「北の山・じろう」時事問題などの日記

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東日本大震災2年:除染の現状と課題/福島第1原発の今(その1)<毎日新聞>

毎日新聞
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東日本大震災2年:除染の現状と課題/福島第1原発の今(その1)
毎日新聞 2013年03月04日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/news/20130304ddm010040013000c.html
▼全文転載

(1)

 東京電力福島第1原発事故が発生して、まもなく2年を迎える。原子炉建屋の修復などの収束作業が進む が、今なお放射線量は高く、30〜40年を要する廃炉作業は緒に就いたばかりだ。放射性汚染水は増加の一途をたどり、保管場所は逼迫(ひっぱく)する。一 方、周辺の自治体では、住民の帰還に向けて原発から放出された放射性物質を取り除く除染が進むが、汚染土壌などを運び込む中間貯蔵施設の立地場所の選定は はかどらない。現状と課題を探った。

 ■除染の現状と課題

 除染作業、大幅遅れ

 ◇2町は計画未策定、賠償巡り協議難航

 「町に戻って早く生活を立て直すために、除染は必要不可欠だ。町への帰還が遅くなればなるだけ若い世帯 が町を離れてしまう。この5年間で除染が進めば町に戻れる」。福島県富岡町からいわき市に避難し、借り上げ住宅で妻(53)と暮らす会社員の男性(57) は、除染に期待を込める。

 特に汚染が著しい「旧警戒区域」と「旧計画的避難区域」(福島県内の11市町村)については国が直轄で除染する。ところが、半数以上の市町村で進捗(しんちょく)が遅れている。

 環境省が12年1月に示した除染の工程表では、同3月までに各自治体が除染実施計画を策定▽同7月に本格的な除染に着手▽14年3月末に完了−−する計画だった。

 除染活動の拠点となる役場や公民館、学校、警察署や消防署、除染実施地域へのアクセス道路や上下水道施 設などのインフラ施設については、先行的に除染を開始。先行除染田村市、楢葉、川俣町、川内、飯舘村の5市町村で終了。南相馬市、浪江、大熊、富岡町、 葛尾村の5市町村でも作業が続いている。しかし、住宅や農地などの本格的な除染に関しては、工程表通りの12年7月に作業が始まったのは田村市のみ。現在 でも楢葉町、川内、飯舘村を加えた計4市町村が取り組んでいるだけだ。

 川俣町と葛尾村は作業の準備中。南相馬市と浪江、大熊町は計画の策定は済んだが作業開始時期は決まっていない。一方、富岡、双葉の2町は計画さえ未策定だ。

(2)

 計画策定が遅れた背景には、避難区域再編が進まなかったことがある。除染計画は、再編後の区域に合わせ て策定されるためだ。政府は11年12月、避難区域を放射線量に応じて三つの区域に再編することを決めた。区域ごとに帰還時期が異なり、不動産や精神的損 害の賠償額は帰還時期が遅れるほど高額になることから、市町村全体で一律の賠償を求める地元との協議がスムーズにいかなかった。

 スケジュールの遅れについて、環境省は「14年3月までという除染完了時期は遅らせない。作業員を増やすなどして加速化し、質は保証する」と話す。

 ◇費用巨額、効果未知数 森林からの再汚染も

 除染は超大型の公共事業だ。環境省は事業費として11〜13年度の3カ年で計1兆696億円の予算を計 上。これに将来的には少なくとも14年度以降の事業費や、除染で出た放射性物質を保管する中間貯蔵施設と最終処分場の整備費用が加わる。一方、多額の費用 をかけるにもかかわらず、効果については十分明らかになっておらず、本格的な検証が今後の課題となっている。

 環境省は昨年6月、福島県内の旧警戒区域など12市町村(計約2平方キロ)で実施した除染のモデル事業 の結果を公表。大熊町の宅地は毎時55マイクロシーベルトから15マイクロシーベルトに、南相馬市の農地は1・25マイクロシーベルトから0・83マイク ロシーベルトに下がり、一定の効果が示された。ただし、その後のより大規模な「除染特別地域」内の本格除染で、どれだけ下がっているのかは現段階で分かっ ていない。大部分は作業が完了していないだけでなく、既に完了した田村市の牧草地と川内村の廃校の2カ所についても「効果を確認中」(環境省)だ。

 また、福島県には今も住民から「除染直後に放射線量は下がったが、しばらくすると再び上がった」と心配 する声が寄せられているという。県の除染担当職員は、除染前後の計測手法が違う可能性もあるとしたうえで「除染していない森林から雨で流れ出る土砂に含ま れる放射性物質で、住宅地周辺が再汚染される可能性は否定できない」と話す。

(3)

 環境省の方針では、森林の除染は当面宅地など人が利用する場所から20メートルの範囲で実施し、その他 の場所については効果や技術を検証したうえで検討することにしている。再汚染を心配する住民の声を受け、福島県は昨年10月から3億2000万円の予算で 試験的に、田村、いわきの両市内3カ所(計0・67平方キロ)の森林で汚染された木を間引く除染を行い、効果を確かめる事業を始めた。

 今後、森林除染の範囲を広げるとすれば費用はさらに膨らむ恐れがある。除染実施計画を策定した9市町村で、除染を行う宅地周辺の森林面積は約65平方キロ。これに対し、森林全体では計610平方キロで10倍近い。

 埼玉県加須市内の借り上げ住宅で避難生活を送る双葉町の主婦(40)は「双葉町はそもそも(放射線量 が)高い。除染が進んだとしても戻りたいとは思えない」と帰還に消極的だ。震災当時、小学生だった長男(12)は同市の中学校に入学し、友達もできた。 「除染にお金がかかるなら、新しい土地で生活を始める資金として渡してほしいぐらいだ」と訴える。

 井上信治環境相は2月25日のテレビ番組で「除染はやればやるほど廃棄物が増え、お金も時間もかかる。最終的にどこまでやっていくのかという問題をこれから考えないといけない」と述べた。

 ◇線量低減目標、自然減に期待

 環境省除染による線量低減の目標として、避難指示解除準備区域は13年8月末までに、11年8月末と 比べて50%減、学校や公園など子どもの生活圏は60%減−−を掲げる。しかし、40%分は放射性物質が時間と共に自然に減少する「半減期」や風雨などで 拡散・希釈される効果に期待。除染で減らすのは10〜20%にとどまる。また、居住制限区域は、この線量の地域を「迅速に縮小を目指す」とし、具体的な数 値目標は示していない。

 現在の技術では、放射性物質の無毒化は困難で、洗浄や削り取りなどで取り除くしかない。放射性物質は土壌や家屋の表面などと電気的に安定した状態で結びつき、土壌内では粘土粒子に強く付着しているとされ、簡単にはがせない。

 ◇中間貯蔵施設、まだ調査段階

 福島県内の除染で発生した土壌や汚泥、落ち葉や枝などは、3年間をめどに「仮置き場」に保管される。「中間貯蔵施設」の完成した所から順次運び込んで貯蔵し、30年以内に県外で最終処分する。

(4)

 環境省の中間貯蔵施設建設の工程表によると、12年度中に用地選定を終え、13年度中に用地取得、15年1月に搬入を開始する計画だ。現状は、用地選定のための現地調査に着手する段階で、大幅に遅れている。

 国が、原発立地自治体の双葉、大熊、楢葉3町に中間貯蔵施設建設を提案したのは12年3月。候補地(当初12カ所)を示したのは12年8月のことだった。福島県や3町を含む双葉郡は、中間貯蔵施設がそのまま最終処分場になることへの懸念などから反発した。

 動きがあったのは12年11月。国の直轄地域外でも除染が進み、県内からも早期建設を望む声が上がるなどしているため、県と双葉郡8町村は「施設は必要」と判断。「建設の受け入れではない」との認識を強調した上で、調査の受け入れを決めた。

 施設の敷地面積は3〜5平方キロ、容量は東京ドームの12〜23倍に相当する1500万〜2800万立 方メートルに及ぶ。環境省は、土地の広さや幹線道路へのアクセス、地形などを考慮、福島第1原発周辺の双葉町2カ所、大熊町6カ所と第2原発南側の楢葉町 1カ所の計9カ所を調査候補地として選定した。水源や地質、地盤の固さ、動植物への影響などを5月までに調べる計画だ。現状では工程表と大きなずれが生じ ているが、環境省は「15年1月の搬入開始は守りたい」としている。

 ◇「指定廃棄物」11都県に

 福島第1原発事故で放出された放射性物質による汚染は広範囲にわたる。

 事故による追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)を超える地域は「汚染状況重点調査地域」に指定され、国が資金を出して自治体が除染を実施する。

 岩手3市町▽宮城9市町▽福島40市町村▽茨城20市町村▽栃木8市町▽群馬10市町村▽埼玉2市▽千葉9市−−の8県101市町村が指定を受け、除染作業が進んでいる。

 また、焼却灰などの放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超え、国が直接処理を行う「指定廃棄物」は、東北・関東地方を中心に11都県で計約9万9000トンが指定されている(12年12月28日現在)。指定廃棄物は発生都道府県内で処分する。

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 ■ことば

 ◇避難区域再編と除染

(5)

 国は放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、「旧警戒区域」と「旧計画的避難区域」にあたる11市町村 の一部を「除染特別地域」に指定、直轄で除染する。除染実施計画は、避難区域が線量の高さに応じて三つに再編されることに伴い策定される。段階的に避難指 示を解除する「避難指示解除準備区域」(年20ミリシーベルト以下)と「居住制限区域」(年20ミリシーベルト超〜50ミリシーベルト以下)は、12〜 13年度に除染。5年たっても線量が年20ミリシーベルトを下回らない「帰還困難区域」(年50ミリシーベルト超)は、「現在の技術では有効な手立てはな い」として、除染の効果を確かめるモデル事業だけを行う。

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 この特集は西川拓、中西拓司、藤野基文、比嘉洋、神保圭作が担当しました。(グラフィック 日比野英志、編集・レイアウト 谷多由)

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