「北の山・じろう」時事問題などの日記

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この国と原発:第4部・抜け出せない構図 矛盾、福島事故で一気に噴出=北村俊郎・日本原子力産業協会

毎日新聞
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この国と原発:第4部・抜け出せない構図 矛盾、福島事故で一気に噴出=北村俊郎・日本原子力産業協会参事
毎日新聞 2012年01月22日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20120122ddm010040061000c.html
▼全文転載

(1)
 ◇閉鎖性と形式主義、背景に

 海底のプレート(岩板)に長期間蓄えられたストレスが一気に解放されて大地震が起きたのと同じように、国の原子力政策と産官学の間にたまり続けてきた矛盾が一気に噴出したのが、東京電力福島第1原発事故だと思わざるを得ない。

 国も電力会社も、大事故の確率は極めて小さいという単純な理由で「原発は安全だ」と言い続け、事故時の対策を十分には考えなかった。東電は研究者から津波の危険性を警告されても、いつ起きてもおかしくないとは思わず、勝手に大丈夫だと判断していた。

 背景には国や電力会社の体質がある。一つは閉鎖性。東大で原子力を専攻した卒業生は、大学に残って研究 者となるか、監督官庁や国の研究機関に進むか、電力会社やプラントメーカーに幹部候補生として採用され、卒業後も指導教授を中心に産官学を超えて同窓の関 係を続ける。他大学でも同様の構図があり、この人たちが「原子力ムラ」の上層部を占めている。

 原子力の世界の特徴は「夢のエネルギーを実現したい」というロマンを原動力としていることで、それが「唯我独尊」「失敗を認めたくない」という思考につながる。外部の批判は無視し、内部の異論は封じ込めるようになったのはこのためだ。

(2)

 近年は形式主義も横行するようになった。敦賀発電所に勤務時、国の定期検査では会議室の机の端から端までファイルが並ぶほどだった。通産省(当 時)の検査官はひたすらチェックしていく。書類作成に子会社や下請けの社員も動員するため、現場が手薄になるという本末転倒の事態が起きた。

 役所が完璧な書類を欲しがるのは、「見ましたよ」というアリバイ作りの面が大きい。電力会社はこうした役所文化の影響を強く受けている。管理の得意な官僚的人材ばかりが出世するようになり、トップと現場がほとんど断絶してしまった。

 米国の原発を調査しに行って感心したのは、発電所幹部が作業員に直接指示していたことだ。幹部といえども、プロの技術者なのだ。

 日本で原発の現場を本当に分かっているのはメーカーだ。電力会社はメーカーに依存しており、価格交渉の しようもない。メーカーにとってこんなありがたい客はいない。こうして電力会社とメーカーの原子力部門も一種の共同体となった。その下に多くの下請けが連 なる多層構造も日本の原発の特徴だ。利益を皆で分け合う文化が背景にあるのだろうが、無用のコストや非効率の温床だ。発注者は面倒な労務管理から解放され るが、この構造もトップと現場を乖離(かいり)させている。

(3)

 電力会社の労働組合も、共同体的な体質作りに一役買っている。終戦直後に結成された戦闘的な日本電気産業労働組合(電産)に懲りた電力会社が、労 使協調的な第2組合を育てる努力をしたことが影響している。組合員の待遇を守るために、(さまざまなコストを電気料金に上乗せできる)総括原価方式など現 行の枠組みの堅持が必要という点で労組と会社の利害が一致し、原子力推進に関しても会社と同一歩調をとり続け、チェック機能を果たせなかった。

 メディアも国や電力会社のやることを無批判に報じるか、逆に推進・反対両派の対立を際立たせる傾向が強く、自らの責任で冷静にリスクを分析するという姿勢に欠けた。

 国土が狭く地震が多い日本では、さらなる原発立地は難しく、原子力防災も困難だ。また、少子高齢化が進 み電力需要の伸びない成熟国家となった今、原発はメリットよりデメリットの方が大きいというのが被災者となった私の結論だ。当面は今ある原発の安全性を ハード・ソフト両面で高め、先送りしてきた使用済み核燃料の処理問題に優先的に取り組む必要がある。幸い、日本には高い工業力があり、環境意識の高い国民 がいる。原発依存度を減らせるモデルを作り上げ、先進国はもとより新興国や途上国にも示すべきだろう。

(4)

 福島第1原発事故は地域社会を根こそぎ破壊した。原子力開発の必要性があろうとも、周辺住民をこんな目に遭わせてはいけない。以上は私個人の意見 であり、日本原子力産業協会の見解ではない。原子力の世界に生きてきた者として、自戒を込めて異論を唱え続けることが大事だと思っている。

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 ■人物略歴

 ◇きたむら・としろう

 1944年生まれ。慶応大経済学部卒。67年日本原子力発電入社。東海、敦賀両発電所勤務、理事社長室 長などを経て05年から業界団体・日本原子力産業協会参事。人材育成、安全管理畑が長く、福島第1原発事故前から原発推進体制の問題点を業界誌などで指摘 してきた。99年に福島県富岡町に移住。事故で避難を強いられ、現在は同県須賀川市の借り上げ住宅で避難生活を送っている。著書に「原発推進者の無念」 (平凡社新書)。

(毎日新聞・連載特集)
この国と原発 アーカイブ(2012年)
http://mainichi.jp/feature/20110311/konokunitogenpatsu/archive/news/2012/index.html

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