「北の山・じろう」時事問題などの日記

 ☆今は、無きブログのタイトル☆ 『取り残された福島県民が伝えたいこと』 管理者名 「取り残された福島県民」 当時のURL>http://ameblo.jp/j-wave024/

女性の卵子はますます老化、男性は無精子症発症、生まれてくる子どもは ダウン症の可能性が急上昇

現代ビジネス
トップページhttp://gendai.ismedia.jp/
ニュースの深層
賢者の知恵
2012年08月15日(水) 週刊現代
女性の卵子はますます老化、男性は無精子症発症、生まれてくる子どもは
ダウン症の可能性が急上昇 「不妊大国」ニッポンの真実
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33014
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33014?page=2
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33014?page=3
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33014?page=4
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33014?page=5
(全文引用)

(1)

 出産年齢が上昇し、少子化がますます進む一方、いま不妊治療患者が急増している。その多くは30代後半から40代の、高齢出産を覚悟したカップル。この不妊大国で、いったい何が起きているのか。

21万件を超える治療件数

「初めて病院に行ったときは、すでに結婚13年目。人工授精を始めたものの、失敗続きで、卵の育ちは年々悪くなっていきました。陰性反応(失敗)が出るたび、『ここまでやったんだから、と諦めるために治療をしているのか』と自問自答していました」

 そう語るのは、39歳で不妊治療を受け始めたAさん。彼女の治療歴は凄まじい。体内に人工的に精子を注入する人工授精が25回、卵巣から卵を取り出して受精させる体外受精が12回にものぼった。

 42歳のとき、子宮に戻した卵子にようやく陽性反応が出て、待望の妊娠に成功。しかし、その後の出産・育児でも問題が続出する。

「妊娠中期から喘息のようなひどい咳が出るようになって、出産の際の帝王切開でも出血多量のトラブルがありました。出産直後にはマタニティブルーに陥り、睡眠不足とうつ状態で、育児はおろか起き上がることもできない状態になってしまったんです。

 もっと若い頃なら両親の手を借りることもできたのでしょうが、すでに夫の親は他界し、私の親も遠方住まいの70代。経済的にも、何年も続いた治療で蓄えを使い果たしてしまいました。

 夫が定年を迎える頃、子どもはまだ中学生と思うと気が遠くなります」

 いま、日本中で不妊治療を受ける人の数が増え続けている。日本産科婦人科学会の調べによれば、人工授精と体外受精をあわせた'09年度の年間治療 件数は、21万3800件と'00年のほぼ3倍。また、同年にこれらの治療によって生まれた子どもの数は2万6680人で、全体のおよそ40分の1。まも なく、クラスに一人は人工授精・体外受精で生まれた子がいる時代がやってくる。

 全国で、不妊治療を行う認定施設数は588('11年)で世界最多だ。人口3億人のアメリカでも422施設だから、いかに多いかがわかる。いまや日本は、世界一の〝不妊大国〟と言っても過言ではない。

 日本有数の不妊治療実績を誇る大分市のセント・ルカ産婦人科院長、宇都宮隆史医師はこう語る。

不妊とは、2年以上にわたって自然に妊娠できない状態のこと。セックスレスは不妊とは考えません。

 先日、日本人女性の平均初産年齢が30歳を超えたことが話題になりましたが、当院の不妊治療患者も年々高齢化し、増加してきています。治療に来る患者は40歳前後、共働きのカップルが大半ですね。

(2)

 女性たちの多くは、生理があればすぐ妊娠できると思っている。若い頃には避妊のことしか教わっておらず、卵子の老化についてもほとんどが知りません。うちでは過去の治療実績に基づいて47歳まで治療を引き受けますが、妊娠率はかなり低いという事実はお伝えしています」

 本誌6月23日号・30日号でも報じた通り、いま、晩婚化の進行に伴う高齢出産の増加は社会的な問題となっている。35歳を超えての高齢出産では自然妊娠の確率が大幅に下がるため、不妊治療クリニックの門をたたくカップルも増えるというわけだ。

猛スピードで卵子が老化

 40歳を目前にして不妊治療を受け始めた女優の長谷川真弓さん(41歳)が、自身の体験を打ち明ける。

「1人目が自然妊娠でできたので、不妊なんて考えたこともなかったんです。でも、2人目がなかなかできず、変だな、と思ったときにはもう37歳になっていました。

 不妊専門のクリニックで検査をしたところ、精子を異物として攻撃してしまう〝抗精子抗体〟が体の中にできてしまっていることがわかり、体外受精を することになりました。1回目は着床せず、2回目、3回目では着床したものの早期で流れてしまった。4回目の体外受精で、ようやく妊娠できました」

 彼女もまた、高齢でも妊娠できる、産めると何となく思い込んでいたという。

「いざ妊娠しても、今度は高齢出産だから流産するのではないか、という恐怖がありました。無事出産できましたが、年をとってからの子育ては大変です。1人目を産んで育てたときのパワーとは差を感じます。

 当時はテレビでも頻繁に『40代で妊娠』といったニュースが流れていましたし、大丈夫だと刷り込まれていたんだと思います。でも、やはり早いに越したことはないんです」

 不妊体験者を支援するNPO法人Fine(ファイン)の松本亜樹子理事長は、高齢での不妊治療に伴う困難についてこう解説する。

「身体的負担は言うまでもありませんが、それ以上に精神的な負担を甘く見てはいけません。周りからのプレッシャーもあり、自信を失うんです。なかなか妊娠しないと『みんなは普通に妊娠しているのに、自分は・・・・・・』と考えてしまう。

 さらに、経済的な負担も大きい。人工授精・体外受精には保険がききませんし、体外受精は1回あたり平均30~50万円かかるうえ、通常3回、4回と繰り返してようやく成功する。注射代や薬代、交通費も馬鹿になりません。

 時間的な困難もあります。通院と仕事を両立させるのは難しいですから、仕事を辞めたり、雇用形態を変えて不妊と向き合うことになる。結果、経済的・精神的な負担がさらに増すというスパイラルに陥るのです」

(3)

 また、年齢を重ねるごとに、不妊治療そのものの成功率も下がってしまう。大阪市のオークなんばレディースクリニック院長で、自らも夫婦での不妊治療経験をもつ田口早桐医師が語る。

「最近は、患者さんにも若く見える方が多く、『本当に40代!?』とびっくりすることもあります。しかし、20代後半から卵子の老化は始まると言われています。見た目は関係ないんです。

 特に40代は卵子の老化スピードが早まり、1歳違うだけで老化の勢いも遥かに大きくなります。40歳で採卵すると多ければ10個以上の卵が取れ、 妊娠率は約20%。ところが42歳では、とれる卵は5個未満のことが多く、妊娠率は約10%に下がる。流産率も、40歳では5割ですが、45歳での妊娠で は7~8割にものぼります」

 母体年齢が40歳を超えると、ダウン症など先天性遺伝子疾患の発現率が20代と比較して10倍以上になるというデータもある。たとえ医学の力で妊娠が叶ったとしても、高齢になるほど安心はできなくなるのだ。

精子がありません

 不妊の原因が、実は男性側にある場合も少なくないことをご存知だろうか。ロック歌手のダイアモンド☆ユカイさん(50歳)は、4年前に妻と共に訪れた検査で、驚くべき診断を受けた。

「妻も高齢だったので、夫婦で一度検査を受けてみた。すると『精液に精子が含まれていません』と言われたんです。『無精子症』なんて病名、そのとき初めて知りました。

 僕の場合は〝閉塞性無精子症〟といって、睾丸で精子は作られても、精管が詰まっていて出ていかない。ネットで色々調べて、睾丸から直接精子を取り出して受精させれば子どもは作れるとわかり、手術を受ける決心をしました」

 実は、男性の100人に1人が無精子症といわれている。また、精子の運動率が低く受精に至らない〝精子無力症〟という病もある。ストレスや酒・煙草と関係が大きく、加齢とともに増えるという。

「睾丸を切り開くことに恐怖心もあった」というユカイさんだが、3度目の体外受精で念願の長女を授かり、昨年には双子の男の子も誕生。今、彼は男性たちにこうメッセージを送る。

「男には、検査や治療を受けること自体を屈辱だと思う人もいるでしょう。でも、女性の治療に比べれば何分の一かの苦労でしかない。検査だけなら痛くも痒くもないですから、受けた方がいい。これからは、マナーになりますよ」

 前述の通り、年間20万件以上の治療が行われる中、不妊治療によって生まれてくる子どもたちは約2万7000人。だがその一方で、不妊治療を受け続けても望みを果たせず、治療を諦める人もいる。

(4)

 27歳で結婚したBさんは、最初の5年で子どもができず、不妊治療を始めた。

「結婚後も仕事を続けましたが、男性と同じ仕事をこなし、体力的にもきつかった。子どもができないのは、仕事のストレスのせいだと思い込んでいました。

 自分たちが不妊だと認めるのが怖くて、病院に行くこともできず、ようやく重い腰を上げて検査に出かけたのが32歳のときです」

 検査の結果は、不妊の原因は夫の側にあるため、体外受精をしたほうがよいというものだった。

「問題は仕事との両立でした。排卵誘発剤を打つためにクリニックに連日通わなければいけないし、診察や採卵、受精卵を子宮に戻す胚移植の日はできれ ば会社を休みたい。ところが、治療日程は生理によって決まるので、職場の人には言いづらい。早退や休暇を繰り返した末、2年後ついに会社を辞めました。

 それなのに、体外受精を繰り返してもうまくいかない。仕事をしていない、子どももいない。私に存在価値はあるのだろうか、と思いました。そして、 通算7回目の体外受精で僅かに陽性反応が出たものの、すぐに陰性になって・・・・・・。張りつめていた糸がプツンと切れてしまいました」

 以来、Bさんは治療を再開していない。最近ようやく、不妊治療体験者などと情報交換をするうち「不妊を受け入れ、前向きに過ごせるようになった」という。

 10年前から不妊治療に取り組んできた、芸能事務所〝タイタン〟社長で、爆笑問題・太田光氏の妻、太田光代さん(48歳)。彼女はいま、このまま治療を続けるかどうか迷っている。

不妊治療は一度中断していたのですが、3年前に再開したときに受精卵が2つできました。病院で冷凍保存してもらったその受精卵の写真を見たとき、『すごい、これが私の子どもなんだ』と、なにか本能的な愛着というか、愛情がわいてくるのを感じたんです」

爆笑問題・太田夫妻のケース

「実は、この2つの受精卵で治療は最後にしようと思っています。次のステップに進むには、受精卵を私の子宮に戻さねばならないのですが、もう長いことためらっています。

 48歳ですから、うまく着床するのはほとんど奇跡に近い。出産も大変でしょう。でも可能性はある。だけど一方で、これが失敗してしまったらと思うと・・・・・・。うまく言えないけれど、この小さな受精卵が私の支えになっているんです。

 本当は、着床率の高い若い女性がこの受精卵を育てて産んでくれたら、という気持ちもあります。葛藤はありますが、もし数年後、代理母出産の環境が整っていたら、お願いするかもしれないですね」(太田さん)

(5)

 特に女性は、年齢を経るごとに治療の選択肢が狭まってゆくのを避けることができない。前出の田口医師は、こうアドバイスする。

「身体的な面では、やはりどうしても『早ければ早いほどいい』という結論になってしまうのは否めません。しかし、晩婚化が進み出産年齢が上がっている以上、不妊治療をきちんとやることにはやはり意義がある。

 治療を受けている方には酷な言い方かもしれませんが、不妊治療は『結果がすべて』で、失敗に終われば何も残らない。でももし授からなかったとして も、夫婦で話し合い、ひとつのことを戦って乗り越えるという経験は、他では得がたいものです。自分自身の治療歴からも、そう実感します」

 これほど患者が増加し、高齢化しているにもかかわらず、人工授精・体外受精に対する公的な補助制度は十分というには程遠い。

 不妊に苦しむカップルを救い、高齢出産の増加に歯止めをかけるためには、一体どんな対策を打たねばならないのか---。〝不妊大国〟を脱するための国民的議論を始める時が、すでに来ている。

「週刊現代」2012年7月21・28日号より