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【忘れない、立ち止まらない】「防潮堤」で気付かされた自然へのおごり★(2)
2013.03.06
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130306/dms1303060711001-n1.htm
▼全文転載
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「12・5メートルにするって、いつ、どう決まったんだ」「そんなもの本当に意味あんのか」。
陸前高田市の防潮堤づくりに関する行政や議会とのやりとりのなか、市民はしばしばいらだちを滲ませた。
4階建てビルに相当するコンクリートの壁が、海沿いに延々と続く…。想像するのも難しい非日常的光景であると同時に、それだけの高さ・規模と聞いて、まず住民が思い浮かべたのは、釜石市の全長2キロにわたる防波堤ではなかったろうか。
「世界最深」のギネス記録を誇り、30年の歳月をかけて2009年に完成したこの“海の砦(とりで)”は、東日本大震災の大津波で崩壊。総工費1200億円が一瞬で水泡に帰した。
津波を6分間遅らせる効果があったとも分析されているから、全く無意味だったとはいえない。だが。
「人の造るものには限界がある」-。それがこの津波を経験した人に等しく宿る思いだろう。
こうしたなか、「森で防潮堤を築こう」というプロジェクトが注目されている。埋め立てたがれきの上に盛り土して常緑広葉樹を植え、堤防を“育てる”-。横浜国立大の宮脇昭名誉教授が提唱するこの方法は、岩手の大槌町、宮城の岩沼市などで実現を目指すところだ。
10~15年かけて地中深く根を張った木々は、押し波に耐えるだけでなく、引き波で人や物が流出するのを防ぐ。実際、カシやタブノキの木立がこの津波にビクともせず立ち、何十台もの車をせき止めている光景は圧巻だった。
発災後まだ半年のころ、京都の高僧と陸前高田で出会った。その僧が「人間の傲慢さに、自然が警鐘を鳴らしたのだろう」と口にした。「罰があたったのだ」。 言外にその意を感じ取り、「なぜその罰を、東北がかぶらねばならなかったのですか」と叫びそうになるのをようやくこらえた。傷口に塩を塗るような、あまり に心ない物言いに思えてならなかった。
だが今なら理解できる。人は自然のもとに、謙虚であらねばならないのだと。征してやろうなどというおごりは捨て、その力を借り、共存を探る姿勢が必要なのだ。
大船渡、陸前高田の両市で、いまだ300人の行方が分からない。毎月一斉捜索が行われているが、この1年数カ月で見つかったのは「人骨がたった2片だけ」という事実を前に、森の防潮堤構想に携わる陸前高田出身の男性が思いを吐露した。
「鎮守の森があれば、人が海へ“持っていかれる”のを防げたかもしれないのに」…。
戻らない家族を、仲間を待ち続ける人たちの無念さを、置き去りにしてはならない。
■鈴木英里(すずき・えり) 1979年、岩手県生まれ。立教大卒。東京の出版社勤務ののち、2007年、大船渡市・陸前高田市・住田町を販売エリアとする地域紙「東海新報」社に入社。現在は記者として、被害の甚大だった陸前高田市を担当する。
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