福島第1原発事故 東電集団告訴 検察、避難状況巡り双葉病院長から任意聴取<毎日新聞>
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東日本大震災:福島第1原発事故 東電集団告訴 検察、避難状況巡り双葉病院長から任意聴取
毎日新聞 2013年01月12日 東京夕刊
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▼全文引用
東京電力福島第1原発事故で、東電幹部らの刑事責任の有無を捜査している検察当局が、避難中や避難先で 多数が死亡した双葉病院(福島県大熊町)の関係者から任意で事情を聴いていることが、病院関係者の話で分かった。東電幹部らに対する集団告訴・告発では、 同病院の患者の他にも被ばくした住民らが被害者とされており、検察当局は今後、被害者側の事情聴取を本格化させるとみられる。【神保圭作】
双葉病院は原発から南西4・5キロにあり、事故時は338人が入院。11年3月12〜16日、複数のグ ループに分かれて避難したが、事故の深刻化で自衛隊の到着が遅れ、救助されても移動中や避難先で十分な治療を受けられなかった。病院によると、11年3月 末までに寝たきり患者40人、隣接する系列の老人保健施設「ドーヴィル双葉」の利用者10人が死亡した。
関係者によると、検察当局は昨年末、鈴木市郎院長と職員1人から、事故発生から避難が完了するまでの経過を聞き取ったという。
原発事故を巡っては全国の約1万4000人が昨年、当時の東電幹部らに対して「津波の危険性を踏まえた対策や事故防止の注意を怠り、事故を発生させ住民らに被ばくによる傷害を負わせた」などとして業務上過失致死傷容疑などで告訴・告発した。
検察当局は、今春をめどに刑事処分の判断を行うとみられる。
◇「なぜ母はバス車内で死んだのか」福島の男性、訴え
福島第1原発事故に伴う避難で双葉病院の入院患者ら50人が死亡したことは、事故の悲惨さを象徴してい る。患者と避難を共にした系列の老人保健施設「ドーヴィル双葉」(福島県大熊町)の利用者で、避難中に死亡した渡部玉子さん(当時88歳)の長男武さん (61)は「なぜ母は死んだのか。真相を知りたい」と訴える。
「いわき光洋高校から磐梯(ばんだい)町に至るバスの車内。16日午後10時ごろと推定。直接死因は急性心筋梗塞(こうそく)」。福島県川内村で被災し、同県いわき市の仮設住宅で避難生活を送る武さんが、玉子さんの死亡診断書を見せてくれた。
玉子さんを含むドーヴィル双葉の利用者98人は11年3月14日午前、原発事故の避難で大型バスに乗せられ、約10時間かけていわき市の県立いわき光洋高校に着いた。玉子さんは高校の体育館で二晩過ごし、16日にバスで会津地方に移動中に亡くなった。
玉子さんは足腰が悪く車椅子生活だったが、体調は良く、見舞いに行くと笑顔を見せたという。武さんは 「今でも死んだことが信じられない」と語る。武さんは3歳のころ、子供のいなかった親戚の玉子さんの養子になった。「面倒を見てくれた。恩返しもできてい ないのに、逝ってしまった」
武さんは村役場に震災関連死の認定を申請して認められ、災害弔慰金250万円を受け取った。集団告訴に は参加していないが、11年末には東京電力に「死亡したのは事故による避難のため」と約2800万円の損害賠償を求めた。1年後の答えは「705万円」 だった。「クラシックカーを持っている友人から、その車の損害賠償金額は900万円と聞きました。東電にとって母の命は車よりも安いんですね……」と武さ ん。
面会に行くたびに玉子さんは「家に帰りたい」と話した。妻に介護ヘルパーの資格を取ってもらい、在宅介 護の準備をしている矢先の事故だった。「申し訳ない気持ちでいっぱいです。でも、今は花を供えることしかできない」。そう言って、武さんは玉子さんの遺影 を見つめた。【神保圭作】
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