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はだしのゲン 彼に平和を教わった【社説】
2013年8月21日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013082102000169.html
▼全文転載
原爆の焦土をたくましく生き抜く少年を描いた漫画「はだしのゲン」。世界中の子どもたちが彼に平和を学んでいる。それを図書館で自由に読めないようにした大人。ちょっと情けなくないか。
書物を出すのに政府の許可が必要なイランでも、ことし五月にペルシャ語訳が出版された。
原爆を投下した米国でも、全米約三千の図書館に所蔵され、韓国では全十巻三万セットを売り上げるベストセラーになっている。
一九七三年に連載がスタートし、八五年に完結した。誕生から、ことし四十年になる。
なぜゲンが選ばれ、読み継がれているのだろうか。
単行本一巻目の表紙には、青麦を握り締めてほほ笑むゲンの横顔が描かれている。踏まれても踏まれても、たくましく穂を実らせる、青麦は成長のシンボルだ。
愛媛県の少女が地元紙に寄せた投書の一節だ。
松江市教委が問題視したような残虐とも思える描写も確かにある。しかし、子どもたちは、それも踏まえて物語を貫く平和への願いや希望を感じ取り、自分の頭で考えながら、ゲンと一緒にたくましく成長を遂げている。
表現の自由や図書館の自由宣言をわざわざ持ち出すまでもない。
大人たちがやるべきなのは、目隠しをすることではない。子どもたちに機会を与え、ともに考えたり、話し合ったりしながら、その成長を見守ることではないか。
昨年末に亡くなった中沢さんは「これからも読みつがれていって、何かを感じてほしい。それだけが、わたしの願いです」と、「わたしの遺書」の末尾に書いた。子どもたちよ、もっとゲンに触れ、そして自分で感じてほしい。
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