焦点/民生委員、56人死亡・不明/危険顧みず高齢者らの避難優先<証言/焦点 3.11 大震災「河北新報・連載記事」
証言/焦点 3.11 大震災「河北新報・連載記事」から全文転載
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焦点/民生委員、56人死亡・不明/危険顧みず高齢者らの避難優先
2011年11月20日日曜日
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▼全文転載
図
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かつて近所に住んでいたお年寄りを訪ね、会話を交わす斉藤さん(右)=15日、気仙沼市
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東日本大震災で被災した東北3県で、亡くなったり行方不明になったりした民生委員が56人に上ることが、各県協議会のまとめで分かった。要援護者の安否確 認や避難誘導などに従事していて、津波に巻き込まれたケースが多い。1人暮らしの高齢者の見守りや被災者の生活相談など、震災後の民生委員の役割は増して いるが、被害の大きい地域では補充の見通しも立っていない。(上村千春、坂井直人)
◎被災3県、補充ままならず
各県の民生委員児童委員協議会がまとめた被害者は表の通り。津波で壊滅的な打撃を受けた陸前高田市は死者、行方不明者が計11人と最も多かった。目撃情報から、多くは活動中に命を失ったとみられる。
被害者への災害補償は、民生委員が1人当たり年間1900円を拠出し運営する互助共励事業から見舞金最大20万円が支払われる。ほかに義援金を元にした弔慰金があったが、もともと危険な業務を想定していないため、消防団員らに比べ額がはるかに少ない。
非常勤特別職でもある民生委員には公務災害補償も適用されるが、本来の業務ではない避難誘導などを公務と証明するのが難しいという。
民生委員の補充状況はまちまち。宮古市は地区が推薦し、死者・行方不明者の後任はほぼ確定した。一方、「地域に推薦を依頼しているが、住民が激減してしまった所もある」(釜石市)「町内会が解散した地区もあり、推薦がまだない」(石巻市)と苦慮する自治体もある。
委員2人が亡くなった南相馬市小高区は、福島第1原発事故の警戒区域に指定され住民が全国に避難したため、民生委員の活動自体が困難になっている。
全国民生委員児童委員連合会は2006年度から「災害時一人も見逃さない運動」として、災害福祉マップの作成のほか、民生委員が自らの身と家族を守ること を呼び掛けてきた。今回の震災では、委員の強い使命感が運動よりも優先し、結果的に死者・不明者を増やす結果になった。連合会は大規模災害時の対応を、さ らに検討するという。
岩手県立大の都築光一准教授(地域福祉論)は「災害後の役割が大きい民生委員は、自らを守ることを第一に考えてほしい。日ごろから避難訓練を住民の手で徹底し、要援護者は委員だけでなく、地域ぐるみで救助する仕組みをつくるべきだ」と強調する。
◎「揺れ収まると、飛び出していった」/使命と安全、両立が課題
東日本大震災で、多くの民生委員が高齢者らの安否確認や避難誘導のさなかに津波にのまれた。「災害弱者の命を守りたい」。強い使命感で活動する民生委員の安全を、どう確保するのか。未曽有の災害は難しい課題を突き付ける。
「責任感が強く、『とにかく行かねばならない』と思ったのだろう。火事だの何かあれば、すぐ出て行く人だった」
陸前高田市広田町大野地区の西村昭夫さん(83)が、亡くなった嫁で民生委員の文江さん(57)の心中を推し量る。高台の自宅は被害を免れた。
3月11日、文江さんは強い揺れが収まると、一緒にいた家族に告げる間も惜しんで、地区外れにある家を飛び出した。
海岸沿いに約70戸が集まる大野地区。複数の住民が、自宅から最も離れた所にある1人暮らしの女性宅や、寝たきりの女性宅に立ち寄る文江さんの姿を目撃した。高齢者宅を駆け回り、避難を呼び掛けていたとみられる。地震発生から約30分後、津波が集落を襲った。
保育士として働き、退職後も保育園から応援を頼まれるなど面倒見の良かった文江さん。地域住民らの求めに応じ2006年11月に民生委員に委嘱されると、 精力的に高齢者宅を見回った。独自にお茶飲み会を開き、手製の豚汁を振る舞うなど、お年寄りの交流の場づくりにも尽力した。
ある女性(75)は「何かあったらいつでも連絡してと言ってくれた。一生懸命世話してくださったのに、本当に残念で残念で」と、無念さをかみしめる。
「孫のことももう少し考えてほしかったが、行かなかったら(本人が)悔やんでいたかもしれない」。昭夫さんは声を詰まらせた。
陸前高田市では、民生委員83人のうち11人が死亡または行方不明になった。とりわけ、壊滅的被害を受けた市街地に位置する高田町内の死亡・不明者は、16人中7人に上った。
地元の民生委員によると、「津波は来ない」と渋る高齢者の車いすを押して避難所に向かったり、脚の悪い高齢者を車に乗せて何度も往復したりしている際に、津波にのまれた人もいたという。
◎宮城沿岸、住民転居支援難しく/活動に個人情報の壁/居場所つかみきれず
東日本大震災による津波被害が大きい宮城県沿岸部では、住民が散り散りになり、民生委員の活動が困難になっている。仮設住宅やアパートなど転居先を開示す る自治体は少なく、民生委員は人づてに所在を聞き、訪ね回る日々だ。活動範囲も格段に広がった。「どう支援の手を差し伸べていいのか」。苦悩が続く。
地区全体が壊滅的な被害を受けた気仙沼市幸町地区。同地区の民生委員斉藤正男さん(72)は市西部の仮設住宅で暮らしながら、かつて近所だったお年寄りや障害者の世帯を訪ね、体調を気遣いながら相談に乗る。
15日は市内4カ所の仮設住宅を巡回。1人暮らしの主婦村田あきさん(93)方で優しく声を掛ける。「寒くなったけれど体調は大丈夫?」「痛めた腕の具合はどう?」
村田さんの顔がほころぶ。「震災前も玄関先から声を掛けてくれた。顔なじみの人が来てくれるのは本当にうれしい」
斉藤さんは、以前は市が提供した世帯名簿を手に約150世帯を歩いて訪ねていた。震災後、市から転居先の情報提供はない。携帯電話で直接住所を尋ねたり、自治会長から聞いたりしたが、いまだ全員の居場所を把握できていない。
民生委員は基本的に無報酬。活動はほとんどが車での移動になったが、ガソリン代は自己負担だ。「できるだけ多くの人を訪ねたいが、限界がある」と斉藤さん。10月下旬には仮設住宅で暮らす高齢の女性から突然、腹痛を訴える電話があり、車で病院まで運んだこともあった。
市社会福祉事務所は転居先などの情報について「どういう情報を提供できるか、検討している段階」と話すにとどまる。「被災した民生委員も多く、活動体制の見直しが先だ」と言う。
石巻市北上町の民生委員佐々木裕子さん(61)も津波で自宅が流失。仮設住宅に入居して活動する。同じ仮設住宅に地区住民の7割弱が入り、日常的に接しているが、「ほかに移った人たちへの訪問は難しい」。
石巻市も各世帯の名簿は明らかにしていない。市福祉総務課は「お年寄りや障害者ら要援護者の入居先を伝える準備はしているが、家族全員の名前などを伝えることは考えていない」と話す。
一方、宮城県南三陸町は8月末、仮設住宅の団地ごとに世帯名簿を民生委員に提供した。
町民生委員児童委員協議会の舘寺昌晴会長(66)は「入居の選考段階で公平性を重視したため、地域コミュニティーが崩れてしまった。地域のつながりを維持するため、どこに誰がいるのかを把握する必要があった」と説明する。
同協議会の事務局を務める町福祉課も「個人情報の取り扱いは慎重にならないといけないが、大変な時期だからこそ、共有化が必要な情報もある」と指摘している。(田柳暁)
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