「北の山・じろう」時事問題などの日記

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3・11後のサイエンス:求むSPEEDI対決=青野由利 (2012年03月27日)<毎日新聞>

毎日新聞
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3・11後のサイエンス:求むSPEEDI対決=青野由利 (2012年03月27日)
毎日新聞 2012年03月27日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/news/20120327ddm016070003000c.html

▼全文転載

 

 昨年3月、放射能拡散予測の専門家が内閣府原子力安全委員会に呼び込まれたのは16日以降のことだ。まず、日本原子力研究開発機構の茅野政道さんが、数日後に名古屋大の山澤弘実さんが加わった。

 2人は今やすっかり有名になった「SPEEDI」(緊急時迅速放射能影響予測システム)と実際の測定値 を使い、原子炉から放出された放射性物質の量を推定した。当時の茅野さんの回想が興味深い。「さまざまな省庁や機関が行った測定値がウェブ上に散らばって いて、探すのに苦労した」

 事故当初、放射能拡散予測の専門家がいなかったばかりか、全体の実測値さえ把握されていなかったことになる。いまさらながら驚くが、驚くような状況は今も続いている。

 SPEEDIは本来なら住民避難に役立つはずなのか、もともと役に立たないものなのか。見方が真っ二つに分かれたまま、防災指針の改定が進められていることだ。

 SPEEDIの失策については政府自身や第三者機関の調査委員会が「検証」を行ってきた。これらの評価 は大筋で一致している。今回のような状況でも、うまく使えば適切な避難につながったはず。活用できなかったのは当事者に発想がなかったり、データが公表さ れなかったため、というものだ。

 そこに登場したのが安全委のSPEEDI無用論である。班目(まだらめ)春樹委員長が2月の国会事故調 で「計算に1時間かかる。風も変わる。SPEEDIが生きていたらうまく避難できていたというのは誤解だ」と述べている。防災指針を見直す作業部会の主査 も、SPEEDIが利用できるというのは「幻想」と一刀両断だ。

 どちらの言い分が正しいのか。本来なら、原子力だけでなく気象や海洋、環境科学の分野からも専門家を集め、賛否両論を検証した上で政策に反映されるはずの課題だ。ところが、そんな形跡がないまま安全委は先週、「SPEEDIなし」の防災指針をまとめている。

 

 一方で、原発周辺の自治体はSPEEDIを訓練に組み込み、端末を引いたり予算をつけたりしている。なぜこんな食い違いが起きるのか。

 一つの要因は事故検証の踏み込み不足にありそうだ。「SPEEDIによって、いつ、どこで、どのような情報が得られ、どう対応できたはずか。具体的な検証が必要なのに、データの公表問題ばかりに目が行っている」と山澤さんはいう。

 さらに問題なのは、科学者が政策決定に関わった途端、科学とは別の論理が働いてしまうことではないだろ うか。班目発言も学会だったら言いっぱなしでは済まない。「計算に1時間もかからない」「3月15日未明の24時間予報では実態に合う北西方向の汚染が算 出されている」といった反論があるはずだ。

 実は、擁護派もSPEEDIに全面的に頼ろうと考えているわけではない。限界や特性を知った上で、専門 家が実測値などと併せて使うという考えだ。それでも、放射性物質の流れる方向に避難することは避けられなかったのか。福島県飯舘村の人々にもっと早く避難 してもらうことはできなかったのか。知りたいのは、そうした具体論だ。

 やりきれない事実だが、原発事故が拡散予測の「実地検証」を初めて可能にした。それをうやむやのままに終わらせないためにも、専門分野の人々を広く集めた「SPEEDI対決」で決着をつけてほしい。(論説委員)

 

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