河北新報
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【特集】福島原発の101時間
福島原発の101時間(3)3月14日午後6時22分/2号機燃料、むき出しか
2012年08月09日木曜日
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1106/20120809_01.htm
▼全文引用
<負の連鎖呼ぶ>
昨年3月14日午前11時すぎに起きた福島第1原発3号機の水素爆発は負の連鎖を呼んだ。
爆発の混乱が落ち着いた午後1時前。「ベント回路が爆発で駄目になった」と現場から東京電力本店に報告され、緊張が走る。清水正孝社長は本店で「2号機の対処方針、早急に決めて。本店は全面支援」と言った。
原発では吉田昌郎所長が次々に指示を出す。「3号機と同じことになる。燃料を露出させないよう最優先で」
2号機を冷やした蒸気駆動の隔離時冷却系装置はいつ止まってもおかしくなかった。吉田所長は代わりの手段として消防車を使う注水を計画し、送水ラインも出来上がりつつあった。
現場から悪い情報がもたらされた。2号機に注水するポンプが3号機の爆発でがれきに埋まったという。「炉の圧力が上がっている。非常に危機的な状況です」。吉田所長は危機感を強めた。
<「早くベント」>
ベントで原子炉圧力を下げる作業は難航した。逃がし安全弁を開けて減圧しようと試みるが、うまくいかない。海水をくみ上げるポンプとして使っていた消防車の燃料が切れ、注水が途切れる不手際も重なった。
注水できないとメルトダウンは避けられない。オフサイトセンターに詰めた武藤栄副社長は「早くベントしないとヨウ素とかがいっぱい出ちゃう。1、3(号機)より悪くなるよ」と警告した。
午後6時半。原発の社員が計算結果を口にした。「18時22分ぐらいに燃料がむき出しになっているんじゃないか。2時間で完全に燃料が溶ける。22時ぐらいには圧力容器が抜ける可能性がある」
東電は作業員の退避の検討に入った。本店非常災害対策室は「炉心溶融の1時間前に退避。その30分前から退避準備」との方針を示す。「とにかくベントだ」。本店から悲鳴に近い指示が飛ぶ。
午後9時半すぎ、原発正門で毎時3.2ミリシーベルトの放射線量を計測。本店に戻った武藤副社長は「なんか出ているんだよ、やっぱり」とつぶやいた。
原発事故で最も放射性物質をまき散らしたのは2号機とされる。社内テレビ会議の映像は東電が深刻な事態を予想していたことを物語っている。(肩書はいずれも当時)