「北の山・じろう」時事問題などの日記

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3・11後のサイエンス:ご冗談でしょう、野田さん=青野由利(2012年06月26日)<毎日新聞>

毎日新聞
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3・11後のサイエンス:ご冗談でしょう、野田さん=青野由利
毎日新聞 2012年06月26日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/news/20120626ddm016070143000c.html

▼全文転載

 

 あのファインマンさんがこの状況を見たらなんと言うだろう。発生から1年以上たつのに核心がみえてこな い原発事故の検証作業。にもかかわらず、「安全は確認したので再稼働を」と言ってのける日本のトップ。今ごろ明るみに出る放射能測定のデータ隠し。それこ そ「ご冗談でしょう」と言いたくなる。

 リチャード・ファインマンは、ご存じの通り、量子電磁力学でノーベル賞を受賞した米国の物理学者だ。軽妙なエッセー集「ご冗談でしょう、ファインマンさん」でファンになった人は多いに違いない。

 そのファインマンが亡くなる2年前に務めたのがスペースシャトル「チャレンジャー事故」の調査委員会委員である。86年1月の事故直後、大統領の諮問を受け、宇宙飛行士や空軍大将らと共に真相究明に取り組んだ。

 顛末(てんまつ)は「困ります、ファインマンさん」(岩波現代文庫)に詳しいが、彼がやったことを一言 で言えば、周りの空気を読まず、知りたいことを徹底的に追求したことだ。勝手に技術者に話を聞きに行き、自分で実験もした。その結果、「Oリング」と呼ば れる補助ロケットの部品の欠陥が原因だったことがわかった。事故の背景に米航空宇宙局(NASA)の組織文化があったことも突き止め、抵抗にあいつつも、 報告の「付録」として公表している。

 原発とシャトルでは話が違うという意見もあるだろう。しかし、両者はいずれも国策として進められてきた巨大なシステムだ。ファインマンの報告を見ると驚くほど共通項がある。

 たとえばシャトルでは技術者が事故確率を「100回に1回程度」と見積もっていたのに、NASAの幹部は「10万回に1回」と言い張った。

 原発でも政府の会議で推進派の委員が「福島のような過酷事故が起きる確率は10万年に1回」と主張し、論争になった。国際原子力機関の安全目標となっている数値だが、事故を経験した後では、耳を疑う。

 

 本質的にリスクを抱えたシステムを安全であるかのように喧伝(けんでん)した点も、技術者が指摘していた危険性に幹部が耳を傾けなかった点も、原発と似ている。それまでも問題が起きていたのに大事に至らなかった運の良さを、安全と解釈したところも共通項といえるだろう。

 扱う対象は似ているが、検証体制はどうだろう。ファインマンは事故調に加わると決めるや、ほかの仕事をすべてキャンセルし、持てる時間を100%注いだ。日本の国会事故調や政府事故調の事務局に聞いてみたが、そこまで委員が打ち込める体制があるとは思えない。

 さらに、注意しなくてはならないのは、たとえ検証が終わっても事故リスクはなくならない点だ。野田佳彦 首相は「対策はとったので、福島のような事故は防止できる」と言って再稼働を求めたが、これは「Oリングを改良したので、シャトルはもう安全」と言ってい るに等しい。それが誤りであることは歴史が証明している。

 チャレンジャー事故から17年後、スペースシャトル「コロンビア」が地球帰還の際に爆発した。事故原因は、もちろん、Oリングではない。ファインマンの徹底した調査をもってしても別の要因で起きる次の事故は防げなかった。原発も同じかもしれない。(専門編集委員)

 

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