「北の山・じろう」時事問題などの日記

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{日米同盟と原発}第4回「ビキニの灰」 (2)俺たちで終わりに <東京新聞>

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【特集・連載】
日米同盟と原発

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第4回「ビキニの灰」 (2)俺たちで終わりに 
2012年12月25日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/arrandnuc/list/201212/CK2012122502000199.html

▼全文転載

 

1954年9月25日、東京都渋谷区の火葬場で、亡くなった久保山さんの遺影と遺骨を手に歩く妻と娘ら

写真
 

◆久保山の「遺言」

 「邦人漁夫、ビキニで原爆被害?」「降灰の放射能受けて」「危険を知らぬ船員たち」-。中部日本新聞(現・中日新聞)は一九五四(昭和二十九)年三月十六日付の朝刊社会面トップで、第五福竜丸の被ばくを大々的に報じた。

 二日前の十四日、静岡県焼津市へ戻った乗組員二十三人はその日のうちに、市内の協立焼津病院(現・焼津市立総合病院)で診察を受けた。このうち、 重傷と診断された機関長の山本忠司(27)と甲板員の増田三次郎(27)の二人は東京大学付属病院へ送られ、残り二十一人も焼津病院に入院した。いずれも 「急性放射能症」と診断された。

 航海中、船内の異変を外部に漏らさなかった最年長の無線長、久保山愛吉(39)は焼津病院に入院した二十一人の一人。帰港直後の十四日午前、久保 山は妻すず(32)の実弟で現在八十六歳の椿原(ちんばら)松男と会い、真相を打ち明けた。「原爆らしきものを見た。キノコ雲もすごいもんだ」

 椿原は「真っ黒い顔をしていた。みんなで晩飯を食おうと約束していたのに…」と振り返る。

 新聞がビキニ事件を報じた翌十七日、米国はようやくビキニ環礁の水爆実験を認める。厚生省(現・厚生労働省)は、焼津病院に東大医学部の医師ら八人からなる調査団を派遣。米国も放射線の専門医師や研究者ら十四人が現地に入った。

 久保山ら二十一人は焼津病院から約十日後、放射能に侵された骨髄組織の治療を受けるため医療設備の整った東大病院と東京第一病院(現・国立国際医療研究センター)へ移った。移送は在日米軍がチャーターした軍用機だった。

 東京第一病院で、久保山を当時診察した医師、熊取敏之(32)らが五五年に「ビキニ放射能症の臨床並に血液学的観察」をまとめている。

 それによると、久保山の被ばく線量は少なくとも五シーベルト。一般の人が一年間に浴びる許容線量一ミリシーベルトの五千倍で、即死しかねない量だった。

 操舵(そうだ)手で、現在八十五歳の見崎進(27)は久保山と同室で、ベッドが隣だった。「八月下旬になると、症状が悪化した久保山さんは奥さん や母親が見舞いに来ても手で振り払い、部屋で暴れていた。『ああ、死ぬのか』『次は俺の番だ』と思って怖くなった」と振り返る。

 その久保山は九月二十三日、息を引き取った。死因は急性放射能症と肝炎による多臓器不全だった。

 地元・焼津市の郷土史家が九三年に発行した著書「死の灰を越えて」は、生前の妻すずが久保山から聞いた最後の言葉を紹介している。

 「原水爆の被害者は俺たちだけでたくさんだ。俺たちで終わりにしてもらいたい」

 乗組員二十三人のうち、現在までに死亡が確認されたのは久保山を含め十五人。そのうち、ほぼ半分の七人が肝臓がんなどで六十歳の還暦を前に亡くなった。八人いる生存者も今なお被ばくの恐怖や後遺症に苦しんでいる。

 操機手だった現在八十歳の池田正穂は退院後、近所の人たちから「放射能がうつる」などと避けられた。偏見から逃れようと漁師を辞め、京都の染め物 会社やトラック運転手など住まいや職を転々とした。ビキニの灰で黒ずんだ手の甲をさすりながら「六十年たっても放射能は得体(えたい)が知れん」と漏ら す。

 当時冷凍士で、現在七十八歳の大石又七。昨年三月の福島第一原発事故以降、全国各地を回り、自らの被ばく体験を元に放射能や原発の危険性などについて訴えている。

 大石は「放射能の影響を過小評価している点ではビキニも福島も同じ」。肝臓がんを患った経験から「被ばくの本当の怖さは症状が後から出てくること。福島の人たちも長期にわたって影響が出ることも考えられ、国はしっかり調査を続けるべきだ」と話す。

 放射能の恐ろしさをまざまざと見せつけたビキニ事件。その影響は他の漁業者や庶民の食卓にまで飛び火する。

 

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