「北の山・じろう」時事問題などの日記

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関電と九電が露払いを務める電力業界の値上げコンセンサスが浮上。地域独占企業のあるべき姿を今一度、考え直してほしい<現代ビジネス>

現代ビジネス
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町田徹「ニュースの深層
2012年10月02日(火)
関電と九電が露払いを務める電力業界の値上げコンセンサスが浮上。地域独占企業のあるべき姿を今一度、考え直してほしい!
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▼全文引用

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大飯原発に繋がる送電線〔PHOTO〕gettyimages
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 経済産業省資源エネルギー庁と電力各社が進める電気の値上げ戦略の全容が浮かび上がってきた。

 原子力発電への依存度が高い関西電力と九州電力が、化石燃料の購入コストが大きく膨らんでいるという論理を前面に押し出し、他の電力会社に先駆けて値上げラッシュの露払いを行うというものだ。

 電気料金の値上げによって、原発の相対的な低コストイメージを浮き彫りにして、政府が公約した原発依存度の引き下げに揺さぶりをかけたいという本音が透けて見えるような戦略だ。

 値げそのものは避けられないと思うが、大飯原発の再稼働を強行して原発がなくても電力が足りることを露呈した関西電力と、その前に玄海原発の再稼 働を進めようとしてやらせ問題を引き起こした九州電力が先頭を切って値上げに踏み切るというのは、今なお地域独占という特権の享受と引き換えに安定供給を 義務付けられているはずの電力会社の対応として相応しいとは到底思えない。

 東日本大震災の直撃を受けて、燃料代だけに加えて、設備の復旧コストもかさみ、経営が最も苦しいはずの東北電力が、被災者に負担をかけたくないと の配慮から「現時点では、自助努力で頑張ってまいりたい」(海輪誠社長)と堪えている姿勢をもう少し見習ってほしいものである。

関電が平均10数%程度、九電が同10%の値上げ

 福島第一原子力発電所で未曾有の事故を起こした東京電力の家庭や中小事業所向けの料金引き上げ問題が、9月から平均8.46%の値上げによって一応決着したことを受けて、全国各地の電力会社が値上げの追随に強い意欲をみせている。
(2)

 例えば、四国電力の千葉昭社長は9月25日の記者会見で、「伊方(原子力)発電所の再稼働が大幅に遅れる中、電力需給ならびに経営の安定化を図っ ていくことが重要な課題」としたうえで、「当社の収支環境は一段と悪化しており、今後、電力の安定供給を維持していくためにも、あらゆる対策を講じて、経 営収支の改善に努めていかなければならない状況にあります」と述べて、値上げを示唆した。

 また、新聞報道によると、北海道電力の川合克彦社長も同27日、札幌市内で開かれた北海道庁、北海道経済産業局、地元経済団体などとの会合で、泊 原子力発電所の再稼働がなければ、「2012年10月〜13年3月期に火力発電所の燃料費負担が1,000億円増える」と説明し、採るべき手段のひとつと して値上げを匂わせたという。

 こうした中で、先陣を切ったのが、関西電力と九州電力の2社だ。

 読売新聞などが報じたところ、両社はいずれも来年4月からの値上げを目指しており、今秋、正式な値上げ申請に踏み切る準備を進めているという。値上げ率は、関電が平均10数%程度、九電が同10%になる見通しだそうだ。

取引拡大に難色を示すメガバンク

 筆者自身が取材した結果、さらに驚くべきこともわかった。経済産業省資源エネルギー庁、電力各社など関係者の間では、この2社の値上げを先行させることについて、ある種のコンセンサスらしきものができたというのである。

 どういうことかというと、今回の値上げでは、関電、九電が先陣を切り、北海道、北陸、四国などが第2陣で追随。東北はやるとしても第3陣で、中部と中国は当分の間やらないという、暗黙の了解が存在するというのだ。

 まさか、独占禁止法に触れるような"値上げカルテル"や"値上げ談合"ではないのだろうが、関電、九電の2社は、電源に占める原発の割合が高かったので、他社に比べて、代替の化石燃料の購入費がかさんでおり、値上げの先行を認めざるを得ないというのである。

 さらに、メガバンクが水面下で、値上げを申請しない限り、両社へのこれ以上の融資には応じられないと、取引拡大に難色を示している問題もあるという。メガバンクが融資のリスクを国民や一般に転嫁するような主張を繰り広げているとすれば、筆者が拙著『東電国有化の罠』(ちくま新書刊)で記したような乱暴な話が再び罷り通っているということになるだろう。

 原発問題との関連で捉えれば、本格的な原発の再稼働を認めないなら値上げを呑め、という圧力とみなすしかない。

(3)
図URL
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実際の資金繰りを無視した論理

 これまでの原発に比べれば、石油やガスを使った火力発電のコストが高いのは事実だ。現状は、電力会社の経営を圧迫しており、いずれ値上げが必要だという議論に疑問の余地はない。筆者も、値上げが不要だと言い張るつもりなど毛頭ない。

 しかし、安全対策や原子力損害賠償保険の不備を放置して、これまでのように原発が低コストだという主張は成り立たない。そのことは、これまでも何度も本コラムなどで指摘してきた通りである。

 加えて、筆者が、今回の値上げに首を傾げざるを得ないのは、化石燃料の購入費だけに着目しており、各社の体力や実際の資金繰りを無視して論理が組み立てられている点である。

 ある電力会社がまとめた興味深い試算(上の表)を入手し、ここに掲載したので、ちょっとみてほしい。ポイントは、右端の「コスト増分を両積立金で 相殺できる年数(③/④)」である。これは、化石燃料の依存度拡大に伴って膨らむコストを、過去の蓄積で、どれぐらいの期間にわたって賄えるかを示した数 字だ。換言すれば、電力各社の体力を勘案した場合、各社がどれぐらいひっ迫しているかを示したのが、この数値なのである。

 最も苦しいのは、0.3年(3.6ヵ月)しか持たない四国電力だ。次いで、0.4年(4.8ヵ月)しか持たない北海道電力が深刻と言える。

 一方、今回、トップを切って値上げに踏み切る構えの関電は、0.5年(6ヵ月)と3番手に過ぎない。4番手に0.7年(8.4ヵ月)の北陸電力が続き、同じく値上げの先陣を切るという九電は5番手の0.9年(10.8ヵ月)なのだ。

 つまり、この指標に従って、従来型の料金認可の基準を持ち込めば、値上げの第1陣は、四国と北海道のはずである。関電や九電はそれぞれ2番手、3番手グループであって然るべきなのである。

(4)
廉価な電気の安定供給を続けようと奮闘する東北電力

 さらに、経営の実態に着目するならば、東北電力の対応を論じずにはいられない。

 同社の海輪誠社長は28日の記者会見で再三、「第二四半期の業績予想で連結ベースで400億円の純損失とのことだが、そうした状況を踏まえ、電気 料金の見直しについてどのように考えるか」などと値上げの必要性を問い質されながら、「仮に、こうした状況が長く続き、原子力発電所の再稼働の見通しが立 たず、自己資本をさらに取り崩していかざるを得ないとなった場合、将来の安定供給ができなくなる可能性があるので、あらゆる選択肢を考えていかなければな らない」と前置きしつつも、現時点では「今後、さらに徹底した効率化を進め、増分コストを吸収してまいりたい。これまでも申し上げてきたが、被災地の復興 を妨げるような電気料金の値上げは、極力回避したいと考えている。そのために自助努力を進めていくという姿勢は変わらない」と、なんとか値上げを回避した いという姿勢を崩さかなかったことは注目に値するだろう。

 同社は、東日本大震災の際、福島原発より震源に近い女川原発の被害をボヤや一部の電源の浸水被害にとどめたばかりか、東通原発を無傷で切り抜けさせた。にもかかわらず、両原発の再稼働を止められたままだ。

 東日本大震災では、主力の火力発電所も軒並み壊滅的な打撃を受けたばかりか、その後の集中豪雨で残された水力発電所が甚大な被害を受けた経緯もあ る。しかし、巨大なガスタービンを2基増設するなどの緊急措置をとって、今夏は、他社のような数値目標付きの計画停電を要請するという事態を回避してみせ た。

 つまり、燃料費以外にも、猛烈な設備コストの負担を迫られ、キャッシュフローの面でどこよりも厳しい環境に直面しながら、安易な値上げをせずに、廉価な電気の安定供給を続けようと奮闘しているのである。

 電力業界は、他の産業と比較にならないほど同業各社間の交流が密接な業界だ。各社は、電力システムにおける制度的な優位性や自社の収益を優先することに優秀な人材を振り向けて、国民の目から見れば身勝手としか映らない対応を打ち出すのを、そろそろやめてはどうだろうか。

 むしろ、地域独占という特権を認められた企業に、何が求められているのか、今一度、冷静に考えてみてほしい。

 東北電力の経営姿勢は、そのよいケーススタディになるのではないだろうか。

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