「北の山・じろう」時事問題などの日記

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ウクライナ共和国チェルノブイル原子力発電所事故後の放射能対策 (09-03-02-06){高度情報科学技術研究機構}

★全文転載

 

 

一般財団法人高度情報科学技術研究機構

TOP>http://www.rist.or.jp/index.html

 


<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設による健康影響
<小項目> 放射線事故
<タイトル>
ウクライナ共和国チェルノブイル原子力発電所事故後の放射能対策 (09-03-02-06)


 

<概要>
 日本では、経口摂取についての注意の喚起と輸入食品の規制が実施された。サイトに近いソ連のウクライナ白ロシアでは屋内退避、安定ヨウ素剤の配布と投与、汚染地域外への退去、移住、住民の健康状態についての医学的検査、食物流通過程の管理、農耕の禁止、農地の除染および放射能除去牛乳の出荷指導など農畜産業活動の規制、公共施設や道路の除染、環境放射能測定、放射線恐怖症への対策等が実施された。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.日本でとられた対策
 ウクライナ共和国(当時ソ連)チェルノブイル原子力発電所4号機事故(1986年)による放射能影響に関連してわが国で採られた対策は、放射性のプルー ム(雲)到着時期に葉菜の洗浄と飲料水用の天水を漏過して使用することについての注意の喚起であった。外国からの帰国者については放射能測定を含む健康診 断が実施された。また高濃度に放射性核種を含む食品の輸入制限値が、OECD 加盟国の欧州諸国や米国の放射能濃度基準に準じて、370Bq/kgに設定された。
2.旧ソ連邦でとられた諸対策
 事故サイトに至近であるソ連のウクライナ白ロシアでは放射能汚染の程度がきわめて大きく、一般公衆の放射線防護の観点から各種の対策が取られた。通過時に放射能雲から生ずる直達放射線による外部被曝および雲からの放射性降下物による吸入被曝や皮膚被曝を低減するために、先ず屋内退避が採用された。空間線量率が所定の設定レベルを超えることが予測された場合は、被曝線量の少ない経路により汚染の低い地域へ退去させた。
 放射性ヨウ素による甲状腺被曝を低減するためにこの時点では安定ヨウ素剤がすでに配布されていた。家畜も同様に移動させた。退去の対象地域は降下量密度に従って、1.48E12Bq/平方キロメートル以上(放射性セシウム137Cs の場合。他の核種については別の値が設けられている)の最大地域を含む3段階に分けられた。最大の降下量密度地域に帰村することは禁止されている。道路は 外部被曝線量を下げるために放射性核種を水洗で取り除くか、アスファルトで再舗装した。建築物は、公共施設を中心に水洗やプラステイック性塗料による塗装 が繰り返し行われた。
 内部被曝低減対策は、食物の生産および流通過程における対策と人体からの除染あるいは摂取時の対策に大別される。作物の生産に関しては、汚染の高い農場 では作付が禁止された。その他の農地では表土を取り除き、客土をしたりあるいは対象とする核種が放射性セシウムであるため石灰その他の無機肥料や粘土懸濁 物、ゼオライトなどの吸着剤を加えて土壌改良をした後鋤返したりして、土壌から農作物への放射性セシウムの移行低減策が採られた。場合により、作付する穀 物の種類を変えた。
 家畜については放射能のモニタリングを 実施して、放牧の制限や禁止、あるいは放射能濃度の低い牧草や水を与えたり、汚染の程度の低い牧場に移動させたりした。放射能濃度の大きい牛乳が生産され た場合は、廃棄、放射能の減衰を待って食用に供する食品に加工、あるいは放射性セシウムの場合はフェロシアン化鉄フィルターで放射能を取り除く処置のいず れかの対策が採られた。放射能濃度が高い穀物については、翌年の種籾として使用したり、直接の食用以外の用途に向けたり貯蔵法並びに加工法を変えて利用し た。また河川の氾濫による耕地や牧場の汚染拡大を防ぐ対策として、築堤による治水が図られた。
 食物摂取に係わる食品流通過程での放射線防護の対策として、設定された放射能濃度を超える食品の市場出荷停止および汚染の程度が小さい食品を輸入や移入をして積極的に流通経路に乗せる等が実施された。
 体内に取り込んだ放射性セシウムはフェロシアン化鉄の経口摂取により除去することができる。このため、実験的にその有効性の確認が行われた。
 健康影響上の対策として、高汚染地域からの退去者については避難先で、その後の加療の必要性の判定のために医学的検査と放射能の検査が行われ、必要に応じて入院させて精密検査を実施した。この目的で多岐にわたる種類の測定器が体内放射能の測定に使用された為、測定値の整合性および算定される内部被曝線量の信頼性に関する検討が進められた。
 事故に伴って生じている健康不安に応える対策として、比較的、降下量密度の大きかった地域の住民については、体内放射能の測定、空間線量および野生植 物、土壌などの環境試料の測定等が現在も行われている。放射線恐怖症を含む一般住民への対策として、事故後に開設された医療施設の精神科並びに心理療法科 を拡充するとともに、事故関連で明らかにされた科学的事実についての公開報告会が随時開催されている。
3. 内部被曝、外部被曝による線量低減対策の効果
 上に述べられた種々の放射線被曝防護対策により、事故初期のヨウ素による内部被曝線量、放射性雲からの外部被曝線量の低減および事故後の長期にわたる地表面汚染による外部被曝線量、食物経由による内部被曝線量の低減に大きな効果が認められている。半減期が長く長期の影響がある放射性セシウム、放射性ストロンチウムについては栽培作物の選択、鋤返し法の改良、酸性土壌の中和処理、施肥対策、病害虫・除草対策、水管理法等がこれまでの研究、経験から農地に蓄積した放射性物質の 農畜産物への移行を減らすために非常に有効であることが判明している。放射性セシウムについては対策によって農産物への移行は平均して1/4に減ってい る。ベラルーシ共和国の例では、旧ソ連邦諸国が定める放射性セシウムの許容濃度レベル以上に汚染したミルクが1986年に約52万トン(全産出量の約 14%)であったものが、1991年には2.2万トンに、同じく許容レベル以上に放射性セシウムに汚染した肉が1986年に2.2万トンであったものが、 1993年から1994年では数トンに激減している。
<関連タイトル>
緊急被ばく医療 (09-03-03-03)
安定ヨウ素剤投与 (09-03-03-05)
飲食物摂取制限 (09-03-03-06)

<参考文献>
(1)IAEA-TECDOC-516, Medical Aspects of the Chernobyl Accident, 1988.
(2)The Radiological Impact of the Chernobyl Accident in OECD Countries,NEA/OECD 1987.
(3)UNSCEAR Report, Annex D, 1988.
(4)Editted by E.F.Konoplya and I.V.Rolevich : National Report THE CHERNOBYL CATASTROPHE CONSEQUENCES IN THE REPUBLIC OF BELARUS, Ministry for Emergencies and Population Protection from the Chernobyl NPP Catastrophe Consequences, and Academy Sciences of Belarus 1996.

 

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