「北の山・じろう」時事問題などの日記

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日本の巨大メディアを考える(その2)「オラさん」の日記

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★趣味人倶楽部「オラさん」の日記から全文転載
日本の巨大メディアを考える(その2)
2012年05月29日 21時21分
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3.ニューヨーク・タイムズ
  ─「輪転機を14階に上げても戦い抜く」

 国民世論に圧倒的な影響力を持つ日本の巨大メディアが、「権力のチェック役」というメディア本来の仕事を果しているでしょうか。率直に言って、それを放棄してしまっている。「チェック役」どころか、「権力と一体化」して、古い体制の「守護神」のようになっている。ここに大変深刻な問題があります。

 日本の巨大メディアが、他の国と比べて如何に異常であるか、欧米との比較で見てみたいと思います。勿論、欧米諸国のメディアも時の支配勢力の影響や制約を受けています。そこにはいろいろな問題点があります。ただ、そういう影響や制約を受けつつも、「権力のチエック役」としての役割を、様々な形で果して来ていることも事実です。

 例えばアメリカのメディアはどうでしょう。勿論、アメリカのメディアにもいろいろな問題点があります。しかし、時の政府の不正に正面から立ち向かい、ジャーナリズムの歴史に残る「二つの頂点」といわれる記録を残しています。

 その一つは、1971年ニューヨーク・タイムズ紙が、ベトナムの「トンキン湾事件」(1964年)は、アメリカ軍部のねつ造だったことを示すアメリカ国防総省の秘密報告書─「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露したことです。

 「トンキン湾事件」というのは、「北ベトナムのトンキン湾で、米駆逐艦が北ベトナムの魚雷艇から攻撃を受けた」というねつ造を、当時のジョンソン政権がでっちあげ、それを口実に、北ベトナム(北爆)を開始し、ベトナム侵略戦争の全面化につながった謀略でした。

 これがねつ造だったことを、ニューヨーク・タイムズ紙が暴露していくのです。ニューヨーク・タイムズ紙は、この報道によって、ジャーナリズムの最高の名誉とされる、ピューリッツアー賞を受賞しました。

 この時のニューヨーク・タイムズの「覚悟」を示す資料として、私が印象深く読んだのは、『メディアの興亡』(杉山隆男著、1986年、文藝春秋)です。

 「ペンタゴン・ペーパーズ」は、米国防総省元職員のエルズバーグ氏が持ち出し、ニューヨーク・タイムズ紙のニール・シーハン記者に渡しました。このシーハン記者に、小谷正一氏(毎日新聞退職後、電通顧問などを勤める)が質問しているやりとりの場面があるのです。その部分を引用させていただきます。

 「小谷はゆっくりと言葉をついだ。
 『シーハンさん、あなたが書いた記事は、一つの政府を倒すぐらいに力を持っている。いわば権力と対決する記事だ。いくら世界に冠たるニューヨーク・タイムズといえども、そうした重大な、ことによったら会社を危機に引きずり込むかもしれない記事をのせようという時は、やはり会議にかけるんでしょうね』

 『いや、会議なんて、そんな大袈裟なものはありません』
 シーハンは笑って答えた。
 『あの時、僕が副社長のジェームズ・レストンに呼ばれて、ザルズバーガー社長もいるところで、例の秘密文書について話を聞かれただけです』
 『レストンはどう言ったのですか』
 『ひと言、これは本物か。僕が本物です、と言ったら、レストンは、わかった、と言ってGOサインを出しました。その後で、レストンは部長会を開いて一席ぶちました。これからタイムズは政府と戦う。かなりの圧力が予想される。財政的にもピンチになるかもしれない。しかし、そうなったら輪転機を二階に上げて、社屋の一階を売りに出す。それでも金が足りなければ、今度は輪転機を三階に上げて二階を売る。まだ金が必要というなら、社屋の各階を売りに出していく。そして最後、最上階の十四階にまで輪転機を上げるような事態になっても、それでもタイムズは戦う‥‥‥』

 小谷はシーハンの話を聞きながら、日本の新聞社とアメリカの新聞社は、こうも違うものなのかと愕然とした。タイムズ社は社屋の一階一階を売りに出し、それこそ身を削りながらも、なお言論の自由を守り抜くために政府と戦うという。

 ところが日本はどうだ。社屋を売って政府と戦うどころか、社屋を建てるために政府から土地を分けてもらっている。読売は大蔵省が持っていた土地に新社屋を建てたばかりだし、毎日の敷地のうち、竹橋寄りの部分は皇宮警察の寮、つまりは国有地だったところだ。日経もサンケイも社屋が建っているところは、もとはと言えば大蔵省の土地である。そして朝日だって、築地の海上保安庁の跡地に社屋をつくろうとしている。日本の大新聞という大新聞が、全て政府から土地の払い下げを受けて、『言論の砦』を建てているのだ。これで政府相手にケンカをやろうというのが、どだい無理な話である」
2012年05月29日 21時21分


★以上、趣味人倶楽部「オラさん」の日記から全文転載