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崖っぷちの選択:’12衆院選・あすへの道筋は/2 生活保護と就労支援 /神奈川
毎日新聞 2012年12月07日 地方版
http://senkyo.mainichi.jp/news/20121207ddlk14010222000c.html
▼全文引用
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◇実情考え働き口を
11月末の午前、横浜市中区のビル。「失礼します」。男性(59)は大きな声で2階トイレのドアをノッ クした。床にモップをかけ、ぞうきんを手に隅々まで磨く。指さし確認で作業漏れをチェック。4時間かけて1、2階の会議室や廊下、トイレを掃除し「終わり ました」と笑った。
今年4月から市内のビル管理会社で清掃員として働き始めた。週3日、半日ずつの勤務で給与は月約5万円。無遅刻、無欠勤だ。
北海道小樽市に生まれ、30代で川崎市に来て、同市や横浜市の建築、港湾の現場で働いた。10年ほど 前、職場の人間関係を理由に退職。住まいも失い野宿者として放浪し、5年前から中区寿町地区の簡易宿泊所で暮らし始めた。働きたい気持ちはあったが、やり たいことも就職する方法も分からなかった。
転機は、中区役所が国の補助を受けて委託実施する「仕事チャレンジ講座」だった。あいさつや自己紹介など生活訓練に始まり、清掃などの専門技術も学ぶ。今年2〜3月に受講し、今の職を得た。
「生活に張り合いが出た。掃除の仕事は体が続く限りやる」。生活保護費は減額されたが、「もっと働きたい」と意欲は高い。
◇
今春、有名お笑い芸人の家族が生活保護を受けていたことが明るみに出て、生活保護費の不正受給に社会の 関心が高まった。受給者が無料でもらった薬を転売し、利益を得た男が有罪判決を受ける事件も起きた。国や自治体が財政難にあえぐ中、公的扶助である生活保 護費の適正な支出は大きな課題だ。
各党は不正受給防止や自立のための就労支援を訴えるが、具体的な議論は深まらない。
寿町地区の生活保護受給者は10月末で5802人、中区の受給者の6割以上を占める。しかし、心身に不 安を抱える人も多く、健康で就労可能な受給者は376人にとどまる。中区役所の担当者によると、日雇い労働しかやっていなかったり、ハローワークの利用法 が分からなかったりで、くすぶる人が少なくないという。
◇
「働きたい人は多いが、受け入れ先は少ない。生活保護受給者を減らす取り組みが大切だ」。先の男性を雇用したビル管理会社「エム・ケー・サービス」社長の村岡俊久さんは指摘する。
(2)
就労支援を受ける途中でやめてしまうケースもある。仕事チャレンジ講座主任で社会福祉法人県匡済(きょうさい)会職員の妹尾(せのお)光治さんは「人や地域によって事情は異なり、実情に合った支援策が必要」と訴える。
寿町地区の生活保護受給者支援について、当初関心の薄かった地域住民にも徐々に理解は広がっている。「続けていくことが大事。視察に来てくれた国会議員もいる」。現場の実情を理解し、腰を据えた政治を願っている。【松倉佑輔】=つづく
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■各党の生活保護(就労支援)に関する主張
民主 自立のための就労支援充実。真に必要な人を生活保護認定し不正受給防止
自民 就労困難者と可能者で別の仕組みを検討。給付水準の原則1割カット
未来 暮らしを支える雇用の不安を払しょく
公明 求職者支援制度を充実
維新 自立支援策の実践の義務化
共産 公営住宅整備など生活支援の強化
みんな 不公平、年金との不整合を解消
社民 ケースワーカーの増員と専門性の確保
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