「北の山・じろう」時事問題などの日記

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記者の目:山本美香さんの「遺言」=森忠彦<毎日新聞>

毎日新聞
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記者の目:山本美香さんの「遺言」=森忠彦
毎日新聞 2012年09月12日 00時29分(最終更新 09月12日 00時37分)
http://mainichi.jp/opinion/news/20120912k0000m070108000c.html
▼全文転載


                    

 ◇「争いを早く終わらせたい」

                         

 預かったままの1枚の写真がある。昨年、アフガニスタンを取材した際に撮ったという、お気に入りの一 枚。「できれば、これを使っていただけますか。気に入っているんです」。毎日小学生新聞での連載開始に当たり、少し恥ずかしそうに言った彼女の表情は、ま るで少女のようだった。命がけで戦場を駆け回っているジャーナリストとは別の、素顔があった。

                         

 その山本美香さんが、シリアの内戦に巻き込まれ、命を失ってしまった。昨年秋、9・11テロから10年の機会に合わせて「9・11後に起きたこと」というタイトルで原稿執筆をお願いした時、快く引き受けてくれた。

                         

 「子どもたちに伝えたいこと、たくさんあるんです。今からアフガンに行きますから、最新の状況をお伝えしますね」

                         

◇子どもや老人ら庶民に視線向け

                         

 その後に送られてきた原稿は、いわゆるアメリカが「テロとの戦い」の名目で始めたアフガンとイラクの戦場に通った彼女が、自分の目で見、直接、話を聞いてきたことばかりだった。

                         

 「この10年で一番の変化は、子どもたちが元気に通学する姿を町のあちこちで見かけるようになったことです。もう一つの大きな変化は、停電はあるものの、発電機で補えば、24時間、電気がある生活ができるようになったことです」

                         

 「取材をしていると、女子学生たちが自宅で秘密の勉強会を開いていることを知りました。もし、勉強会の存在が知られれば、厳しい罰を受けるでしょう。見つからないように集まる場所を変えながら、英語や法律の勉強を続けていました」(いずれもアフガンで)

                         

 戦場ジャーナリストと呼ばれる彼女だが、その視線が、子どもや老人といった庶民に近いところにあったこ とが分かるだろう。私たち大手といわれるメディアの活動は政治家や外交官、軍人の取材が中心で、大所高所からの論説や解説に陥りがちだ。しかし、彼女の視 線の先には常に、普通の生活を送る庶民がいた。今回のシリア・アレッポで彼女が撮った最後の映像にも、戦場となった町で暮らす父子の姿が映っていた。

                         

 「なぜ、罪もない人たちが戦争にまきこまれて不幸にならなければならないのか。許せないんですよね」。これが、彼女の原点だった。

                    

 私が山本さんと直接会ったのは昨年の夏。決して長い付き合いではない。しかし、話をしていくうちに彼女 がその後、ジャーナリストとしての人生を歩み続けるきっかけとなったのが、雲仙普賢岳火砕流事故(91年)の取材であり、多くの犠牲者が出たことへの無 念からだったと知った。この火砕流事故では私も直前まで一緒に仕事をしていた同僚のカメラマンと運転手を失った。テレビの速報で知人の名前がカタカナで流 れたショックは、今も忘れない(そして2度目が山本さんとなった)。

                         

 99年から数年は、2人ともほぼ同時期にコソボパレスチナの紛争地帯にいたことも分かり、戦場取材の 苦労話で盛り上がった。ヘルメットをかぶり、防弾チョッキを着て砂ぼこりの町を歩くことの怖さと無謀さ。その半面、少しでも早く現場に入りたい、映像をカ メラに収めたい、という気持ちが湧きあがるのを抑えきれない自分。「もしかしたら、ここで死んでしまうかも」という予測と、小さな覚悟は、戦場や紛争地帯 を取材したことがある記者なら、誰もが持つことだろう。

                         

 ◇大手にできない報道に使命感

                         

 だが、新聞社やテレビ局などの組織に所属してこなかった山本さんは「現場を見てみたい、声なき人々の訴 えを、意味のない争いを少しでも早く終わらせるために世界へ伝えたい」という、独自の報道への使命感に燃えていた。そこには、大手メディアが伝え切れてい ない現場の思いを世界に知らせたいという、一貫した気持ちがあったように思う。

                         

 「戦場にいると、ふと平和な日本のことを考えるんですよ。日本では何不自由なく暮らせている同じ年ごろの子どもたちが、ここでは命がけで家族のために戦っている。なぜ、この子たちが、こんな悲惨な状況に巻き込まれなければいけないのって」

                         

 一緒に飲んだ時も、熱く、こう話していた。

                         

 小学生新聞に頂いた連載の最後はこう締められている。

                         

 「私が出会った人たちが今よりも幸せになれるように、そして世の中がもっと平和になるように願いながら、戦地の取材を続けています」

                         

 その思い。しっかりと伝え続けていきたい。(学生新聞編集部)

    
    

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