「北の山・じろう」時事問題などの日記

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埋蔵ポテンシャルは全国で2347万kW分! 貴重な純国産再生可能エネルギー「地熱発電」の振興に向けた課題とは<現代ビジネス>

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町田徹「ニュースの深層
埋蔵ポテンシャルは全国で2347万kW分! 貴重な純国産再生可能エネルギー「地熱発電」の振興に向けた課題とは
2012年11月06日(火) 町田 徹
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▼全文引用

(1)
柳津西山地熱発電所(写真URL)
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 紅葉の磐梯山が初冠雪を記録した11月2日、新潟との県境に程近い福島県会津地方にある柳津西山地熱発電所を視察した。

 言うまでもなく、地熱発電は、燃料を輸入しなくても必要な資源を国内で賄える再生可能エネルギーだ。加えて、再生可能エネルギーの中で、唯一、天候に左右されることなく一定量の電力を安定的に確保できる「ベースロード電源」として活用し易いという長所も備えている。

 柳津西山で目にしたのは、そうした地熱発電の優位性に胡坐をかくのではなくて、使用済みの熱水や噴出物を冷やして地中に戻して資源の減少を防ぐ仕組みや異臭を取り除く装置の設置といった環境への真摯な配慮だった。

 世論の期待の高まりにもかかわらず、なかなか盛り上がらない地熱発電の開発機運を刺激するには、もう一段の規制緩和による開発コストの削減や、万が一に備えた周辺の温泉業者などへの補償ルールの確立も必要かもしれない。

開発の期待が改めて高まる純国産エネルギー

 以前にも本コラムで紹介した(3月13日付『羊頭狗肉の規制緩和 地熱発電を阻む環境省のレンジャー魂』http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32033)が、簡単におさらいしておこう。

 地熱発電は地下から蒸気や熱水を汲みあげて、その圧力でタービンを回して発電をする仕組みだ。その最大の特色は、再生可能エネルギーの中で稼働率が最も高い点にある。

 現在運転中の設備の稼働率をみると、太陽光が12%、風力が20%に過ぎず、高価な蓄電設備を組み合わせないと、需要のピークにあわせた効率的な 電気の供給が難しいのに対して、地熱のそれは70%に達しており、原子力発電や火力発電に代わる得るベースロードの電源として将来が期待されている。

(2)

 特に日本は世界有数の火山国だけに、全国に埋蔵されている資源は豊富だ。資源エネルギー庁の調査によると、全国には2347万kW分の資源が埋蔵 されている。これは、単純計算で大型原子炉23.5基に匹敵する電源だというのだ。輸入に依存せざるを得ない石油、天然ガス、石炭といった化石燃料とは異 なり、貴重な純国産エネルギーとあって、開発への期待が改めて高まっているわけである。

 そうした中で今回、視察した柳津西山地熱発電所は、最大6万5000kWと発電所1機あたりの出力で日本一を誇る地熱発電所だ。大型ならば出力 100万kW級が珍しくない原子力発電所と比べると、規模では見劣りするものの、全国18ヵ所の地熱発電所の平均からみれば、その2.2倍の規模を誇る大 型の地熱発電所と言える。現在、常時2万5000kW前後の発電をしており、会津地方の7000世帯に電気を供給しているという。

過疎の町にとっても貴重な観光資源

 基本的な構造は、温泉水などが溜まる地層(200〜300m)よりはるかに深い1900m前後の地下にある熱水を汲みあげて、その際に発生する蒸気を分離し、タービンを回して発電するというものだ。

 一般的な地熱発電所(標高1000m前後の人里離れた高山に立地することが多い)と違い、柳津西山地熱発電所は標高400m弱の地点にあり、古くから開けた奥会津の秘湯「西山温泉」に近接している。最も近い民家との距離は直線で700m程度という。

 このため、周囲の自然・環境との調和や住民への配慮には細やかだ。景観に配慮して発電所の建物の外壁をレンガ風のタイル張りとしたり、資源の減少を避けるために汲み上げた熱水を冷やしたうえで、汲み上げた不純物もあわせて、元の地層に戻す井戸を設けたりしている。

 万が一、温泉の湯量が減少した場合に備えて温泉地域にバックアップ用の温泉水を採る井戸を寄付してあるほか、営業運転開始後に住民の指摘を受けて硫黄臭を除去する設備を後付けするなどの対策も講じてきたという。

 地域への貢献という点では、地熱発電所の敷地内にあるPR館の存在も見逃せない。このPR館には開設以来の累計で48万人の観光客が訪れているか らだ。震災や集中豪雨で寸断された道路をいち早く補修したことによって、今年度も10月末までの7ヵ月間ですでに1万人が来場しており、人口が4000人 弱と昭和30年の合併当時の半分以下になってしまった過疎の町・柳津町にとって貴重な観光資源となっている。

(3)
設備写真URL
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 ただ、残念なことに、発電コストについての詳細な開示はなく、「石油火力発電所よりは安いという程度です」(同発電所の千葉一教所長)と期待したほど低くもないようだった。

 燃料は現地で調達できるし、採掘コストを除けば、タダのはずの地下資源を使っている。加えて、東北電力は、昼間が2人体制、夜間・休日は現地無人体制(秋田火力発電所などから遠隔監視・運転)を始めとして徹底したコスト管理を講じているように見えた。

 それなのに、なぜ、もっと発電コストが下がらないのか。

 しつこく問い質したところ、燃料の採掘を担当している奥会津地熱の阿部泰行取締役西山事業所長がようやく重い口を開いて「当初の採掘調査費用の回収コストが大きい」と明かした。

 結局のところ、ひとつの地熱発電所を建設するには、鉱物資源を採掘するために鉱山を発見して開発するような手間とコストがかかるものというわけだ。

 この辺りに、各地で根強い地熱発電所の建設反対運動を繰り広げている温泉組合からの合意取り付けと並ぶ、大きな課題が隠されているようだ。

過去13年間、地熱発電所は1つも建設されていない

 その話に移る前に、大きなポテンシャルが早くから指摘されながら、なぜ、日本で本格的に地熱発電が開発されて来なかったのかという事情に触れておこう。

 前述のように、日本には、大型原子炉の23.5基分に相当する資源が埋蔵されているとされながら、実際の発電容量は合計で54万kWと大型原発1基にも届かない水準にとどまっている。

(3)

 その最大の原因は、潜在的な熱源の9割以上が、国立公園(全国29ヵ所)、国定公園(同同56)といった自然公園に集中していることにある。環境 省は長年、こうした地域での開発調査や発電所建設を厳しく規制してきたのだ。この点は、同じように多くの発電所が自然公園内に立地している原子力発電と決 定的に違っている。

 さらに言えば、環境省の自然環境局が温泉組合の開発反対運動を後押しして、建設規制に利用してきた側面も小さくない。

 これに対して、経済産業省や電力会社の"原子力ムラ"が、原子力発電を例外的に開発することにしかエネルギーを注がなかったため地熱発電の振興が進まなかったというのである

 実際のところ、富士箱根伊豆国立公園内の「普通地域」(5区分ある中で一番規制の緩い地域)にある八丈島発電所が2001年に運転を開始したのを最後に、国内では過去13年間にわたって新たな地熱発電所が1つも建設されていない。

政府の取り組み姿勢の抜本転換が欠かせない

 今年3月、筆者らが指摘したことを受けて、環境省は、こうした規制の一部を緩和したものの、依然として5つある自然公園の区分のうち上位の2区分 では開発調査や地熱発電所の建設は禁止されたままだ。そもそも、包括的な調査や開発に関する明文規定がなく、環境省が裁量行政の幅を利かせ易い個別認可制 度を温存させている問題もある。

 さらに、政府全体の取り組みを見ても、国家戦略会議が9月18日に決定した「革新的エネルギー環境戦略」において、2030年に発電電力量で 2010年の約8倍の1900億kWhを目指すとした再生可能エネルギーの中で、地熱発電が太陽光発電などと比べて軽視されている感も拭えない。

(5)

 というのは、7月からスタートした再生可能エネルギーの全量買い取り制度では、地熱の買取価格を27.30円/kW(買取区分1.5万kW以上) と太陽光の42.00円/kW(同10kW以上)に比べて低く抑えているうえ、買取期間も15年と太陽光の20年より短期間で終了する仕組みとなっている からだ。

 さらに言えば、地熱発電は、太陽光にはない環境アセスの義務付けを継続するなど、政府の太陽光偏重は明らかに異常だ。背景に、かつての原子力ムラのような声の大きい圧力団体の存在が影を落としている。

 米国の6分の1、フィリピンの4分の1と埋蔵資源量の割に遅れをとっている地熱発電の普及を後押しするには、さらに効率的な発電を可能とする技術の開発や温泉組合などとの包括的な合意形成ルールの整備と並んで、政府の取り組み姿勢の抜本転換も欠かせないはずである。


著者:町田 徹
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