北海道新聞
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東電「起訴相当」 納得いく再捜査を望む
社説(08/02)
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▼全文転載
巨大津波の可能性は社内で認識されていた。役員として適切な対策を取らせることができたのに、それをしなかった。だから刑事責任を問うべきだ―。市民11人による検察審査会の結論は明快だ。
検察は、不起訴処分に疑問が突き付けられた事態を重く受け止め再捜査に全力を挙げるべきだ。その手法や結論を含め、国民が納得できるものでなければならない。
東日本大震災に伴う福島の原発事故で業務上過失致死傷容疑などで告訴・告発された東京電力の勝俣恒久元会長ら元幹部3人について東京の検審は、「起訴相当」の議決をした。
検察が昨年秋に不起訴とし、被災者らでつくる「福島原発告訴団」が審査を申し立てていた。
検察が再び不起訴としても検審が起訴議決をすれば検察官役の指定弁護士が強制起訴する。
その場合も検察が集めた証拠がベースになる。未曽有の事故の真相解明がかかる。検察は「公益の代表者」の責務を果たすべきだ。
検察は東電本店などの家宅捜索をしなかった。捜査を尽くしたのかとの批判が出るのも当然だが、不起訴理由もまた不可解だった。
東電は政府機関の地震予測に基づき、巨大津波の可能性を把握していたが、検察は「具体的に予見できたとは言えない」とした。
地震予測をめぐる専門家の評価が分かれていたことなどをその根拠に挙げた。
これに対し、議決は「権威ある機関の科学的根拠に基づく予測で最新の知見として取り込むべきものだ」と疑問を投げかけた。
対策を取らなかった東電も厳しく指弾した。「原発の運転停止のリスクが生じると考え、(予測の)採用を見送り、関係者の根回しを進めたことがうかがわれる」
この通りなら安全軽視の姿勢に戦慄(せんりつ)を覚える。
国会事故調査委員会の報告書も事故は「人災」とした。検察の判断が社会常識から外れているのではないかとの印象は拭えない。
確かに刑事責任を問えるかどうかの判断は慎重に行うべきだ。
だが、電力会社の役員は原発の安全確保に極めて高度の注意義務を求められている。
あれだけの深刻な被害をもたらした事故だ。しかも回避できる余地はあった。なのに誰も刑事責任を問われないなら正義に反する。
この不公平感を放置すれば刑事司法に対する国民の信頼はますます揺らぐ。検察は再捜査結果の説明責任も忘れてはならない。
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