「北の山・じろう」時事問題などの日記

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この国と原発:第7部・メディアの葛藤/7 温暖化対策との関連づけ リスク語らぬまま<毎日新聞>

毎日新聞
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この国と原発:第7部・メディアの葛藤/7 温暖化対策との関連づけ リスク語らぬまま
毎日新聞 2012年10月31日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20121031ddm002040064000c.html
▼全文転載


(1)

                    

 東京電力福島第1原発事故まで、原発は地球温暖化対策の柱とされていた。原発と地球温暖化対策は、いつからセットで語られるようになったのだろうか。

                         

 87年以降の記事を収録している毎日新聞の記事データベース(東京本社発行紙面)で「原発または原子 力」「地球温暖化」をキーワードに検索すると、最も古い記事は89年4月18日朝刊の「環境対策をサミットで--ブリックス・IAEA事務局長」だった。 国際原子力機関事務局長が当時の竹下登首相に「途上国での火力発電増加は地球温暖化を招く」として、先進国首脳会議で原発を含めた環境対策を取り上げるよ う申し入れた、という22行の小さなベタ(1段見出し)記事だった。

                         

 「政府や産業界、電力業界が環境と経済成長の両立に原子力が有効だと言い出したのは地球サミットのころ から」と、桝本晃章(ますもとてるあき)・元東京電力副社長(74)は言う。地球サミットとは92年6月にブラジル・リオデジャネイロで開かれた国連環境 開発会議のことだ。

                         

 世界から189カ国・地域の代表が参加し、153カ国によって気候変動枠組み条約が調印された。その結 果「CO2(二酸化炭素)が増えるのはよくない。原子力はいいんじゃないかという社会的雰囲気になり、(86年の)チェルノブイリ原発事故で激しかった反 原発運動も下火になった」と桝本氏は見る。

     (2)
                    

 ただ、キーワード検索で記事が急増するのは97年12月の地球温暖化防止京都会議の前後からだ。96年までは年に1~23本だったのが、97年は67本となった。

                         

 温室効果ガスを90年比で5%以上削減する日本政府案の実現には、10年までに原発20基の新設が必要 との見解を通商産業省(当時)が示したことや、これに対して疑問の声が上がっていることなどを報じた。以降、年間30本前後の記事が載るようになり、 07~10年には57~77本と再び増える。

                         

 温暖化対策のための原発推進を積極的に訴える記事はない。しかし、世界的に原発が復権する「原子力ルネ サンス」や政府、産業界の動きを紹介する中で、「地球温暖化防止への関心も高まる中、原発回帰の流れが強まっており……」とするなど、温暖化対策の一つに 原発があるという前提の書き方が目立つようになる。そこでは、原発事故のリスクに目が向けられることはなかった。

                         

 07年12月に行われた温暖化問題についての毎日新聞の世論調査では「温暖化防止には原子力発電が有効と言われています。原子力発電の増設に賛成ですか」という質問が用意された。それは「学界の雰囲気が変わった」と指摘される時期とほぼ符合する。

    
(3)
                    

 国立環境研究所の野尻幸宏・地球環境研究センター上級主席研究員(55)は「IPCC(国連の気候変動 に関する政府間パネル)の3次から4次報告書のあたりで『相場観』が変わった」と話す。01年に第3次、07年に第4次報告書が出され、いずれも温暖化に よる影響を前回の報告書より厳しく予測した。

                         

 野尻氏は「90年代に考えていたより厳しい削減が必要になり、00~11年の間に原発を頭から否定する研究者は減ったようだ」と話す。

                         

 これに対し、地球温暖化問題に取り組んできたNPO法人「気候ネットワーク」代表の浅岡美恵弁護士 (65)は「温暖化対策は火力や石炭発電を減らしながら再生可能エネルギーを開発するような総合的な政策が必要なのに『CO2を排出しない』という原発の メリットだけが限定的に強調されてきた」と語る。

                         

 そして「再生可能エネルギーの開発を進めさせないために原発が利用されてきたようなもので、こうした矛盾点を再三指摘してきたが取り上げられることはなかった」とメディアに厳しい言葉を投げ掛けた。

                         

 経済部出身の今松英悦(えいえつ)・元毎日新聞論説委員(63)は「温室効果ガスの削減は、経済成長を損なわずに達成しなければならないというのが政府と経済界の論理。『原発はまあ、必要なんだろう』というのが、大方の経済記者の考え方だった」と振り返る。

     (4)
 ただ、地球サミットのあった92年から福島第1原発事故までの間、毎日新聞の社説は「温暖化防止 原子力頼みはおかしいぞ」(97年12月29日)▽ 「安易に原発に頼らない低炭素社会の姿を描くべきだ」(07年7月27日)--など、温暖化対策に原発を絡めることを批判している。=つづく

この国と原発 アーカイブ2012年
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