「北の山・じろう」時事問題などの日記

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放射性セシウムと心臓  第4章 放射性セシウムの心臓への影響の病理生理学的特徴< ユーリー・バンダジェフスキー著(1)

★全文転載。一つに入りきらないので二つに分けました。その1

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2013年2月10日日曜日
放射性セシウムと心臓  第4章 放射性セシウムの心臓への影響の病理生理学的特徴
ユーリー・バンダジェフスキー著
平沼百合 和訳
http://fukushimavoice.blogspot.de/2013/02/test.html?spref=tw




 次 に挙げるデータを分析することで、この放射性物質の心血管系に対しての悪影響を評価する事ができる。このデータとは、さまざまな体内の放射性セシウムの取 り込みレベルを持つさまざまな年齢の子供たちのECG (心電図)検査であり、チェルノブイリ事故で汚染された区域の住民の臓器の顕微鏡的研究であり、そして最後に、動物を使った研究実験である。この影響は、 放射性セシウムの細胞構造に対しての直接的影響だけでなく、体内のシステムを介した間接的影響、特に神経系と内分泌系を通しての間接的影響として現れる。

 放射性セシウムの心臓への直接的影響というのは、他の臓器や組織に比べて、心筋細胞に蓄積しやすい事による(図9&10)。多分それは、Na+/K+ポンプの機能が強いためである。すなわち、Cs-137 はカリウムに似ているので、心筋細胞によってかなり簡単に吸収されるのである。このプロセスには、細胞膜の構造が関連しており、放射性セシウムは、その構造と容易に反応する。15  これは、クレアチンホスホキナーゼのような大変重要な酵素の抑制をきたす。クレアチンホスホキナーゼは高エネルギーリン酸の貯蔵、運送と利用を含む細胞の エネルギー代謝に関連している。クレアチンホスホキナーゼは、リン酸基置換を触媒する酵素であり、ATPとクレアチンから、クレアチンリン酸とADPに変 換する。1
https://lh6.googleusercontent.com/qBZ4oL-Jhmbu8fGpO0LKsLyRUOfMjGZgi204SBUXYq53hhUTuoRnWHjvY37pJGQk0JMi_2CFu_PjGtNz4UQjnqA7w9xhPp5vclG8UtU05ZW_e0H-eRwvs8TV
図9 実験用動物の臓器と全身におけるCs-137の蓄積 1−心臓、2−肝臓、3−脾臓、4−腎臓、5−全身

https://lh4.googleusercontent.com/nYiyW_d7MWYTiHsVc3c4R8kg72o3-dGTzA-rIXUC8zgkvi8t51gpJjebP78hNQk197naoL81Z90_XrGxxhOg9AiA0MLOGZFiGe1nOfFHEzkdDaDuZ5DL5gA7
図10 一日につき180 Bq摂取したアルビノラットの内臓内のCs-137の蓄積
1−全身、2−肝臓、3−腎臓、4−心筋、5−脾臓、6−骨格筋、7−睾丸、8−肺

 クレアチンホスホキナーゼは、細胞質、ミトコンドリア、ミクロゾーム、細胞核、筋小胞体膜や筋原線維と言った、様々な細胞内構造に分布している。現在の概念によると、ミトコンドリアのクレアチンホスホキナーゼは、酸化的リン酸化によってミトコンドリアのマトリックス内で産生されるATPからの、クレアチンリン酸の生成を触媒する。このクレアチンリン酸は、濃度勾配に沿って細胞質内に移動するか、急速な浸透によって特定のクレアチンホスホキナーゼのアイソザイムに到達し、特に次のような構造と関係を結ぶ。

筋肉収縮に関与する構造である、筋原線維のM 線
筋小胞体膜のCa2+ATPアーゼ
筋形質とNa+/K+ATPアーゼ
アセチルコリン受容体とATPアーゼが豊富な シナプス後膜


 ミトコンドリア型クレアチンホスホキナーゼは、ミトコンドリアの外膜と内膜を結合させ、その構造を作る。1 
 クレアチンホスホキナーゼがM線に局在化する事により、ATPが継続して再生できる状況を作り、筋原線維の適切な収縮作用を確実にする(図11)。結果的に産生されるクレアチンは、再度リン酸化における基質となるために、ミトコンドリアに戻る。
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図11 心筋の介在板の構成(模式図)
1−心筋細胞の基底膜、2−心筋細胞膜、3−ミトコンドリア、4−筋原線維、5−筋形質、6−細胞質ネットワーク、7−細いフィラメント(アクチン)、8−太いフィラメント(ミオシン)、9−介在板、10−明帯(I帯)、11−暗帯(A帯)、12−Z線、13−M線、14−デスモゾーム(接着斑)、15−ネクサス(ギャップ結合)、16−接着野。(Bargmann & Schulceより修正)

 故に、酵素活性の減少は、心筋細胞のエネルギー複合体における重篤な構造的および代謝的欠陥を示す。これはミトコンドリアの数とサイズの増加、板状クリステの数の増加とその後の破壊として、ミトコンドリアシステムにおける変化として見られる。また、ミトコンドリアの凝集とミトコンドリア間の接触の数の変化としても見られる(図12)。
https://lh6.googleusercontent.com/JceYPC7bpjr5OlTIcPNmXQbTbLrU0oZXY9OR4PzbCndX4VZY9eMKawgf8nw508R5168HwYK69OC-Cbs5L-dNXjW35MsAHWGBEpx6yDvhLcUxXn6CZH7LTX8_
図12 放射性セシウムを45 Bq/kg取り込んだラットの、心筋細胞のミトコンドリアの凝集、数の増加とサイズの増加 (倍率x30,000)

 エネルギー複合体の抑制は、放射性セシウムによる細胞膜の構造への直接的な影響と、いくつかの代謝産物、特にミトコンドリアシステムに有毒効果のある甲状腺ホルモンの影響に関連している可能性がある。13 この点については、グレーヴス病(バセドウ病)や実験的に誘発された甲状腺機能促進症では、クレアチンホスホキナーゼの活性が抑制されることがわかっている。1  放射性セシウムの影響下において、遊離サイロキシン(FT4)の増加がこれらの酵素を抑制する事によって、心筋細胞を損傷する可能性がある。この仮説は、 放射性セシウムの取り込みが37 Bq/kg以上である子供達において、血液内の遊離サイロキシンの数値に平行して心電図(ECG)の異常が増加する事によって証明される(図13)。よっ て、不整脈の発症にはサイロキシンが関与している可能性がある。
https://lh3.googleusercontent.com/TBu_6bn7-F_m-FKZoZdZQg-qQZjk9G18dLFKXXISEZTlT11nPJEpvRFRudUUwzeLQFDXl816i_GyA915aLqJvhzWI_t4rMeFReZQhoGB1uiXzzUM6mifzz-s
図13 子供達の血清中のサイロキシン(T4)のレベルとCs-137取り込み量の相関(グループ1と3の間でP<0.001)

男性では、クレアチンホスホキナーゼの活性は女性よりも大きい。1 放射性セシウムの影響下において、心筋細胞でのこの酵素の脆弱性が男性における突然死の主因である可能性を無視できない。8,29,41
 心筋構造におけるアルカリホスファターゼ活性の減少は、心筋変性の進行を意味している。それは電離性放射能への被ばくの特徴である。36 
 放射性セシウムを投与した実験動物や、放射性セシウムで汚染された地域に住む人達の心筋細胞における構造的変化の特質は、筋小胞体膜の、Ca2+に対する浸透性低下として現れる。これはこの放射性核種の細胞膜に対する直接的影響と同時に、この放射性核種の自然崩壊において放出される放射線のせいでもある。8,29,41 結果として起こるリン脂質の脂肪酸鎖の過酸化は、細胞膜の構造の変化と、Ca2+を含む様々なイオンへの浸透性の変化に繋がる。同時に、当然ながら細胞膜内にある酵素活性にも変化を与える。フリーラジカルの過剰な生成と脂質過酸化の増加は、細胞膜の破壊に貢献する。

 心筋の筋小胞体のCa2+輸送システムは、Ca2+を放出したり蓄積する事によって、筋原線維の収縮・弛緩プロセスに活発に関与している。そのシステムが、放射性セシウムを含む様々な因子による損傷を受けると、心筋細胞内遊離Ca2+のレベルが上昇し、筋原線維の弛緩が妨げられる。

 筋組織の変化は、筋原線維の複屈折性の変化として観察される。すなわち、区域的および亜区域的収縮、心筋細胞内の筋融解、筋原線維の原発クラスター変性(注: ロシア圏独特の表現であり、英語圏での「Contraction band necrosis」、日本語で収縮帯壊死に該当すると思われる。)、細胞変性、そして最終的には凝固壊死または融解壊死に至る。32 偏光顕微鏡で観察すると、筋原線維の区域的および亜区域的な収縮変化は、A帯の増強として現れる。これはあたかも横紋筋原線維の横断面のなかに光る筋が入ったように見える。光学顕微鏡で観察すると、これらは密度増強と好酸球増多として観察される。放射性セシウムを10日間取り込んだビスター・ラット(セシウム濃度60−100 Bq/kg)にも同様の変化が見られた(図14)。
https://lh6.googleusercontent.com/-JH9ZLez7EfO3XtE_GMYrspZDLqBjfWzN12fP32OLN_rBkC9Gg5OcZhrs8vywRSMqAQhU3MsNfwLiPHtiRpnJ7kND1aET7rPlJPRFWAgahfFByeFcOwxfr1f
図14 食物によって放射性セシウムを取り込んだ動物(体内濃度100 Bq/kg) の心筋の病理組織切片。心筋細胞の筋原線維のびまん性区域的収縮。びまん性筋細胞融解。リンパ組織球の局部的浸潤。ヘマトキシリン−エオジン染色。(倍率x125)

 

ダウンロードPDF 
https://docs.google.com/file/d/0B68f83tqq7QuV3ZFaUxHQWcxNlU/edit?usp=sharing

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