「北の山・じろう」時事問題などの日記

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【「革新的エネルギー・環境戦略」詳報(1)】

東京新聞 TOKYO WEB
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【「革新的エネルギー・環境戦略」詳報(1)】
2012年9月14日
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/tohokujisin/nucerror/report/list/120914-1.html
▼全文引用

 「革新的エネルギー・環境戦略」詳報(2) >>

 政府が14日決定した「革新的エネルギー・環境戦略」は次の通り。
【はじめに】

 2011年3月11日に発生した東日本大震災東京電力福島第1原発事故。それは私たちが選んできた過去と思い描いていた未来に、根源的な疑問を突き付けた。私たちが信じてきた価値観、社会の在りよう自体が今、深く問い直されている。特に福島第1原発事故はこれまでのエネルギー社会の在り方に大きな疑問を投げ掛け、抜本的な変革を求めている。

 震災前、私たちはエネルギー社会の在り方として「原子力エネルギー」への依存度を高めることを柱として、安定供給の確保を目指し地球温暖化問題の解決を模索してきた。しかし今回の事故の深刻な現実を直視し事故の教訓に深く学ぶことを通じて、政府はこれまで進めてきた国家のエネルギー戦略を白紙から見直すべきであると確信するに至った。

 過去の延長上にはない新しい未来を創造する戦略。無謀な夢物語ではない実現可能な戦略。これまで国策に協力し、わが国の経済社会の発展を支えてきた原子力関連施設の立地自治体に対する感謝と配慮に満ちた戦略。これらの確固たる方針の下、ここに「革新的エネルギー・環境戦略」を策定する。

 新しい戦略は、省エネルギー・再生可能エネルギーといったグリーンエネルギーを最大限に引き上げることを通じて、原発依存度を減らし化石燃料依存度を抑制することを基本方針とし、これまでの広く多様な国民的議論を踏まえ、次の3本柱を掲げる。

 第1の柱は「原発に依存しない社会の一日も早い実現」。これを確実に達成するために三つの原則を定める。これにより第2の柱「グリーンエネルギー革命の実現」を中心に、30年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する。その過程において安全性が確認された原発は重要電源として活用する。

 第2の柱が「グリーンエネルギー革命の実現」。消費者を含む多様な担い手が主役となる新しい仕組みを構築し「グリーン成長戦略」を強力に推し進めるとともに、多くの国民の協力を得てグリーンエネルギーがおのずと普及・拡大していくような社会システムへの変革も進めていく。この挑戦を通じてグリーンエネルギーを社会の基盤エネルギーとして確立し、安定性の向上や地球環境の保全を図るとともに、新たな経済成長分野の出現を促していく。

 第3の柱は「エネルギーの安定供給」。第1、第2の柱を実現するためにもエネルギーの安定供給の確保は極めて重要な課題である。この観点から化石燃料などのエネルギーについても十分な電源を確保するとともに、熱的利用も含め、さらに高度な効率化を図る。並行して次世代エネルギー技術の研究開発を加速する。

 3本柱を実現するために「電力システム改革」を断行する。市場の独占を解き競争を促すことや発送電を分離することにより、分散ネットワーク型システムを確立し、グリーンエネルギーを拡大しつつ、低廉で安定的な電力供給を実現する。
【1、原発に依存しない社会の一日も早い実現】

 福島第1原発事故を経験し、福島県民をはじめ多くの地域や人々の苦しみが続いている中で、国民の多くが「原発に依存しない社会をつくりたい」と望んでいることは、これまでの国民的議論の検証結果からも明らかである。一方で、その実現に向けたスピード感や実現可能性については意見が分かれていることも分かった。こうした中、まずは政府が原発に依存しない社会をどう実現していくかという大きな「道筋」を示すことが重要である。

 同時に、原子力の安全性は確保できるのか、使用済み核燃料の問題、すなわち原子力のバックエンドの問題は解決できるのかといった原子力に対する不安や懸念に対して、どう克服するかを示す必要がある。特に今回の選択を契機に、あらためて浮き彫りになった核燃料サイクル政策を含む原子力のバックエンドの問題に正面から取り組んでいく必要がある。長い間、私たちは使用済み核燃料の処理や処分の方法にめどが立っていないことに目を背けてきた。過去の長い経緯とその間の青森県の協力があったという事実に、消費地も含めて国民全体で真摯(しんし)に向き合うところから始めた上で、今回こそ先送りせずに解決の道を見いだしていく。

<1>原発に依存しない社会の実現に向けた三つの原則

(1)40年運転制限制を厳格に適用する。

(2)原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働とする。

(3)原発の新設・増設は行わない。

 以上の三つの原則を適用する中で、30年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する。第一歩として政府が年末までにまとめる「グリーン政策大綱」をグリーンエネルギー拡大のロードマップと位置付け、期限を区切った節電・省エネルギーの目標、再生可能エネルギーの導入量、技術開発・普及などの目標とそれを実現するための予算、規制改革などの具体的な手段を盛り込む。

<2>原発に依存しない社会の実現に向けた五つの政策

 政府は新たな原子力政策をエネルギー・環境会議を中心として確立する。原子力委員会は原子力平和的利用の確認などの機能に留意しつつ、その在り方に関する検討の場を設け、組織の廃止・改編も含めて抜本的に見直す。

(1)核燃料サイクル政策

 核燃料サイクルについては、特に青森県に国策に協力するとの観点から、ウラン濃縮施設、再処理工場、低レベル放射性廃棄物埋設を3点セットで受け入れていただいたこと、海外再処理廃棄物を一時貯蔵・管理のため受け入れていただいてきたことなどの負担をお願いしてきた。これらの協力は重く受け止めなければならない。これまで使用済み核燃料の受け入れに当たっては、核燃料サイクルは中長期的にぶれずに着実に推進すること、青森県を地層処分相当の放射性廃棄物の最終処分地にしないこと、再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合には、日本原燃は使用済み核燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずることといった約束をしてきた。この約束は尊重する必要がある。青森県を最終処分地にしないとの約束は厳守する。他方、国際社会との関係では核不拡散と原子力の平和的利用という責務を果たしていかなければならない。こうした国際的責務を果たしつつ、引き続き従来の方針に従い再処理事業に取り組みながら、政府として青森県をはじめとする関係自治体や国際社会とコミュニケーションを図りつつ、責任を持って議論する。

 当面以下を先行して行う。

 ―直接処分の研究に着手する。

 ―「もんじゅ」は、国際的な協力の下、高速増殖炉開発の成果の取りまとめ、廃棄物の減量および有害度の低減を目指し研究することとし、年限を区切った研究計画を策定、実行し、成果を確認の上、研究を終了する。

 ―廃棄物の減量および有害度の低減を目的とした使用済み核燃料の処理技術、専焼炉などの研究開発を推進する。

 ―バックエンドに関する事業は民間任せにせず、国も責任を持つ。

 ―国が関連自治体や電力消費地域と協議する場を設置し、使用済み核燃料の直接処分の在り方、中間貯蔵の体制・手段の問題、最終処分場の確保に向けた取り組みなど結論を見いだしていく作業に直ちに着手する。

(2)人材や技術の維持・強化

 原子力の安全確保は最重要課題であり、高度な技術と高い安全意識を持った人材が、それを現実に支えていく使命を担う。特に廃炉や使用済み核燃料の処理技術の向上は、原発に依存しない社会の実現に向けた必須の課題である。福島第1原発事故により避難を強いられている福島の方々の一刻も早い自宅への帰還は除染などに関する技術の推進・人材育成によって促される。原子力の平和的利用、放射線影響に関する実証実験、新興国における原発の安全管理や廃炉に向けた技術支援のためにも原子力に関する人材育成や技術開発は欠かすことができない。

 人材や技術の維持・強化策を国の責務として年末までに策定する。日本原燃や日本原子力研究開発機構など原発関連事業の人材を散逸させることなく最大限活用するとともに、産業界や大学などにおける技術開発、基礎研究などを支援することを通じて新たな原子力人材の育成につなげる。

(3)国際社会との連携

 わが国は核拡散防止条約を批准し厳格な保障措置制度の下で原子力の平和的利用を進めてきた。日本の核燃料サイクル政策を含む原子力政策は米国をはじめとして諸外国との密接な協力体制の中で行われている。原発に依存しない社会の実現に向けた政策の見直しは国際機関や諸外国と緊密に協議、連携して進める。

 昨年の原発事故の経験と教訓を世界に共有することにより世界の原子力安全の向上に貢献していくことは、わが国の果たすべき責務であり、諸外国がわが国の原子力技術を活用したいと希望する場合には、相手国の事情や意向を踏まえつつ世界最高水準の安全性を有する技術を提供していく。

(4)立地地域対策の強化

 原子力関連施設立地地域対策については、国の新たな要請によって影響を受けることになる立地自治体に十分に配慮して措置を講じる。これらの立地自治体の構造転換を促すため、グリーンエネルギーの導入支援を含めた各種施策を優先的・重点的に行う。

 福島第1原発の廃炉、福島県などの除染、福島の方々の健康管理は国が責任を持って取り組む。

(5)原子力事業体制と原子力損害賠償制度

 国策民営の下で進められてきた原子力事業体制は、官民の責任の所在を明確化することについて検討を進める。

 原子力損害賠償制度は、福島第1原発事故の賠償の実施状況などを踏まえて、今後の制度の在り方について必要な検討を進める。

<3>原発に依存しない社会への道筋の検証

 原発に依存しない社会の実現に向けた道筋は必ずしも一本道ではなく長い道のりでもある。また、わが国のエネルギー構成の在り方は国際的なエネルギー情勢や技術開発の動向などによって大きく左右されてきたが、現時点で、こうした情勢を将来にわたって正確に見通すことは極めて困難である。エネルギー戦略を構築するに当たっては謙虚な姿勢で臨み、いかなる変化が生じても柔軟に対応できるようにしなければならない。

 政府はグリーンエネルギー拡大の状況、国民生活・経済活動に与える影響、国際的なエネルギー情勢、原子力や原子力行政に対する国民の信頼の度合い、使用済み核燃料の処理に関する自治体の理解と協力の状況、国際社会との関係などについて常に情報を開示しながら、検証を行い、不断に見直していく。
【2、グリーンエネルギー革命の実現】

 グリーンエネルギー革命と呼ぶべきイノベーションは既に福島第1原発事故以前から世界的規模で始まっている。コストの高さ、不安定さ、インフラの未整備、さまざまな規制といった経済的・制度的課題はあるが、それらを技術革新や政策誘導によって乗り越え、グリーンエネルギーを主要な電源にしようという明確な意思を持ってグリーンエネルギー革命を推し進める。

(1)節電・省エネルギー

 節電は10年(1兆1千億キロワット時)比で30年までに1100億キロワット時の削減を実現する。ピーク需要はスマートメーターなどにより大幅に抑制する。

 省エネルギーは最終エネルギー消費量ベースで10年(約3億9千万キロリットル)に比べ30年までに7200万キロリットル以上の削減を実現する。

▽スマートな省エネルギーの国民的展開に向けた政策誘導の徹底

(家庭・業務部門における省エネルギー)

 トップランナー基準などにより家電の省エネ性能の向上を図り、普及啓発などを通じて省エネ機器の導入を加速させる。特にLEDなどの高効率照明は20年までに公的設備・施設で、30年までにストックでそれぞれ、100%普及させることを目指す。

 給湯や家庭用燃料電池の高効率化を図るとともに、導入促進策を強化する。特に家庭用燃料電池は、家庭が分散型発電所になるためにも重要であり、20年時点で140万台、30年時点で530万台の導入を目指す。

(産業部門における省エネルギー)

 産業部門も、設備更新時には最先端技術の導入を促進し、製造プロセスの技術革新を図る。

(住宅、ビルでの省エネルギー)

 住宅・ビルは20年までに全ての新築住宅・建築物について段階的に省エネ基準への適合を義務化する。高性能な断熱材、窓、断熱塗料などの活用を促進する。改正省エネ法の早期成立によりトップランナー基準の導入を図る。既存の住宅・建築物は省エネ改修を促進する。

(熱利用の効率化による省エネルギー)

 都市排熱の効率的利用を促進し、熱導管網整備の円滑化などを進める。

 再生可能エネルギー熱(地中熱、太陽熱、河川熱、下水熱、雪氷熱、バイオマス熱など)の利用拡大を図る。

(次世代自動車)

 新車販売に占める次世代自動車の割合を20年までに50%とすることを目指し、燃料電池自動車は15年の市場投入に向けた環境整備を図る。

(スマートな節電)

 スマートメーターの設置、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の導入を進め、見える化に加え、ピーク時料金やポイント制、ネガワット取引を含む市場メカニズムを活用したスマートな節電の国民的展開を図る。

(スマートコミュニティーなど地域や都市における省エネルギー)

 スマートコミュニティー実証事業の成果を活用し、スマートハウスの普及、スマートコミュニティーの実現を進める。都市の低炭素化の促進に関する法律を活用し、都市機能の集約化と公共交通の利用促進を通じたコンパクトシティーへの転換を進める。

(負担などの説明)

 実現のためには一定の設備投資に伴うコスト負担や消費行動の変更が前提になることを国民全てに丁寧な情報開示で説明する。

(2)再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーは、10年1100億キロワット時から、30年までに3千億キロワット時(水力を除く場合、10年250億キロワット時から30年までに1900億キロワット時)以上の開発を実現する。

再生可能エネルギーの大量導入

(固定価格買い取り制度による民間投資の誘発)

 固定価格買い取り制度の効果的な運用で、多様な主体による投資を一段と促進させつつ、量産効果を発揮させる。

(公共施設に対する公共投資の実施)

 公共施設において、太陽光発電や蓄電池の設置を進める。バイオマス発電は、廃棄物焼却施設への高効率発電設備や下水処理場におけるバイオマス発電設備の導入を進める。災害時のエネルギー供給を含めた地域のエネルギーセンター機能としての活用を図る。

(地域主導の導入加速化)

 地域が主導する地域の特性を踏まえた再生可能エネルギーの導入加速化を支援する。その際にはエネルギーインフラの整備とまちづくりを一体で進めていく。

(立地規制対策、環境影響評価手続き)

 さまざまな立地規制の改革、風力や地熱の拡大を早めるための環境影響評価法に基づく手続きの簡素化・迅速化、系統に接続する際の課題解消など、導入を阻害する制約を取り除く。

(系統強化策)

 風力発電導入促進のための送電網の整備に着手する。

(系統安定化対策)

 太陽光や風力といった出力が不安定な電源の導入拡大に対し、火力発電の確保、送電網の広域運用、大型蓄電池の導入促進に向け環境整備する。

(研究開発・実証)

 高効率太陽光発電、洋上風力発電、高密度蓄電池、高度な地熱開発、高効率バイオマス発電などの技術開発・実証を加速し、中長期的には波力・潮力などの海洋エネルギー発電の実用化も目指す。

(負担などの説明)

 実現のためには、固定価格買い取り制度の賦課金、系統強化策・系統安定化対策などのコスト負担が前提となることを国民全てに丁寧な情報開示で説明する。

  ◇  ◇  ◇

 政府は、以上の内容を踏まえ、エネルギー・環境会議の場を通じ、グリーンエネルギー革命の実現に向けた工程を具現化した「グリーン政策大綱」を年末をめどに策定、これを国民に提示して目標や負担を共有する。

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