「北の山・じろう」時事問題などの日記

 ☆今は、無きブログのタイトル☆ 『取り残された福島県民が伝えたいこと』 管理者名 「取り残された福島県民」 当時のURL>http://ameblo.jp/j-wave024/

この国と原発:第6部・輸出の最前線で今/下(その2止) 大国に探る商機<毎日新聞>

毎日新聞
ホーム>http://mainichi.jp/
この国と原発:第6部・輸出の最前線で今/下(その2止) 大国に探る商機
毎日新聞 2012年07月13日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20120713ddm003040064000c.html
▼全文転載


(1)
                    

 <1面からつづく>

                         

 ◇日本メーカー3社、ワシントンで情報戦

                         

 米国の首都ワシントンを流れるポトマック川を見下ろす高層ビルの20階。米バージニア州アーリントンの 「三菱原子力システムズ」本社からは、対岸に米議会棟などを一望できる。同社が設立されたのは06年7月。当初はワシントン中心部にオフィスを構え、社員 はわずか2人だった。

                         

 手始めに新型原子炉の認可手続きのため、米原子力規制委員会(NRC)に通った。「あなたたちは本気なのか」。担当者から投げかけられたのは予想以上に冷たい言葉だった。

                         

 79年のスリーマイル島原発事故以降、原発の新規建設をストップしていた米国政府が原発推進に本格的に かじを切ったのは00年代半ば。原油価格の高騰や、「クリーンエネルギー」として原発への関心が高まっていた時期だった。米政府は05年に原発の建設コス トの最大8割まで債務保証するなどの支援策を打ち出し、「原発需要が一気にはじけた」(日本メーカー)。「原発ルネサンス」と呼ばれる開発ラッシュの幕開 けだった。

                         

 日本の原発メーカーは海外事業の本格化に向けて三者三様の対応をとった。東芝は06年、当時で6000 億円を超える巨費を投じて米ウェスチングハウス(WH)を買収、日立製作所は07年に米ゼネラル・エレクトリック(GE)と原発事業を統合した。WHの買 収に失敗し、取り残された形の三菱重工は、単独で米市場に乗り込むしかなかった。

    
(2)
                    

 「当時は年に10基程度の新規発注が見込まれるほどの勢いがあった」。三菱原子力の山内澄社長は振り返 る。同社は次々に日本から社員を送り込み、米国人スタッフの採用も拡大。09年11月にアーリントンに本社を移した際には陣容が100人を超え、現在は全 米に7拠点、約250人の体制まで膨らんだ。

                         

 東芝と日立が、それぞれのパートナーのWHとGEの営業部隊を前面に立てて原発を売り込んでいるのに対 し、三菱重工原発建設を請け負う米国の建設会社と手を組んで「日米チーム」を構成。当初は懐疑的だったNRCからも信頼を勝ち取り、激しい売り込み合戦 に割って入った。

                         

      □

                         

 首都ワシントンは、政府や議会関係者との人脈づくりや情報収集の場としても重要だ。エネルギー政策は国 の根幹を占め、政府の方針がビジネスを左右する。米国は厳しい原発の安全規制に加え、核不拡散など安全保障面で世界に強い影響力を及ぼす。「海外の原発事 業を展開する上で、米国がどちらの方向を向いているのかを知り、米国の基準に合わせることは極めて重要」(日本メーカー関係者)という。

                         

 GEと組む日立。バルト海沿岸の小国リトアニアの原発受注が確実視されているが、その裏には数年間にわたるワシントンでの地道な準備があった。特に重視したのが米国務省だ。

    
(3)
                    

 原発ビジネスには国際政治や安全保障からの視点が欠かせない。ワシントン駐在の日立社員らは足しげく国 務省に通い支援を要請。ロシアへのエネルギー依存からの脱却を目指し、原発建設を急ぐリトアニアの事情を説いた。昨年7月、クリントン米国務長官がリトア ニアを訪問し、グリバウスカイテ大統領に対し原発建設計画への支援を表明。「最終的に受注が決まったのは日米両政府によるリトアニアへのアプローチが大き かった」(日立)という。

                         

 業界関係者が「もっとも情報収集に力を入れている」と評するのが東芝。地元のコンサルティング会社と契 約し、米政府や議会、業界団体やシンクタンクに情報網を張り巡らせる。原発ルネサンスに沸いていた07年には、ロビー活動公開法に基づいて公開された同社 のロビー活動費はWH社を含め200万ドル(約1億6000万円)を超えた。大半を占めるのが原子力やエネルギー政策に関する議会などへの働きかけだっ た。NRCに新規建設が申請された28基の原子炉のうち、東芝・WH連合は半数以上の16基を占め、いち早く認可を取得し、4基の原子炉着工に踏み出し た。

                         

 ◇市場、シェールガスと競争

     (4)
                    

 米国の原発市場は今、非常に強い逆風にさらされている。最大の要因は米国内の「シェールガス革命」だ。 00年代後半から技術の進歩によって、採掘の困難だったシェールガスの開発が各地で急速に進み、天然ガス価格を押し下げた。現在ではピーク時の5分の1程 度まで値が下がり、専門家の見方では天然ガスによる発電コストは原子力の半分以下とされる。また、08年秋のリーマン・ショック以降、米国の電力需要見通 しが大幅に落ち込んだのも誤算だった。

                         

 東芝・WH連合の16基のほか、GE・日立連合は5基、三菱重工も3基の「受注」を一度は取り付けた が、実際に着工にこぎ着けたのはWHの4基のみ。GE・日立の原子炉を採用する予定だったテキサス州原発計画が、建設申請を取り下げるなど事業停止や中 断の動きが相次いでいる。福島第1原発の事故も追い打ちをかけ、同じテキサス州で東芝製の原子炉建設事業を進めていた電力会社は、「悲劇的な事故により米 国内の原発開発の成功が見通せなくなった」として、事業からの撤退を決断した。

                         

 元NRC委員のピーター・ブラッドフォード氏は「すでに米国の原発は経済的に成り立たず、今後数年間の新規着工はほんのわずかだろう」と予測。「原子力技術を売り込もうとする日本メーカーにとって、米国はもはや約束された市場ではない」と指摘する。

     (5)

                    

 それでも日本メーカーは、米国での原発ビジネスに強い期待を持ち続けている。「日立GEニュークリア・ エナジー」の吉成康男COO(最高執行責任者)は、「天然ガス価格は変動しやすく、電力のほとんどがガスになるとは考えにくい。米国は世界の4分の1の原 発を持っており、潜在的な市場規模は依然大きい」と語る。東芝も「米国の原子力推進の方針に大きな変更はなく、引き続き原子力プラントの拡販を行う」(広 報)と強気だ。

                         

 「あなたたちの原子炉を採用したら、コストはいくらぐらいまで下がるのか」。三菱原子力システムズは最近、米国の電力会社から新たな打診を受けた。ライバル会社が受注済みだったはずの原発建設案件の「乗り換え」の相談だった。

                         

 発注する電力会社は天然ガス価格の急落でコストに敏感になっており、新規着工の進まない案件が増えてい る。その間に「採用予定の原子炉を他のメーカーに乗り換えることは十分あり得る」(山内社長)。真の原発大国の復活の動きを虎視眈々(たんたん)とうかが いながら、米国では水面下で各メーカーのせめぎ合いが続いている。(この企画は、平地修、岩崎誠、花岡洋二、高橋慶浩、宮島寛、大久保陽一、和田憲二が担 当しました)

     この国と原発 アーカイブ2012年
http://mainichi.jp/feature/20110311/konokunitogenpatsu/archive/news/2012/index.html
毎日新聞 ホーム>http://mainichi.jp/