震災とアスベスト:/上 安全対策おざなり 「除去業者ほとんどない」<毎日新聞>
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震災とアスベスト:/上 安全対策おざなり 「除去業者ほとんどない」
毎日新聞 2013年01月11日 東京朝刊
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▼全文引用
東日本大震災で4000人近くが死亡・行方不明となった宮城県石巻市。商店街では被災した2階建て飲食店の解体工事が続いていた。周囲をシートで覆ってアスベスト(石綿)の飛散を防ぐため、工事途中に約2カ月の中断を余儀なくされた。
この現場で石綿を見つけたのは、石綿対策に取り組むNPO「東京労働安全衛生センター」(東京都)。 11年12月、鉄骨などに吹き付けた石綿の露出と散乱を確認した。埼玉県の業者が12年8月に解体を始めたが、同センターが再確認したところ、石綿が完全 に除去されずに隣地などに飛散していた。
業者には100件以上の石綿除去を手がけた経験があり、壁の内側から確認できる石綿は全て取り除いた。 だが柱の外側にも吹き付けた石綿があり、「想定外だった」(業者)。全て取り除いたとの想定で解体したので、簡易のマスクで作業をしたという。業者は「除 去に関して確立された工法はない。初めから建物全てを覆えば安全だが、発注者側は費用を抑えようとするので予算面からも難しい」と話す。市は「建物の設計 図書が津波で流され、石綿の有無を確認するのが難しい」と対策の難しさを説明する。
市は廃棄物の量などから、市内で石綿を含む建物の解体現場は約1200カ所あったと推計している。だが 解体業者の石綿対策への意識は低い。石巻労働基準監督署による12年6、7月の調査では、回答があった122の現場(計110社)のうち、石綿の有無に関 する事前調査を「適正に行っている」と答えたのは約59%。防じんマスクの着用などを管理する責任者を選任しているところも、約56%にとどまった。
11年11月には、JR仙台駅前の9階建てホテル解体現場で、最大で世界保健機関(WHO)基準(大気1リットル当たり10本)の36倍の石綿繊維が検出された。市によると、解体業者は床に穴を開けて廃棄物を階下に投げ捨て、床の鉄骨に含まれた石綿が飛散していた。
石巻市の担当者は「復旧工事の件数が多すぎて、解体の経験や石綿の知識がない業者にも依頼せざるを得ない。石綿除去業者も宮城県内にはほとんどいない」と嘆き、行政側の態勢も含めて国が新しい制度を作らないと、被災地だけでの対応は無理だと指摘する。
◇
解体現場でのアスベスト飛散が大きな問題となった阪神大震災から間もなく18年。この時の経験が生かされているのか検証する。(この連載は神戸支局・近藤諭、仙台支局・金森崇之が担当します)
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