「北の山・じろう」時事問題などの日記

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原発に関する「3つの選択肢」と「3つのシナリオ」に見え隠れする政治的思惑と原子力ムラの意図<馬淵澄夫レポート

「現代ビジネス」から全文引用
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馬淵澄夫レポート
2012年07月05日(木) 馬淵 澄夫
原発に関する「3つの選択肢」と「3つのシナリオ」に見え隠れする政治的思惑と原子力ムラの意図
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(1)

 衆院での消費税法案採決後に起きた民主党分裂騒動で国会は機能停止となり、参院へ舞台を移すまでに2週間ほどの時間を要する様相である。こうした永田町のゴタゴタをよそに、原子力をめぐるエネルギー行政は淡々とかつ粛々と議論が進められている。

 6月21日、原子力委員会(以下「原子力委」)による「核燃料サイクル政策の選択肢について」http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/kettei/kettei120621_2.pdfが発表され、その1週間強後の6月29日にはエネルギー・環境会議(以下「エネ環会議」)で「エネルギー・環境に関する選択肢」http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120629/20120629_1.pdfが示された。

 しかしこの2つの会議で示された3つの選択肢にはわずかな違いがあった。ここに、私は危機感を持った。消費増税政局に翻弄される永田町をよそに、またもや霞が関で原子力政策が無定見に進められることに対しては、意見を述べていかなければならない。

 昨年9月、野田総理は所信表明にて「2030年までをにらんだエネルギー基本計画を白紙から見直し、来年の夏をめどに、新しい戦略と計画を打ち出 します」と訴えた。この方針に基づく政策決定プロセスの一環として、まず原子力委による原子力政策大綱の見直しと、総合資源エネルギー調査会(以下「総合 エネ調」)によるベストミクスの策定を行い、そしてエネ環会議による国民的議論の結果を踏まえた「革新的エネルギー・環境戦略」を決定するという流れが定 められている。

 政府の工程では、8月に「革新的エネルギー・環境戦略」を決定したあと、速やかに「エネルギー基本計画」を定めることとなっており、大飯原発の再 稼働問題をはじめ、まだまだ国民的コンセンサスを得るには丁寧さが求められる新たな原子力政策構築についても8月中の決定を目指している。

 ここでもまた、最近の総理のキャッチフレーズとなりつつある「待ったなし」で政策決定が進められようとしているのである。
「二つの会議」で示された「3つの選択肢」

 しかし、こうした意思決定プロセスに対し、私は危機感を持っている。その一つが、原子力委に昨年9月に設置された原子力発電・核燃料サイクル技術 検討小委員会(以下「技術小委」)の結果を踏まえた「核燃料サイクル政策の『3つの選択肢』」と、エネ環会議で示された「3つのシナリオ」との間に微妙な 表現の変化があることである。ここに、実は政治的思惑と原子力ムラの意図が見え隠れする。

(2)

 技術小委は6月5日に核燃料サイクルの検討結果を原子力委に提出し、これを受けてエ環会議は6月8日に中間的整理をまとめた。その中では、2030年時点での原子力発電比率を、以下の3つの選択肢で検討した。

①0%(できるだけ早くゼロとする)
②約15%まで下げる
③約20〜25%(以前より低減させるが、引き続き一定程度は維持する)

 まず、これら選択肢の実現可能性について考えてみよう。

 国民的意識の中では原発を将来的にゼロとする①についてのシンパシーは大きい。しかし、現実の電力供給体制を考慮すると、中間に当たる②の15% という数字は仕方なく受け止められるものかもしれない。また、③にいたっては従前よりわずかに減るというシナリオなので、これについては受け入れがたいも のがあると予測される。結果、落としどころとしては②の15%がもっとも妥当であるといえよう。

 そして、これら3つの選択肢に対して、原子力委は対応する核燃料サイクル政策について、6月21日に以下のように定めた。

①0%    →全量直接処分
②約15%    →再処理・直接処分併存(p1)
③約20〜25%    →再処理・直接処分併存(p2)

 ここで原子力委は、原子力発電所を2020年時点でゼロにしていくという選択肢の場合は全量直接処分を行う、すなわち核燃料サイクルを中止し、そ れ以外については再処理と直接処分を「併存」すると示した。この結果については、私自身異論のあるところでもあるが、政府においては少なくとも、2005 年の原子力政策大綱で定められた「全量再処理」の核燃料サイクル政策からは見直しが図られた内容だと評価できる。

 この、原子力委の「3つの選択肢」が提示された後、29日にエネ環会議で「3つのシナリオ」が以下のように決定された。

①0%    →全量直接処分
②約15%    →再処理・直接処分がありうる(p11)
③約20〜25%    →再処理・直接処分がありうる(p12)

(3)
「併存」が「ありうる」に変更された理由

 ここで、指摘しておきたいのは、原子力委の「3つの選択肢」の際は②15%と③20〜25%の場合は再処理・直接処分が「併存」であったものが、エネ環会議の「3つのシナリオ」では「がありうる」に変更された点である。これは、どういうことだろうか?

 原子力委の「併存」とは文字通り、再処理と直接処分の両方の政策が執られるということで「全量再処理」ではない。

 しかし、エネ環会議の「ありうる」という表現の場合は、再処理もしくは直接処分の「いずれかの選択もありうる」ということになる。すなわち、「全量再処理」の選択を残しているのである。まさに、霞が関文学の結晶のような字句であるが、この意味は大きい。

 エネ環会議では、上述したように最も可能性が高いとみられる原子力低減策の②15%が選択された場合でも、核燃料サイクル政策の従前と変わらない 推進、すなわち「全量再処理」がセットされている可能性があるということである。事実、経済産業省はこの②15%の場合も、表現があいまいなので「全量再 処理」も選択肢として含まれる解釈が可能だと漏らした。

 ここまでして、全量再処理を死守しなければならない理由は何かと言えば、青森県六ヶ所村の再処理施設にある。六ヶ所村では事業者と自治体との協定 により、全量再処理を実行しなければ、それは「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合」に該当するとみなされ、「使用済燃料の施設外への搬出を 含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずる」ことになっている。

 また、国も青森県に高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)について「国は処分が適切かつ確実に行われることに対して責任を負うとともに、 処分の円滑な推進のために必要な施策を策定することとしています」と核燃料サイクルの推進を約束している。こうした状況下で、これまでの政策を180度転 換することは事業者や政府にとって大変苦しい決断となるだろう。

●覚書(p149)
●高レベル放射性廃棄物の最終的な処分について(平成6年11月19日6原第148号)(p150)

(4)

 このような事情から、昨年9月のエネ環会議で原子力委の「3つの選択肢」が捻じ曲げられることの無いよう、監視が必要なことは言うまでもない。
なぜ「世論調査」は行わないのか

 このように、経産省並びに原子力ムラの論理の一方で、政治の思惑も見え隠れする。6月29日のエネ環会議の報告書では、今後の作業として示されて いる「国民的議論」を8月上旬までに行い、「大きな方向を定める革新的エネルギー・環境戦略」を決定し、そしてその決定については「政府が整理し決定す る」としている。

 この政府とは何か? いわゆる「3 + 2」の関係閣僚及び関係者会議である。3は枝野経産相、古川国家戦略担当相、細野環境相の三大臣であり、2は斎藤副長官と仙谷政調会長代行だ。工程通りで あればこの「3 + 2」で8月中に大きな戦略を決めることになる。すなわちこの件を9月に予定されている代表選挙の争点としない、ということが政府及び執行部の意思としてあ ることの可能性は否定できないだろう。

 こうした政治的思惑を具体化するには、政府としては何としてでもお盆前までには「国民的議論」を終わらせなければならない。そのため、「国民的議論」の選択肢にあったはずの「世論調査」はいつの間にか「討論型世論調査」へと変更された。

 これは3000人ほどの無作為母集団から300人程度の抽出を行って討論を行うものであり、大規模な世論調査とは大きく性質が異なる。おそらく、 世論調査により提示された選択肢の①0%に流れるのを恐れたのだろうと想像するが、このような、事を急いた政策決定プロセスは、今後に大きな禍根を残すこ とになりかねない。

 消費増税審議や党分裂の陰に隠れて、国民生活に直結する最も大事な課題が思わぬ方向に向かわぬよう、私は与党議員の1人として監視と発信を高めていく。



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