「北の山・じろう」時事問題などの日記

 ☆今は、無きブログのタイトル☆ 『取り残された福島県民が伝えたいこと』 管理者名 「取り残された福島県民」 当時のURL>http://ameblo.jp/j-wave024/

この国と原発:第6部・輸出の最前線で今 受注合戦、震災後も<毎日新聞>

毎日新聞
ホーム>http://mainichi.jp/
この国と原発:第6部・輸出の最前線で今 受注合戦、震災後も
毎日新聞 2012年07月11日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20120711ddm010040040000c.html
▼全文転載


(1)
                    

 東京電力福島第1原発の事故後、原発の是非を巡る政策が定まっていない中で、日本の原発輸出ビジネスに 変化の兆しが見えない。経済発展がめざましい中国やインドなど新興国は、急増する電力需要を火力発電所の建設でしのいでおり、化石燃料の枯渇や価格上昇へ の懸念から、原発への期待は高い。原発輸出国の米、露、仏、韓国などは巨大なマーケットととらえて国を挙げて輸出攻勢をかけ、日本も激しい受注競争を繰り 広げている。

                         

 ◇「巨大商機」日本も攻勢 官民挙げて仏、露、韓国に対抗

                         

 「原発輸出先進国」と共に日本も輸出にしのぎを削っている。日本政府が原発輸出の姿勢を鮮明にしたの は、06年に策定した「原子力立国計画」からだ。それまでは日本の原発産業は、米ゼネラル・エレクトリック社(GE)などと提携して原発の部品を海外に供 給するだけだった。新たに策定した計画では、政府系金融機関による支援など、国を挙げて輸出を積極的に後押しする方針を明確にした。

                         

 この方針は、民主党政権でも引き継がれた。原発を輸出戦略の柱の一つに改めて据え、原発全体の製造から 建設、運営管理、燃料調達まで一体で輸出する「パッケージ型インフラの受注」を掲げた。10年には菅直人首相(当時)自らがベトナムに乗り込んで、原発2 基の優先交渉権を獲得するなど、官民挙げての輸出促進体制を打ち出した。

    
(2)
                    

 昨年3月の東日本大震災による東京電力福島第1原発事故以降、国内の原発政策が定まらない中でも、輸出 はなし崩し的に進んでいる。メーカーと組んで原発輸出の中核を担っていた東電は事故後、輸出事業からの離脱を決めた。しかし政府は11年8月、「諸外国が 我が国の原子力技術を活用したいと希望する場合には提供していくべきだ」として交渉中の案件は継続する姿勢を強調。同年12月には、ベトナム、ヨルダン、 韓国、ロシアとの間で、原子力技術を平和目的に限定することなどを定めた原発輸出に必要な原子力協定を国会で承認した。

                         

 政府が原発輸出に力を入れるのは、世界で原発需要が増加し、「世界的に進んだ技術力を持つ日本にとっては、巨大な商機」(経済産業省)と映るからだ。

                         

 国内メーカーにも後戻りが難しい事情がある。東芝は原発需要の増大を見越して、06年に世界有数の原発 メーカー米ウェスチングハウス(WH)を54億ドル(当時の為替レートで約6200億円)で買収。日立製作所は07年にGEと原発部門を統合するなど、巨 額の資金を原発事業につぎ込んでいる。

    
(3)
                    

 あるメーカー首脳は「国内の新設は難しい。(原発事業を維持するためには)海外でどこまで伸ばせるか だ」と話す。実際、日立はリトアニアに続きフィンランドでも受注を目指す。東芝もトルコでの受注活動に加え、子会社のWHが米国で6基を受注。三菱重工業原発メーカー仏アレバと組んでヨルダンで初の海外受注を狙うなど、各社の受注合戦は震災後、むしろ活発化している。

                         

 一方、世界の原発輸出国も受注を活発化させている。国内発電量の4分の3を原発で賄う「原子力大国」の フランスは、国を挙げて国営のアレバ社と電力公社「EDF」を後押しして営業活動を展開。ソ連時代の86年にチェルノブイリ原発事故を起こしたロシアも、 国内外での原発建設を積極的に進めている。海外で建設合意済みの原発は、旧ソ連圏を中心にベラルーシなど20基以上に達しており、さらにヨルダン、チェコ の入札にも参加し、日本勢と受注競争を繰り広げている。

                         

 韓国も急速に勢いを伸ばしている。李明博(イミョンバク)政権は10年1月、「原子力発電輸出産業化戦略」を策定し、12年までに10基、30年までに80基の原発を輸出し、世界の原発建設の20%を占有する「世界3大原発輸出国」になるとの目標をぶち上げた。

    
(4)
                    

 独自に開発した原子炉の建設コストは、フランスの欧州加圧水型軽水炉(EPR)や、日立などが展開する改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を2割以上も下回っており、新興国での受注で大きな武器となっている。

                         

 実際、09年には日仏に競り勝ってアラブ首長国連邦から受注を獲得。今年3月にもベトナムで、日本が受注を決めた原発とは別の2基で優先交渉権を獲得した。トルコ、ヨルダン、インドなど各国で日本の最大の競争相手になっている。

                         

 ◇核兵器転用防止へ、厳格ルール

                         

 原発の輸出に関して、核兵器への転用や第三国への流出などを防ぐため、国際的なルールに基づいた厳格な規制が課せられている。

                         

 具体的には、核拡散防止条約(NPT)や原発保有国などで作る原子力供給国グループ(NSG)のルール で、輸出国は相手国から(1)事業内容や事業者の詳細な説明(2)原発以外に転用したり再輸出しないとの保証(3)国際原子力機関IAEA)の査察受け 入れの確約--などを得ることが求められる。

                         

 これらのルールを実施するため、原発の輸出入国は2国間で原子力協定を結ぶとともに、国内法を整備し、 事業者に対してこれらの手続きを徹底させている。日本の場合、外為法の規定で輸出業者は政府に(1)~(3)などの証明書類を提出した上で、経済産業相の 許可を得なければ輸出できない仕組みになっている。

    
(5)
                    

 IAEAは、ヒアリングや立ち入りなどの査察によって、これらの手続きが徹底されているかをチェックし ている。日本政府は、原子力協定の締結を原発輸出の第一歩と位置づけており、現在11カ国・1国際機関と協定を締結。さらにインド、南アフリカ、トルコと の締結交渉を行っている。

                         

 ◇中国、インドへ熱視線 火力に依存「最大の潜在市場」

                         

 世界30カ国・地域で427基(合計出力3億8400万キロワット)の原発が、今年1月1日の時点で運 転している。年間の総発電量は原発先進国が原発建設を本格化した1970年代に比べ、20倍以上に拡大した。経済協力開発機構OECD)は2035年に は世界の原発の総発電量は09年の1・7倍に増加すると推計している。

                         

 経済発展に伴い中国、インド、韓国などアジア諸国で原発の建設ラッシュが起きている。00年以降、世界 で営業運転を開始した原子炉のうち日本を除くアジア地域が約6割を占めた。建設中の原発の発電能力は、世界の約6割、計画中でも約5割をアジア地域が占め る。「福島の事故後も新興国の建設意欲は失われていない」(21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹)とされ、今後東南アジアやサウジアラビアなど中東産油国 でも新規導入が相次ぎそうだ。

    
(6)

                    

 これらの国々が原発建設を急ぐ背景には、火力発電所の急増による大気汚染の深刻化に加え、将来の石炭や原油枯渇を見据えて、安定的に電力を確保するエネルギー安全保障の観点がある。

                         

 特に中国、インドは、総発電量で世界1位と5位を占める「電力大国」に急成長。一方、原発依存度は2~ 4%にとどまっている。とりあえず火力発電所を増設してしのいでいるため、世界全体の原発依存度を押し下げる一因になっている。逆に、「最大の潜在市場」 (経済産業省幹部)との期待は高く、世界の原発メーカーが受注獲得にしのぎを削っている。

                         

 一方、20世紀の原発産業をリードしてきた日米欧は、08年のリーマン・ショック以降の経済停滞で原発 の新規建設の動きが鈍化。さらに昨年3月の福島第1原発事故の影響で、日本の全原発が一時停止したほか、ドイツやスイスが10~20年程度かけて全原発を 廃止する方針を打ち出すなど、「脱原発」の動きも起きている。

                         

 旧ソ連圏や東欧では、西側諸国に頼らず自国でエネルギーを賄うエネルギー安全保障の観点から、ロシア製の原発が積極的に建設され、小国にもかかわらず原発依存度の高い国が多い。

                         

==============

                         

 この特集は坂井隆之が担当しました。(グラフィック日比野英志、編集・レイアウト稲垣洋介)

     この国と原発 アーカイブ2012年
http://mainichi.jp/feature/20110311/konokunitogenpatsu/archive/news/2012/index.html
毎日新聞 ホーム>http://mainichi.jp/