二者択一を超えた原発論議深めよ 社説・春秋 2012/11/24付<日本経済新聞>
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二者択一を超えた原発論議深めよ
社説・春秋 2012/11/24付
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▼全文引用
12月の衆院選ではエネルギー政策が大きな争点になる。とりわけ福島第1原子力発電所事故の教訓を踏まえ、原発の位置づけをどうするかは、日本経済や国民生活を左右する重要な課題だ。
民主党政権は「2030年代に原発ゼロをめざす」とするエネルギー戦略を示し、第三極と呼ばれる政党の一部にも脱原発を掲げる動きがある。一方で、自民党は「原発ゼロは無責任」と批判し、選挙の対立軸になりそうだ。
再稼働への道筋示せ
だが、問われているのは「原発ゼロに賛成か反対か」という単純な二者択一ではないはずだ。
これから原発への依存度は下がるだろうが、それに代わって太陽光などの自然エネルギーは主役になれるのか。天然ガスなど化石燃料の輸入を増やすにしても、どうすれば経済や生活、環境への悪影響を最小限に抑えられるか。
各党はこれらをきちんと説明し、現実を見据えたエネルギー政策を競ってほしい。
エネルギーは生活や産業の基盤であり、世界の経済や政治を動かす。私たちは少なくとも4つの視点からエネルギー政策を考えるべきだと重ねて主張してきた。
第一に安全の確保だ。原子力安全行政を一元的に担う原子力規制委員会が9月に発足した。重大事故を二度と起こさないよう、科学的根拠を踏まえ、厳格な安全基準をつくれるか。使命感をもって取り組む人材を集め、新組織を早く軌道に乗せなければならない。
第二に、少しでも安価なエネルギーを安定供給することである。大半の原発が停止しているいまの状況が続けば、化石燃料の輸入費は年3兆円以上もかさむ。経済の活力をそぎ、産業空洞化や雇用、所得の減少を招く心配がある。
日本のエネルギー自給率は4%(原子力を除く)にとどまる。自然エネルギーは目いっぱい増やすべきだが、その実力は未知数だ。1970年代の石油危機のような混乱を繰り返さないためにも、多様なエネルギーの選択肢を残しておくことが欠かせない。
第三が地球温暖化の防止だ。北極圏の雪氷が溶けるなど温暖化は着実に進んでいる。国際社会が直面する課題に日本だけが目を背けることはできない。そして4つめが核兵器を持たない国として原子力の平和利用に徹し、安全保障を確かにすることだ。
こうした多面的な視点を忘れずに、各党は責任あるエネルギー政策を示すべきだ。
個別の課題ではまず、原発の再稼働をどうするかが焦点になる。
電力の供給不安がこれ以上長引かないように、一定数の原発の再稼働は不可欠だ。長期的に脱原発を訴える政党も、当面は再稼働が必要としているところが多い。
原子力規制委は来年7月までに再稼働の可否を技術的に判断する基準をつくる予定だが、誰が最終的に判断し、地元に協力を求めるのか、あいまいだ。各党は政府と規制委の役割や責任を明確にし、再稼働への道筋を示してほしい。
核燃料サイクル政策のあり方や放射性廃棄物をどう処分するかの議論も、避けて通れない。
核燃サイクル見直しを
使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを核燃料として再利用する計画について、民主党政権はひとまず継続を決めた。だが「国策民営」で進めてきた再処理を見直す必要はないか。プルトニウムを原発で燃やす計画に地元の理解を得られるのか。課題は多い。
放射能の高い廃棄物の最終処分の方法は、政治の責任で決めるべきだ。また福島第1原発の廃炉や、放射性物質で汚染された地域の除染も、巨額の費用を国と東京電力でどう分担するのか。原子力損害賠償法を見直し、事故が起きたときの電力会社と国の責任分担を決め直す必要もあるだろう。
電力市場の改革も後退させてはならない。経済産業省は家庭向けを含めて電力の小売りを全面自由化する方針だ。電力市場に多様な企業が参入し、利用者が電力会社を選べるようになれば、競争を通じて供給力の確保や料金の抑制が期待できる。その制度設計をどうするか、各党の考えを聞きたい。
こうした課題が山積していることを考えれば、原発に賛成か反対かの二者択一では済まないことは明らかだ。原発に対する主義や信条だけに縛られないエネルギー論争を各党に求めたい。
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