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この国と原発:第4部・抜け出せない構図/5 「原子力ムラ」の建言
毎日新聞 2012年01月26日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20120126ddm002040071000c.html
▼全文転載
(1)
◇「ざんげ」しても「必要」
東京電力福島第1原発事故で危険な状態が続いていた昨年3月下旬。原子力分野の指導的立場にある約30 人に1通の電子メールが届いた。「原子力の平和利用を進めてきた者として、事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝いたします」との一文で始まる 「福島原発事故についての緊急建言」が添付されていた。
建言作成の中心は原子力安全委員会の松浦祥次郎・元委員長、住田健二・元委員長代理、田中俊一・元原子力委員会委員長代理の3人。「なぜ謝らなければならないのか」と拒否した人もいたが、関連学会の会長経験者ら16人が建言に名を連ねた。
政府や東電の対応の鈍さに業を煮やし、「英知を集め、総合的かつ戦略的な取り組みが必須」と訴えた「原 子力ムラ」内部からの異例の建言は、4月1日の記者会見で公表された。折しも、政府が「復興に向け歩みを進める段階に入った」として、多くの閣僚が防災服 からスーツ姿に「衣替え」した日。平静を装う官邸と対照的に、田中氏は「炉心がかなり溶けている。これほど国民に迷惑をかけると予想しなかった。私たちに は原子力を推進してきた責務がある」と硬い表情で語った。
16人は事故をどうとらえたのか。
(2)
毎日新聞の取材に、99年のジェー・シー・オー(JCO)臨界事故時に現地で対応の指揮を執った住田氏は「安全神話が崩れたというJCO事故の教訓を 10年間生かさなかった。電力会社からは『あんな田舎企業がやらかしたことは我々に関係ない。対策を取れば自分たちまでいいかげんなことをしていると思わ れる』という声も聞こえた」と歯がゆさをにじませる。
斎藤伸三・元日本原子力学会長は「現場と本社幹部の意思疎通が欠けている。いわゆる大会社病」と分析。元原子力委員会委員の一人は「お互いに理解 し合っていて、一言言えば全部分かってしまう世界。建設的な議論が起きることはなく、批判が政策に生きることはほとんどなかった」と閉鎖的な体質を指摘し た。
だが、さすがに原発不要論を明確に打ち出す人はいない。
永宮正治・元日本物理学会長は「原子力技術は人類が手に入れた大きな資産。手にしたものを放棄するのはもったいない」。成合英樹・元日本原子力学会長は「原子力は極めて素晴らしい。世界のエネルギー競争が始まり、脱原発なんて言ってられない」と訴えた。
政府は事故後、原子力安全規制のあり方などを考える「原子力事故再発防止顧問会議」を設置し、座長に松 浦氏を選んだ。同会議は昨年12月、事故の再発防止のための提言をまとめ、今年4月に発足する「原子力規制庁(仮称)」について、事業者などからの独立性 の確保を強調し、ムラからの脱皮を求めた。
(3)
松浦氏は76年間の人生を振り返ってこう言う。「エネルギーの足りない時代を生きた自分としては、今の日本の人口で生活レベルを維持しようとしたら原子力の安全を確保しながら使わないとやっていけないのではないか、と思う」
事故に「ざんげ」した重鎮が指摘したムラの体質。変えていくことはできるのか。まだ、答えは見えない。=つづく
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