「北の山・じろう」時事問題などの日記

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整備新幹線までGO! 消費税増税で始まった「公共投資ばらまき合戦」に景気底支えなど期待できないことはデータが証明している<現代ビジネス>

<現代ビジネス>から引用
2012年07月02日(月) 高橋 洋一
高橋洋一ニュースの深層
整備新幹線までGO! 消費税増税で始まった
公共投資ばらまき合戦」に景気底支えなど期
待できないことはデータが証明している
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32905
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32905?page=2
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32905?page=3
(1)
 消費税増税に関するウソは数多い。野田総理が言う「財政再建は待ったなし」というのも、本コラムで何回も言及したCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という国債に対する保険料で簡単に論破できる(2011年12月19日付け、4月23日付けなどを参照)。本当に待ったなしならば、先進国の中でも保険料が安い(これは近い将来に財政破綻のない証)ので、高い保険金を受けられて大儲けができてしまう。破綻論者はどうして大儲けができるのにCDSを買わないのか。ウソをついているからだ。

 消費税増税を社会保障の充実に使うというのも、カネには色が付いていないので、なんとでもいえる。民主党政権になって、予算組み替えができず予算歳出総額が自公政権時代より10兆円以上膨らんでいる(2011年12月26日付け)。歳出が水ぶくれしたため、消費税増税をしてもその分は消える。民主党が下手な政策をやろうとせずに、福田政権の時と同じ予算編成をすれば、消費税増税は不必要ともいえる。

 消費税増税がなぜ行われるか。税率をアップする際に出てくる特定業界への軽減税率が官僚の利権になるのが大きな理由だが、経済界も労働界も目先の利益で消費税増税をのぞむということもある。経済界は法人税と社会保険料の引き上げを避けたいので、消費税増税になびく。労働界も所得税と社会保険料が上がらないように消費税増税を望む。ともに、庭先を掃除するために、消去法によって消費税増税を選ぶ。

 しかも、消費税の社会保障目的税化という世界でも例をみない方法によって、国民を洗脳すると、高齢者ほど社会保障に関心を持つので、消費税増税は理解を得やすくなる。そのような高齢者を支持基盤とし、経済界や労働界からも支援を受ける民主・自民では消費税増税は「党利党略上」望ましいとなる。こうして、財務官僚の指導を受けた民・自は消費税増税で足並みをそろえたわけだ。

 しかも、ここにきて、早くも増税の分け前ということで公共投資の歳出増の圧力が強まっている。民主党が掲げた「コンクリートから人へ」は完全に崩れている。その典型例は整備新幹線だ。

 国土交通省は29日、整備新幹線の3区間の着工を認可した。消費税増税法案が衆議院で通過した直後を見計らって、総事業費が3兆円を超す大型公共事業を認めたのだ。

 また、政府・民主党は今秋2012年度補正予算案の編成を目指している。これも大盤振る舞いだ。しかも、前原政調会長は、補正予算の成立後に解散・総選挙すべきとの考えを示しており、景気対策が選挙対策であることを露骨に示している。

 一方の自民党は「国土強靭化法案」を今国会に提出している。10年間で総額200兆円をインフラ整備などに集中投資するという。

 民・自・公の3党合意によって、消費税増税分を公共事業につぎ込めるかのような条文修正もされている。もう社会保障の充実に使うという野田首相の言葉はとうに消えてしまっている。消費税増税による景気減速を逆手にとって、公共投資をばらまこうという魂胆がミエミエだ。

(2)
 公共投資をすれば名目GDP(国内総生産)が伸びるという人もいるが、実際には名目GDP伸び率と名目公共投資伸び率のデータを見ると関係はない。理論的には公共投資の需要創出効果はあまりない。十分な金融緩和がないと円高を誘発し輸出減となるという、いわゆる「マンデル=フレミング効果」があるからだ。

 ちなみに、最近のデータをみると、公共投資と純輸出は経済理論が想定するような補完関係があり、両者を合計した対GDP比は6〜8%程度で安定している。両者の相関係数は▲0.92と見事な逆相関になっている。要は公共投資の増減は純輸出で相殺されてしまうので、さほど景気には影響しないのだ。
(グラフURL)
http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/4/7/600/img_47dd9205d15b9512f663cd671074a4f539200.jpg
 もっとも、筆者はこうした公共投資のマクロ経済効果にあまり拘らない。本来の公共投資は個別プロジェクトで見るべきで、便益と費用の比率(B/C)は1を上回っていれば採択し、下回っていたら不採択である。B/Cが1を上回っていればいくらでも投資してもいい。自民党のように、先に総額を決めるというのは、こうした個々のプロジェクトごとの採択基準を無視することにつながる。この意味で、公共投資景気対策に使うのは正しいとはいえない。

 これは筆者の大蔵省時代の経験からいえる。もっともそれがトラウマにもなっている。筆者は理系出身ということもあり、公私ともに公共事業のB/Cの計算チェックを数多くやった。社会資本整備では、道路需要の基本になっている推計関数群の誤りによる過大推計を指摘し、それだけで計算上公共投資を7%カットできるようになったこともあった。

 これは重要だと思ったので、当時の主計官などの主計局幹部に伝えた。ところが、その幹部はその事実を握りつぶし相手の要求省庁幹部とともに過大推計のまま予算を通したのである。それが今では財務省幹部なのだから、いかに財政再建とは口でいいながら官僚同士でつるんでいるかがわかるだろう。

 その時の経験ではB/Cが3以上だと不採択にはならなかった。後日、海外出張して公共投資担当の人とも話したが、やはり同じようなことを言っており、ドイツやニュージーランドではB/Cの採択基準を3や4に設定しているということだった。

(3)
 そこで、経済財政諮問会議で同様な提案をしたことがあるが、国交省などから強硬な反対があって、実現しなかった。当時の高速道路で採択基準を「3」にすると採択路線は6割も減少するからだ。逆にいえば、日本の公共投資の採択基準はそれだけ甘い。

 また、ある時は、個別プロジェクトでB/Cが1.00という例が多かった。それらはすこし間違いを探すと1.00未満になってしまうので、チェックをしなくてもよいと言われた。予算総額が決まっていて、そのままでは予算をつけられなくなるからであろう。

 整備新幹線のB/Cチェックもやったことがある。新幹線の需要推計は、並走する高速道路や航空などの代替経路の需要推計と整合的に行う必要がある。しかし、それらはバラバラに行われていて、すべての需要を合算すると現実にはあり得ない数字だった。この点も指摘したが、その指摘が現実に生かされることはなかった。

 現時点で整備新幹線の需要推計をするならば、代替的な格安航空会社の動向が気になるだろう。今年3月から、ANA系のピーチが就航し、今日2日からはJAL系のジェットスターも就航する。ところが、国交省の審議会による試算ではそれは考慮されていない。

 防災との関係で公共投資は必要との議論もある。それは否定しないが、防災効果の高いモノは当然B/Cが1より大きくなるわけで、投資採択基準と防災意識は矛盾しない。防災というばかりで、効果を数量的にいわないのは、防災という名に隠れて真に必要な公共投資でない可能性もある。本当の防災投資とインチキ防災投資を峻別するためにも、B/C基準が必要だ。

 財政出動は、十分な金融緩和があれば効果を持つこともあるので、一概に否定しないが、これまでのマクロデータを見ると、純輸出が効果を相殺するため有効需要増にならないことが多い。消費税増税による景気後退を下支えするには不十分だろう。また、ムダな公共投資(B/Cが1未満)が行われる可能性があり、かならずしもいい政策とは思えない。それよりも金融緩和が先決だ。