河北新報
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【特集】福島原発の101時間
福島原発の101時間(2)3月14日午前11時1分/3号機爆発 所長が叫ぶ
2012年08月08日水曜日
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1106/20120808_03.htm
▼全文引用
<技術陣が緊張>
昨年3月12日の福島第1原発1号機原子炉建屋の爆発は、冷却できなくなった燃料棒から生じる水素の破壊力を見せつけた。
翌13日午前2時44分、3号機の高圧注水系を手動停止した。再起動を試みるが、バッテリーが不足して機能せず、原子炉を冷やせなくなった。午前5時ごろ、あと約5時間で炉心溶融との計算が第1原発から東電本店に伝えられ、技術陣に緊張が走った。
「いま行かないと1号機の二の舞いだ。さっさとやるんだ」。本店はベントで水素を逃がすことを促す。放射線量が上昇していたが、爆発は避けなければならない。第1原発の吉田昌郎所長は「もう、やろう」と応じた。
ベントは一時的にできたが、13日昼から再び冷却できない状態が続いた。13日午後2時すぎ、吉田所長は「水素を逃がす方法を本店さん、何かいいアイデアありますか。下手すると昨日(1号機爆発)のようになる」と助言を求めた。
妙案はなかった。線量が高く、作業員は近寄れない。「ヘリコプターで接近し、何かで突き破れないか」。幾つかのアイデアが出されたが、現実的ではなかった。
本店は3号機爆発の可能性を広報するかどうかを検討した。高橋明男フェローは「1号機のような爆発があることを言う必要があるのではないか」と呼び掛けた。
<会長は楽観視>
これに勝俣恒久会長が待ったを掛けた。13日午後7時前、官邸に詰めた武黒一郎フェローとの電話でのやりとりの音声が記録されている。
「確率的に(爆発は)非常に少ないと思う。そんな話をして国民を騒がせるのがいいのかどうかは首相判断だけど。社長会見で聞かれたら『あり得ない』と否定するよ」
勝俣会長の楽観的な見立てをあざ笑うように、3号機は危険水域に足を踏み入れた。翌14日午前6時半ごろ、吉田所長は「7時前に設計圧力超えちゃう。うえー。危機的状況ですよ、これ」と悲鳴に近い声を上げた。
午前11時1分。吉田所長がマイクをつかんで叫んだ。「本店、本店。大変です。大変です。いま爆発が起きました」。本店でテレビのニュース映像を見た幹部は「あれ、1号機よりひどいじゃん」とうめいた。
爆発から約3分後。本店非常災害対策室で慌ただしく席に着いた勝俣会長は、清水正孝社長と小声で話し込むだけだった。(肩書はいずれも当時)