「北の山・じろう」時事問題などの日記

 ☆今は、無きブログのタイトル☆ 『取り残された福島県民が伝えたいこと』 管理者名 「取り残された福島県民」 当時のURL>http://ameblo.jp/j-wave024/

この国と原発:第5部・立ちすくむ自治体/1 机上の計画、避難「不可能」<毎日新聞>

毎日新聞
ホーム>http://mainichi.jp/
この国と原発:第5部・立ちすくむ自治体/1 机上の計画、避難「不可能」
毎日新聞 2012年04月24日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20120423ddm003040182000c.html
▼全文転載


(1)

 原発再稼働に慎重な声が広がる中、原発立地自治体では東京電力福島第1原発事故を経験した今でも、再稼働を求める声が少なくない。防災対策に不安を抱えながらも、原発依存から抜け出せない自治体の姿を再び追う。

                         

 ◇茨城県、対象106万人に「バス24万人分」

                         

 「福島の事故で現実に苦しむ人が生まれた。もう原発を動かさないで」。茨城県那珂市の谷田部裕子さん(54)は隣村の東海村へ買い物に出掛ける度、日本原子力発電東海第2原発の建屋を見てそう思う。

                         

 99年9月30日、自宅から約2キロの核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で国内初 の臨界事故が起き、放射線が外部に漏れた。中学2年だった長女が学校から帰宅したのは、その4時間後。途中で激しいにわか雨に見舞われたといい、セーラー 服はびっしょりぬれていた。健康被害は出ていないが、一時は「私の責任だ。子供を守ってやれなかった」と自分を責めた。

                         

 それから11年余りたって起きた福島の事故。福島県二本松市出身の谷田部さんは、古里が放射性物質で汚 染されていく姿を目にした。JCO事故を経験してすら、頭の片隅に「家族に原発事故が降りかかるようなことはない」という期待のようなものがあったが、そ んな考えは吹き飛んだ。自宅は東海第2原発から約7キロ。何かあれば迷わず逃げるつもりだ。「でも、実行は絶望的」とも感じている。

(2)

 東日本大震災による津波で外部電源を喪失し、冷温停止まで3日以上かかった東海第2原発。国の原子力防災指針見直しに伴い、新たに設定される見通 しの緊急防護措置区域(UPZ)の30キロ圏内には14市町村が含まれ、その人口は全国の商業用原発で最も多い約106万人(14市町村の30キロ圏外住 民含む)にのぼる。

                         

 「県内にあるバスを総動員しても1回に24万人しか搬送できない。一斉に106万人を避難させることは不可能だ」。橋本昌茨城県知事は3月5日の県議会代表質問でこう言い切った。

                         

 UPZでは放射線量に応じて避難や屋内退避が必要になることから、県原子力安全対策課はバスによる 100万人規模の避難をイメージした。現行計画に「屋内待避所からの搬送は手配車両による」とあるためだ。県内で登録されているバス7080台に乗車定員 を掛け、最大限の搬送人数をひねり出した。その答えが「24万人」。「非常時に何台チャーターできるか」「避難ルートは」といった業界団体との擦り合わせ はしていない。あくまで机上の数字だ。

                         

 「(24万人分のバスが)水戸に全部来るわけではないので避難はとても無理」(高橋靖・水戸市長、人口 約27万人)「50人乗りバスが1000台以上必要。一刻一秒を争うことを考えれば不可能」(海野徹那珂市長、同約5万6000人)。106万人一斉避 難は「絵空事」と受け止められ、自治体の議論は停止している。

(3)

 新設される予防防護措置区域(PAZ)の5キロ圏内に村全域がすっぽり入る東海村。現行計画では村内避難を前提に避難所を定めているが、計画見直 し後は村外へ逃げることになる。村原子力安全対策課は「村外避難となると村独自では計画は作れない。国・県の方針と整合性がないと意味がない」と困惑。 30キロ圏内14市町村からは「うちだけでは決められない。県に音頭を取ってほしい」との声がこぞって上がる。

                         

 ◇北海道・泊村、指定13カ所が5キロ圏内 実のある安全、北電頼み

                         

 札幌市から西へ約70キロ。日本海に面した北海道・積丹(しゃこたん)半島の入り口に北海道電力泊原発はある。現在国内で唯一稼働している3号機も、定期検査のため5月初めには停止する。

                         

 海岸線に沿って走る国道229号で泊村に入ると原発はすぐ左手にあるが、丘に遮られて施設を見ることは できない。その先は役場や漁港、商工会などが集まる村中心部。村内の多くの部分は海沿いにまで急斜面や崖が迫り、村民約1900人は国道沿いのわずかな平 地で暮らしている。

                         

 震災後、村は「津波ハザードマップ」を作り、学校や集会所など16カ所を避難所に指定した。だが、このうち13カ所は原発の5キロ圏内。「津波から逃げられても、原発で事故が起きたら……」。住民からは疑問の声が上がる。

(4)

 海が間近に迫る渋井地区集会所は原発からわずか約500メートルで、海抜は5メートルしかない。60代の主婦は、海辺の峰に隠れた原発の方を見やりながら「ここの避難所は津波も原発も危ない。いざとなったら船で逃げようかと思うが、できるだろうか」と話した。

                         

 村の担当者は「海抜も十分な民間施設を避難所にできないか検討している」と話すが、そこも原発からはわずか10キロしか離れていない。更に「ハザードマップはどの高さにどんな施設があるかを示した目安にすぎない」と語り、マップに実効性がないことを認めた。

                         

 北電は地震の際、泊原発を襲う津波の高さを9・8メートルと想定。海抜15メートルの防潮堤を建設する予定だが、村は20メートルを要望している。

                         

 「避難施設も避難路も万全ではないが、海岸まで山が迫る地形を考慮すると、どちらも建設は難しい。村としては、北電がどれだけ安全対策を施すかに尽きる」。村民の安全をどう守るかについて、牧野浩臣村長は「北電頼み」であることを明かした。=つづく

この国と原発 アーカイブ2012年
http://mainichi.jp/feature/20110311/konokunitogenpatsu/archive/news/2012/index.html
毎日新聞 ホーム>http://mainichi.jp/