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党紙配布判決 公務員にも市民の権利【社説】(12月8日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/425407.html
▼全文引用
中立を求められる公務員であっても、職場を離れて一市民となったときは、市民としての権利を行使できるはずである。
その権利が、憲法が保障する「表現の自由」であれば、なおさらだ。最高裁がそれを、職場での地位で「無罪」と「有罪」に切り分けたことに、疑問がぬぐえない。
休日に職場外で政党の機関紙を配布したとして、国家公務員法(政治的行為の制限)違反の罪に問われた2被告の上告審判決があった。
最高裁はいずれも上告を棄却した。元社会保険庁職員は無罪、元厚生労働省課長補佐は罰金10万円の有罪が、それぞれ確定する。
政治活動で訴追された公務員の無罪が最高裁で確定するのは初めてとなる。元社保庁職員が、公務と関係のない休日に、私的に行った機関紙配布を無罪としたのは妥当だ。
ところが、元課長補佐については指揮命令や指導監督を通じ他の職員に影響を及ぼすことのできる地位にあったとし、「公務員の職務遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる」と判断した。
勤務時間外の休日に、地位を利用せず公務員であるとも明かさずに、郵便受けに機関紙を配布した元課長補佐の行為に、観念的ではなく実質的な「政治的中立性を損なう」おそれがあるのだろうか。
裁判官の一人が、そうしたおそれが実質的に認められるとはいえないとして、反対意見を述べたことに留意したい。
国家公務員法は、国家公務員の政治的行為を公私の別なく一律に禁じている。
だが、最高法規である憲法が表現の自由や思想、信条の自由を保障している以上、公務員であってもその制限は極力抑制的であるべきだ。
公務員の政治活動制限をめぐっては、「猿払事件」で最高裁大法廷が1974年、「行政の中立性確保のため、合理的で必要やむを得ない限度内であれば合憲」との判断を示している。
この判例自体の見直しを求める声もあるが、元課長補佐の行為も「合理的で必要やむを得ない限度内」に収まっているのではないか。
予算を執行し、さまざまな許認可に関与できる立場にある公務員が、地位を利用して圧力をかけるような行為は、もちろん認められない。勤務時間中の政治活動も同様だ。
しかし、公務員の地位利用禁止は公職選挙法でも規定している。大切なのは権力の乱用を防ぐことだ。
今回の判決も「表現の自由は民主主義を基礎付ける重要な権利」と指摘している。公務員の政治的行為もここを原点に考える必要があろう。
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