも自由競争下で生き残ることを目的としている。その意味では太陽光発電は設備コストも下がり、自立の時期にきたのだろう。

電力市場が自由化されているドイツでは、電力料金は2012年1キロワット時あたり平均26セント(28円)だったが、2013年には12%上昇したという。そのため将来的には売電より、自家消費が経済的になってくるとの見方が強い。

「ドイツの自然エネルギー政策は失敗した」との報道がときどきみられるが、急激な伸びに対応が後ろ手に回っているのが原因だ。

自然エネルギーを推進するフライブルクの団体フェーザの理事ニコル・レーマーさんは「市場拡大には、固定価格買い取り制度は必須。設置容量を規制すると電力買い取りの保証がないため、伸びは鈍る」と話す。

昨夏のアンケートによると、自然エネルギー利用を重要だと思うドイツの市民は93%。国民の総意である脱原発を、いか実現するか。自然エネルギー推進に向けて、壮大な試行錯誤はまだまだ続く。(オルタナ編集部=ハノーバー・田口理穂)

 

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3・11と原発事故 いま、すべての日本人が考えるべきこと 菅直人の決断を本当はどう評価するのが正しいか <現代ビジネス>

現代ビジネス
トップ>http://gendai.ismedia.jp/
経済の死角
 2013年03月20日(水) 週刊現代
3・11と原発事故 いま、すべての日本人が考えるべきこと 菅直人の決断を本当はどう評価するのが正しいか
(1)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35193
(2)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35193?page=2
(3)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35193?page=3
(4)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35193?page=4
(5)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35193?page=5
(6)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35193?page=6
(7)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35193?page=7
▼全文転載



(1)
福島第一原発4号機。奇跡的に無事だった使用済み核燃料は手つかずのままだ〔PHOTO〕gettyimages
http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/8/2/600/img_8286b89c6ce3a33c0acf7860dd0bfcbc63419.jpg

「日本が滅亡してしまう」。大げさではなくそう思えるほどに過酷で、甚大な災害、そして事故だった。ただ、失ったものばかりではない。明日に繋がる教訓も得たはずだ。識者たちと振り返る再出発の日。

第1部 東電の決死隊に
「撤退するな」「国家のために死ね」と言った

山折哲雄はこう考える

「事故はどんどん拡大していくのに、原子力安全・保安院、原子力安全委員会、東京電力の誰も何も見通しを言ってこない。『事故はどこで止まるのか? どこまで拡大するのか?』私は一人、官邸で必死に考えていました」

 2011・3・11・・・・・・東日本大震災に端を発する未曾有のシビアアクシデントを振り返るのは、当時の原子力災害対策本部長—総理大臣であった菅直人氏だ。

 彼が「決断」を迫られたのは3月15日午前3時。

海江田万里経産大臣と枝野幸男官房長官はこう相談をもちかけてきたのだった。

「東電が『撤退したい』と言って来ています」

「撤退と聞き、それまで一人で考えていた最悪の事態について、初めて閣僚や補佐官に話しました。『撤退し、原発を放棄したら5000万人もの国民に避難を強いることになるかもしれない。そうなれば国として成りたたない。それほどの事故なんだ』と」(菅氏)

(2)

 当時、菅氏がヘリで福島第一原発を訪問した際に、「現場を混乱させた」と叩かれたことはあったが、「撤退はまかりならぬ」との決断に異議を唱える者はなかった。だが時が流れ、冷静になって振り返ってみると、「菅氏の決断」は大きな矛盾をはらんでいた。

 宗教学者の山折哲雄氏は、雑誌や新聞の取材等でこんな疑問をなげかけている。

〈腑に落ちなかったのは、現場で危険な作業にあたっていた人々の生命 の状態についてほとんど議論が及んでいなかったことである。あえていえば、「撤退」論や「退避」論のなかで、犠牲という問題が正面からとりあげられていな いらしいことだった〉〈全員撤退させるという選択肢があると私は思っています。そうすると、放射能が全国にばら撒かれる。放射能にはリスクが伴う、しかし それによるリスクは国民全体で引き受けよう、そういう視点がいまわれわれの社会にはない〉

 問われているのは、いかに非常時とはいえ、民間企業である東電の作業員の退路を総理大臣が断ち、「国家のために死ね」と犠牲を強いる権利があるの かという根本的な問題だ。これは逆に言えば、原発を稼働させ、その恩恵を受けてきた以上、いざというときはそのリスクを国民全体が受けるべきか否か、とい う問いにも通じる。菅氏が答える。

「山折さんが言っていることは非常に重い。撤退という選択肢もあった だろうということと同時に、撤退したことで起きるどんなことについても、受け止めるという覚悟も含めて、彼は言っているわけです。原発事故という国家の危 機。ギリギリのときにどういう選択をするのか。これは重要な議論だと思います」

 そのうえで、菅氏は自らの「決断」の背景について、チェルノブイリのケースを挙げながら、こう説明した。

チェルノブイリは1基だけ暴走して爆発した。大変な事故ですが1基 だけなんです。福島の場合は第一サイトで6基。同じ第一サイト内に7つの使用済み核燃料プールがある。そして12Ɠ先の第二サイトには4基、プールも4つ ある。もし全員が退避し、コントロールできない状態になれば10基の原発と11の使用済み核燃料プールが順次、干上がり、メルトダウンする。チェルノブイ リの何十倍もの放射性物質が放出されるのです。

 よく命懸けという言葉が使われるけど、本当の意味で命を懸けてやらざるをえない。

 これは責任者である私もそうだし、現場の作業員もそう。総理大臣というのは最後の最後、決めなきゃいけない。そういう立場なんだよね。それに伴う責任もすべて私にある。権限は責任と一体ですから。

 今回、急性被曝で亡くなった人はいなかったが、私の決断でそういう 人が出る可能性もあった。逆に撤退を決断していたら、今頃は東京に誰も住めなかったかもしれない。そうなれば、近隣諸国にも被害が及ぶ。『我々は避難しま す。ご迷惑かけて申し訳ない』とは言えないんだよ。国家として、責任が果たせなくなる」



(3)

欧州なら「撤退」もあり得た

 ただこれが海外だと、様相は違ってくる。社会学者で慶應大学教授の小熊英二氏が解説する。

「日本人はどうしても『事故を起こした東電が責任を取るのは当然』と 考えてしまう。ただし、社長はいいけど平社員や下請けが犠牲になるのは許せない。対して欧州では、社長、社員、下請け関係なく、最低限の人権は守らなけれ ばならないと考える。殉職したら、後遺症が残ったらこう補償すると契約した人間でなければ、命令は出せない」

 それが誰かといえば軍人、あるいは消防隊である。

「そもそも原発は核兵器製造の副産物だから、ほとんどの国が国営なの です。イギリスは民営化しましたが、結局、もたなかった。アメリカは民間がやっていますが、事故発生時の賠償責任は国にある。なぜこんなに違うのか。それ は日本人が考え詰めることをしてこなかったからでしょう。東日本に人が住めなくなって、政治経済が成り立たなくなってもいいから国民全体でリスクを引き受 けましょう、というのは、現実的ではない。そこまで覚悟する国民はいない。暗黙のブレーキがかかって、誰も考えてこなかったということ」(小熊氏)

 もちろん、国民感情として、東電が一義的に責任を負うべきだったという人は圧倒的多数を占めるだろう。

「さんざん安全神話を唱えてきたのに撤退だなんて有り得ない話。責任放棄ですよ。その後も電気料金の値上げは『権利』だと言ってみたり、株主に脱原発へのシフトを提案されても簡単に却下してみたり、東電は責任なんて全然考えてないんだよ」(評論家・佐高信氏)

 菅氏が言う。

「東電が民間企業なのはもちろん、よくわかっていました。ただ、原子炉をコントロールするのは一番の専門家でなければならない。東電は民間企業であると同時に当事者でもあった。国内で一番の専門家だった」

 3・11から2年たった今、すでに大飯原発は再稼働し、なし崩し的に原発再稼働への流れができつつある。しかし、超法規的だった菅氏の決断について、全ての日本人がじっくりと考えてみるべきだろう。

 歌人・俵万智氏は事故発生直後、子供と石垣島に移住し、いまもその地に住む。

「この世に『絶対』はない。それをあの事故で学んだはずなのに、再稼働への流れができてきているのは残念でなりません。原発が便利か不便かは、命の安全があったうえで言える贅沢な話。便利さや効率は、安全や安心とは引き換えにできないものだと思います」



(4)

「国家」とは人の命を犠牲にしても守るべきなのか、命は国家より重いのか。原発を動かすということはそれほどの覚悟と決断が必要なことを忘れてはならない。

第2部 廃炉と再稼働
なぜ日本人は何も決められないのか

 70%を超える高支持率が背中を押したのか、2月28日の施政方針演説で安倍晋三首相は前政権が掲げた「2030年代に原発ゼロ」の白紙撤回を宣言した。

「それどころか、原子力規制委員会が7月に出す安全基準をクリアすれば、新規の設置もOKとなりました。3・11後に住民の猛反発を受けて建設が凍結された上関原発(山口)も許可が下りると見ています」(社民党福島みずほ党首)

 だが、忘れてはいけないのは、状況は何も変わっていない、ということ。環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏が溜息をつく。

「2年たっても福島第一原発の事故は継続中。放射性物質に汚染された 水が地下や海に垂れ流しされている状態で、解決のメドはついていません。年間50ミリシーベルト、5年100ミリシーベルトという被曝限度にひっかかる作 業員が多数でてきて、人員不足も露呈しています。しかも、広島原爆1万個分にも相当する使用済み核燃料が、壊れた建屋の中のプールに宙吊りにされたまま。 万一、強い余震に襲われて崩れたら、ふたたびメルトダウンが起こります。チェルノブイリは今年で事故処理がスタートして27年になりますが、うまくいって おらず、石棺を新たに作り直すようです。福島第一原発はゆうに100年はかかるでしょう」

 小出裕章・京大原子炉実験所助教は「事故処理」の内情を明かす。

「実は事故後から今まで、ひたすら水をかけて炉心を冷やしているだ け。とても事故処理と呼べる代物ではありません。原子炉圧力容器の底を突き抜け、格納容器に落ちたと見られる炉心がどうなっているか、いまだ把握できてい ない。格納容器が壊れることを想定していなかったので測定器が設置されていないうえ、線量が高過ぎて作業員が近づけないからです。仮に事故処理が無事に終 わったとしても、放射性物質は残りますから、原発近くの双葉町、大熊町などの住民が故郷に戻れることはないでしょう。こういう事実をちゃんと見てほしい」

 放射線影響協会研究参与の岡野眞治氏は福島再訪を計画しているという。

「ふたたび福島に飛んでデータを取り直そうと思っています。汚染され た地域に人が戻るには、サイエンスと医学的見地から、放射線が人体に実際、どのくらいの影響を与えるのか明らかにするのが必要不可欠だからです。原子力と いうハイテクノロジーと、どう付き合うか。まずは原発を採り入れた時の原点に戻って、審議し直すべきでしょう」

 元原子炉格納容器設計士の後藤政志氏も同意見だ。



(5)

「今、原子力規制委員会が議論している新しい安全基準は『どうやった ら再稼働できるか』。そうじゃないんです。まず、原発が必要なのかどうかを議論すべきなのです。幾重にも防御策を講じ、万が一のことが起きても大事故にな らないよう設計して作った原子炉が簡単に破壊された。もはや安全性は確保できない、というのが、設計者である私の結論です。ブレーキがきかずクラッシュし た事故車両に『もう一回乗ろうよ』と言っているようなもの」

官邸前20万人デモの衝撃

 幼い子を親族宅に疎開させたり、野菜や牛乳の産地を気にしたり—3・11以降、たくさんの人々が放射能の影響を恐れ、人生の軌道修正を余儀なくされた。

 すべての原発が止まったとき、多くの日本人は、もう日本で原発が動くことはないと思ったはずだ。20万人とも言われる人々が官邸前で反原発デモを 行ったのに、なぜ原発との訣別を決められなかったのか。そしていま、新たな決断をすることもなく、再稼働が既定路線のようになっている。

菅直人元首相は自らの判断で浜岡原発(静岡)を止めました。その 逆、つまり安倍首相が独断で再稼働を強行する恐れがある。原子力規制委員会がどこまで独立性を保ち、厳しい基準を作れるか。かつて自民党政権は、われわれ 専門家の意見を聞こうとしなかった。その先に福島の悲劇があったのです。そこも心配な点です」(元日本原子力研究所研究室長・笠井篤氏)

 後藤氏はこう分析する。

「アンケートを取れば今でも反対が圧倒的多数。何も国民のマインドが変わったわけじゃない。ただ、考えているレベルが個々で違うということではないでしょうか。『そう滅多に巨大地震は起きないだろう。すぐに廃炉にしなくてもいいのでは』と考えている人が多いのではないか」

 第1部に続いて、小熊英二氏が解説する。

「どんなデモも突発的に盛り上がるのは2ヵ月くらい。常に変化するも のです。ただ、私の予想を裏切ったのは、事故から1年半もたってから、あれほどたくさんの人が首相官邸前に集まったということ。日本全体が行き詰まってい て、多くの人がこのままではいけないと感じていた。そのひとつの焦点として原発の問題があったのです。少なくとも'11年のように、街でデモをやることは 珍しがられなくなったし、デモに行ったことを職場や家庭で言えるようになったのは大きな変化。首都の官庁街で何万人ものデモをして、首相と面談するなん て、他の国ではないですよ。いきなり全ての原発を止め、いまでも2基しか動いてないわけですから、成果はあがっている。有為な人材が原発業界に行くとは思 えませんし、推進に向かうとも思えません」

 48基もの原発が眠ったままの今こそ、日本社会を変えるラストチャンスだ。



(6)

第3部 義捐金
本当に困ってる人に届かないこの国のシステムについて

 今年の3月6日までに日本赤十字社に届いた義捐金の総額は約3243億円。もちろん、史上最高額だ。だが、この義損金、震災後1ヵ月以上も宙に浮いたままの状況が続いた。5ヵ月が過ぎても、被災者の手に届いたのは総額の半分ほどに過ぎなかった。

 '95年の阪神淡路大震災のときは、地震発生から2週間で送金が始まっている。その経験があったにもかかわらず、東日本大震災ではそれよりも時間がかかったのである。このことは、当時も大問題となった。

 その理由は、対象となる地域が広かったこともさることながら、「義捐金は、平等・公平に配らなければならない」という考えに縛られすぎていたからだ。

 平時ならば、平等と公平もいいだろう。しかし、せっかくの義捐金が届かず、日々の暮らしにも事欠いている被災者に、平等に苦しめという理屈が通用するはずはない。

 そもそも、義捐金が実際に被災者の手に渡るまでには、都道府県ごとの配分を決めるために国が設立した「義援金配分割合決定委員会」を経て、各市町村の配分を決めるための「配分委員会」、さらに各市町村における同様の委員会を経るという3重のシステムになっている。

 だが、自身も100万円の義捐金を送ったという数学者の藤原正彦氏は、「平等・公平を優先させる考えこそが、最大の間違い」だと指摘する。

「こういうものは、誰かトップが全責任をとって、不平等にやればいい んです。それ以外に方法はない。この人とあの人のどちらが、よりおカネを必要としているかなんて、判断のしようがないし、議論しただけで10時間、100 時間とかかってしまう。トップの人が、自分の人間観だとか歴史観、災害観といった個人の価値観に基づいてズバッとやる。

 結局、『公平』だ『平等』だといって、会議ばかりやっているのは、 誰も責任を取りたくないからです。会議というのは、責任回避機能ですからね。昔は、会社にも、官庁にも、政治家にも、どの分野にもそういう判断のできる真 のエリートがいました。国家や国民のために命を捧げてもかまわないという気概を持っている真のエリートがいなくなってしまった。これでは、国家として持ち ません」

不公平で何が悪い

 その一方で、東日本大震災で目立ったのは、NPOなどの民間団体による独自の支援だった。仙台大学教授で、「東日本大震災復興構想会議」の委員でもあった高成田享氏も、その活動に携わった一人だ。



(7)

「義捐金がなかなか被災地に渡らないこともあり、『NPO法東日本大震災こども未来基金』を立ち上げ、震災直後の4月から募金活動を始めました。その年の7月には、震災で親をなくした子供たちへの学資支援を開始しています」

 募金総額は約1億8000万円。現在までに130人の子供たちを支援した。赤十字の義捐金と比較すれば規模は小さいし、それを手にできた被災者も全体からみればごく一部に違いない。しかし、これを不公平だからおかしいと言えるだろうか。

「本来、復興は被災した自治体が主体になり、それを国が支えるという 形であるべきでした。ですが結局、実際の復興は計画も予算も国が主体となり、自治体は国が決めた計画を実行するだけの窓口になってしまった。これが、復興 を遅らせる最大の要因になったのです。今回の震災で、中央集権国家は災害復興時に機能しないことを見せつけられました」(高成田氏)

 責任は取りたくないが、カネを配る権限は手放したくない。それを平等や公平という美名でカモフラージュする。本当に困っている人を助けられないシステムなど、なんの意味もない。

「週刊現代」2013年3月23日号より

 

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