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特集ワイド:「原発ゼロ」戦略、どこへ/上 核燃料サイクルを温存、「虚構」に逃げる政府<毎日新聞>

毎日新聞
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特集ワイド:「原発ゼロ」戦略、どこへ/上 核燃料サイクルを温存、「虚構」に逃げる政府
毎日新聞 2012年10月15日 東京夕刊
http://mainichi.jp/feature/news/20121015dde012010006000c.html
▼全文引用

 政府が「原発ゼロ」を目指すと決定したわずか半月後、Jパワー(電源開発)は大間原発(青森県)の建設再開に踏み切った。原発を減らすはずが、な ぜ増える? キツネにつままれた思いの人も多いだろう。一方、次期衆院選で政権に返り咲くとの見方が強い自民党の原発政策は「原発ゼロ」とは、ほど遠い。 「原発ゼロ」政策の矛盾や今後は? 2回にわたって探る。【戸田栄、江畑佳明】

 「原発政策は、普天間飛行場県外移転の断念、八ッ場ダム着工再開に続いて、国民に不可解な政策転換を印 象づけた懸念を抱いています。私を含め党があれだけ苦労してまとめた2030年代に原発をゼロにするという目標をしっかり閣議決定しなかったからこうなっ てしまったのです」

 民主党原発事故収束対策プロジェクトチームの座長を務めた、荒井聡・元国家戦略担当相が憤る。荒井氏は、民主党北海道総支部連合会の代表でもある。大間原発津軽海峡を隔てて接する道南地方では、函館市が建設差し止め訴訟を準備するなど怒りが渦巻いている。

 政府の新方針「革新的エネルギー・環境戦略」は▽新増設は認めない▽再稼働は、原子力規制委員会が安全 確認をしたものに限る▽運転開始後40年で廃炉にする−−の3原則で、30年代をめどに原発をなくしていく考えだ。ところが発表からわずか5日後、戦略そ のものの閣議決定は見送られ「不断の検証と見直しを行いながら遂行する」に後退した。また新設とは別だとして、3・11前に着工していた青森県の大間原 発、東京電力東通1号機、中国電力島根3号機の建設継続を容認。Jパワーは1日、大間原発の建設再開を表明した。

 荒井氏は「いったん建設を認めているので、法的には中止させられないにしても、認可は3・11前の古い安全基準に基づくものです。せめて原子力規制委員会が作る新基準を待てと行政指導をするのが当然です」と指摘する。



 それにしても、原発建設には巨費を要する。大間の運転開始は最短で17年ごろになりそうだが、39年までなら約20年しか稼働できず、コストが引 き合わない。この点について、Jパワーは「30年代はあくまで目標で決定されたものではないと考えています」と回答。さらに「戦略は核燃料サイクル政策を 継続するとしています。そのためにプルサーマル発電(プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を軽水炉で使う発電)をフルにできる大間原発は欠かせないと 考えています」と胸を張る。

 まるで、実は戦略が建設を後押ししてくれた、と言うかのような口ぶりだ。「原発ゼロ」戦略ではなかったのか?

  ■

 「戦略は、原発ゼロと核燃料サイクル政策の併存という根本的な矛盾を内包しています」と、政府の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の委員でもある植田和弘・京都大教授は批判する。

 核燃料サイクルは、原発の使用済み核燃料に含まれるプルトニウムやウランを取り出して再処理し、別の形 での原子力発電を目指す。これには2通りがあり、高速増殖炉を使う方法は、福井県の高速増殖原型炉「もんじゅ」が95年の運転開始以来トラブル続きでろく に稼働していないことが示すように実現性に乏しく、戦略は開発に見切りをつけた。このため、もう一つの方法であるプルサーマル発電を行う大間原発の意義が 増したと、Jパワーは考えたのかもしれない。だが、こちらも青森県に建設中の使用済み核燃料再処理工場は97年の完成予定が19回も延期されるなど、多く の問題を抱えている。

 植田教授は「核燃料サイクル政策に展望はなく、民主党も当初は放棄を考えていました。しかし、使用済み核燃料の処理の問題から温存してしまったのです」と解説する。

 もう少し詳しく説明すると、民主党は二つのポーズを崩せなかった。日本は核兵器の材料となるプルトニウムを約207トン(うち再処理済みは約45 トン)保有している。核燃料サイクルで使って減らすというポーズを保たなければ「核武装のための保有では」と疑われる。また国内に約1万6869トンもた まった使用済み核燃料の処理の観点からも旗を降ろせなかった。降ろせば、原発立地地域で危険な使用済み核燃料をずっと保管しなくてはならないうえ、青森県 が再処理工場稼働を前提に受け入れた約2834トンの使用済み核燃料の移管先を見つける必要がある。つまり、核のゴミ処理を解決できないために、展望のな い核燃料サイクルを続けるという袋小路に自ら入り込んでいるのだ。

  ■

 こうして核燃料サイクル政策を残したまま、原発ゼロ政策は組み上げられた。荒井氏は「原発ゼロという目 標を掲げたのは、民主党であればこそ。だが、どうしようもない核燃料サイクルというフィクションを継続するのでは、原発問題の根本的解決は目指せません」 と警鐘を鳴らす。

 植田教授も原発ゼロという目標設定には理解を示しつつ「核燃料サイクル政策から脱却できなかったため、 戦略のリアリティーがなくなった。使用済み核燃料の問題への対処が難しいのはわかるが、これをあいまいにしたまま、運転するほど使用済み核燃料が増える原 子力発電を続けるのはもう限界です」と指摘する。

 戦略は使用済み核燃料の総量規制などを提案し、具体化していく出発点にすべきだったという。「総量規制 から原発の発電量にはおのずと制約が出る。この議論が始まって初めて、原発推進側が目を背けてきた核燃料廃棄物の問題が真剣に検討される。その方が原発ゼ ロの目標を掲げるだけより、よほど重要です」


 大阪府市は10日、福井県の関西電力大飯原発3、4号機の運転継続は原発ゼロ戦略と矛盾するとし、国に停止を申し入れた。元経済産業官僚で大阪府 市統合本部の古賀茂明・特別顧問は「戦略では、原子力規制委の新安全基準作成後、基準を満たした原発を動かすのが大前提。電力確保の名目だけで再稼働させ た大飯は止めるのが筋」と強調する。

 もっと根本的な批判がある。京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は、即座に全てを廃炉にすべきだと言う。「事故がどんな事態を招くのか。福島事故から学んだうえでの政策でしょう。危ないとわかっているのに動かすことが、そもそもおかしい」と憤る。

 原発ゼロを目指す「革新的エネルギー・環境戦略」は、多くの矛盾を露呈しつつある。戦略の再構築が必要だ。

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