「北の山・じろう」時事問題などの日記

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キプロスとEUの茶番劇を演出する政治と金融の根深い癒着<川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」<現代ビジネス>

現代ビジネス
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川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」
 2013年04月05日(金) 川口マーン惠美
キプロスとEUの茶番劇を演出する政治と金融の根深い癒着
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▼全文転載


(1)
ATMから預金を引き出すキプロス市民 〔PHOTO〕gettyimages
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 破産の危機に陥ってEUを震撼させたキプロスという国は、地中海に浮かぶ島で、有名な脱税天国だった。キプロスが脱税天国になったのは最近の話で はない。この国はすでに70年代に、ヨーロッパ、アフリカ、中東の真ん中という地の利を生かして、スイスとまではいかなくても、リヒテンシュタイン並みの タックスヘイブンになろうとした。

 91年にソ連が崩壊すると、金持ちのロシア人がキプロスにやって来た。汚れた金を隠すのに絶好の場所だった。まもなく郵便箱だけの幽霊会社が4万を超えた。

 2004年にキプロスがEUに加盟し、2008年にユーロが導入されると、キプロスの価値はさらに上がった。キプロス政府は富裕ロシア人を優遇 し、ロシア人はキプロス籍を取り、EU市民としての権利を享受できるようになった。現在キプロスに投資されているお金のうち、少なくとも198億ユーロ (約2兆4000億円)がロシアからの資金だという(次に多いのがイギリス)。

 ・・・と、こういう話を、われわれ一般市民は今まで知らなかったが、しかし、金融関係者はもちろん、政治家は知っていたはずだ。マネーロンダリン グを生業とし、ロシア人の不法所得でジャブジャブしている国を、なぜ彼らはEUに加盟させ、しかも、素知らぬ顔でユーロ圏に取り込んだのか? それを思う と、今さらながら、EUに対する不信感は募る。

一般市民の小口預金に手を回した大統領

 いずれにしても、キプロス経済は、銀行資産が経済規模の7倍以上に膨れ上がり、バブル景気で潤ったが、そのお金を利回りのよいギリシャ債権に投資していたため、ギリシャの金融危機をまともにかぶった。

 ただ、ギリシャとキプロスは、元々兄弟分のような関係だ。言葉も同じなら、人間も同じだし、ギリシャへの投資が危ないことはわかっていたはずだ。 ドイツでさえ、2年ぐらい前から時々、"キプロスが危ない"という報道はあった。ただ、我々一般市民は、キプロスなど小さな国だし、しかも、危ない国なら 他にもたくさんあるということで、それらのニュースをぼんやりとやり過ごしてしまった。

(2)

 3月に入ってから、突然、「今月末までにEUが援助しなくてはキプロスは破産だ」と、ニュースで大騒ぎが始まった。またしても裏切られた気分だった。なぜ投資家は今まで素知らぬ顔で、大金を右から左へ黙々と動かし続けていたのだろう。

 EUは救済の条件として、キプロスに、預金として持っているお金のうちから58億ユーロを拠出させようとした。"ロシアン・マフィアの黒い金を少 し放出しろ"ということだ。しかし、大統領はロシアの顧客に遠慮し、58億ユーロの調達のため、一般市民の小口預金にも手を付けようとした。そして、国内 で大非難が巻き起こると、今度はそれを非情なEUのせいにした。

 一連の交渉の間、アナスタシアディス大統領の態度は誠実とは言い難かった。抜本的な改革なしで、どうにかうやむやに切り抜けようとしているのが顕 著だった。私の目には、大統領は、"キプロスが破産すれば、困るのはあなたたちでしょ"とEUを脅しているようにさえ見えた。心の中で、"知っていたくせ に何を今頃?"と呟いていたのかもしれない。

 結局EUは、脅されたにせよ、脅されないにせよ、多くの妥協を呑み、キプロスを救済させていただいたのである。

政治家や富裕層の不正送金と返済免除

 この交渉の間、キプロスの銀行は一切の業務を中止した。キプロス国民が銀行に殺到して取り付け騒ぎになったり、あるいは、資金を外国に送金したり することを防ぐためだ。かろうじてATMだけは作動し、1人1日100ユーロに限り、引き出すことができた。それが、ほぼ2週間続いた。

 そして、25日に援助が決まり、ようやく28日になって銀行は再開したが、ただし、預金の引き出しは、1人1日1口座300ユーロまで、外国での クレジットカードでの現金引き出しは5000ユーロまで、外国への現金携行は1000ユーロまでなどと、いろいろな制限が付いた。

 ところが、すでに同日、またもや不正が明るみに出た。銀行が閉鎖される直前に(閉鎖されていた間も?)、秘密裏に多くの外国送金が為されていたというのである。

 貧しい市民が、現金を絶たれたまま、自分たちのささやかな預金はどうなるのかと不安に苛まれ、あるいは、何の関係もない他国のEU市民の税金がそ の援助につぎ込まれようとしていたそのとき、キプロスの政治家や富裕層(そして、ロシア人も?)の面々は、不法に、自分のお金を外国に逃がしていたらし い。

 その金額は計7億ユーロ。アナスタシアディス大統領の娘婿もリストに入っていることが判明したが、大統領は、自分が情報提供したことはありえないと言っている。

(3)

 それだけではない。翌日には、さらにあきれ返るニュースが暴露された。キプロスの二大銀行、キプロス銀行とLaiki銀行が、07年から12年の あいだに、国会議員や役人、あるいは、彼らの関わっている企業に巨額の融資を行い、しかも、返済を大幅に、あるいは全額、免除していたというのだ。

 EDEK(社会民主党)とKKO(社会環境党)以外のすべての党が、この大型不正融資の恩恵を受けていたというから、金融と政治の癒着は想像され ていたより根が深い。あるいは、今まで想像されていたことが、ようやく表に出たというべきか。いずれにしても、その政治家たちが今、金融引き締めやら、腐 敗の撤廃やら、財政改革を真面目な顔で審議しているのだから、まさに茶番だ。

タックスヘイブン国の首相が議長を務めるEU機関

 こうなると、EUも茶番に見えてくる。

 たとえば、EUの首脳からなる欧州連合理事会というのがある。いわゆるEUの最高決定機関で、その議長国は半年ごとの輪番制だ。そして、その半年 間は、議長国の首脳が理事会を仕切るのだが、去年、12年の後半は、キプロスが議長国であった。破産寸前の国が27ヵ国の纏め役を務めながら、自国の救済 を試みるとは、冗談にもならない。EUはおかしな機関になってしまったものだ。ちなみに、来年前半期の議長国はギリシャの予定だ。

 EUには、ユーロを使用する17ヵ国で作られたユーログループという機関もある。その議長を2004年よりつい3ヵ月前まで務めていたのは、ルク センブルクの首相、ジャン=クロード・ユンカーだった。ルクセンブルクは、一人あたりのGDPが世界一という裕福な国であるが、その秘密はやはり金融にあ る。最近になってやっと、金融改革に着手し始めたものの、長く事実上のタックスヘイブンであったことは周知の事実だ。その国の首相がユーログループの長と は、やはりおかしなことだった。

 そういえば、キプロスの金融破たんに関して、もう一つ興味深いニュースがあった。アナスタシアディス大統領は、EUと交渉中、正教会とも交渉して いた。正教会というのは、395年にローマ帝国が東西に分裂したあと、東ローマ帝国(現イスタンブールが中心)で発達したキリスト教だ。現在、主にギリ シャと東欧で信仰されている。その正教会キプロス大主教が、自国の苦難を見て、援助を申し出たというのである。

 聞いてみたら、キプロス正教会はひどく金持ちだ。国内最大の地主であり、2番目に大きい銀行と、最大のビール醸造会社の筆頭株主であり、多くのホ テル、ゴルフ場を経営し、また、鉱山まで持っている。しかも、すべての収入は非課税。なぜかというと、教会だからだそうだ。日本の宗教法人よりも、さらに 優遇されている。

 

(4)

正教会側が出した援助の条件というのが興味深く、ユーロからの脱退だ。自国がEUなどという近代的な組織に牛耳られているのが、我慢できないのか もしれない。正教会は現在、今回の金融危機で困窮している人々に食料配布など多くの援助をしているという。ゴルフ場経営よりはこちらの方が、教会として まっとうな活動だ。

 それにしても、教会でお金持ちなのはカトリック教会だけではなかったということが、このたび、よくわかった。

富裕者救済の試みは不完全に終わるも・・・

キプロスは、南北に分かれており、今回の騒動は南の、キプロス共和国で起こった話だが、北はイスラムの国で、事実上トルコが仕切っている。北キプ ロス・トルコ共和国といい、住民もトルコ系だ。ただ、北キプロストルコ共和国を独立国として認めているのは、現在、世界中でトルコだけだ。統一の試みは 何度も為されたが実現しなかった。

 そのトルコは、かつてはEUに入りたくて仕方がなかったが、あまり歓迎されていないということに気付いたのか、今ではすっかりEU熱は冷め、どちらかというと、アラブやロシアの方に視線を向けている。経済はどんどん発展しているし、すでに侮れない国である。

 なお、アナスタシアディス大統領の富裕者救済の試みは完全には成功せず、3月30日に発表されたところによると、たとえばキプロス銀行の大口預金 者は、10万ユーロを超えた預金分については、その37.5%を銀行の株券と交換、22.5%は銀行の経営状態がよくなるまで凍結と、大きな痛手を負う模 様。投資家としてはショックだろう。ひょっとすると例外措置の適応など、今頃、必死で抜け道対策を練っているかもしれない。

 いずれにしても、EUのガタガタは当分収まりそうにない。これら一連の騒動を見て、トルコ人が何と思っていることか、聞いてみたい気がする。

 

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