「北の山・じろう」時事問題などの日記

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アフガニスタンに続く"泥沼"に足を踏み入れたオランド大統領の悪夢<川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

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川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」
 2013年01月25日(金) 川口マーン惠美
アフガニスタンに続く"泥沼"に足を踏み入れたオランド大統領の悪夢
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▼全文転載


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写真 〔PHOTO〕gettyimages
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 フランスのオランド大統領は、取り返しのつかないことを始めてしまったのではないか。

マリ共和国がドイツのニュースに登場したのは去年の4月、イスラムの過激派が国土の北半分を制覇したというニュースだ。彼らはみるみるうちに勢力範囲を広げ、まもなくマリの北部は過激派グループに分割され、イスラム法に基づく実効支配が始まった。

 最近になり、この勢力が中部の主要都市コンナを占拠し、首都のバマコに迫った。マリ政府には過激派に対抗する力などない。そこで、フランスに援助 を要請、急遽フランスが軍事支援に駆け付けることになったというのが、公式の発表だ。ただ1月11日、派兵を発表するオランド大統領を見ながら、私は違和 感を禁じ得なかった。

「作戦はそれが必要な間だけ続く」

 オランド首相の人気はここ数ヵ月ガタガタに落ちている。選挙公約は実行に移せないし、失業者は増え、国の経済は快方に向かわないどころか、ますます悪くなっている。実力不足が露呈し、こともあろうに、いわゆる"強い大統領"であったサルコジ前大統領と比較される始末だ。

 内政に問題があるとき、国民の目を外に逸らそうとするのは政治家の常套手段だが、マリ派兵もそれなのか? 電撃戦で勝利をものにし、人気回復を図る? あるいは、ようやく自分が強い大統領であるということを演出できるチャンス? 

 派兵を発表した会見で、「友邦国マリの国軍を支援することが目的。作戦はそれが必要な間だけ続く」と、オランド氏はこれ以上張れないほどに胸を 張っていた。しかし、その態度が決然とし、表情が真剣であればあるほど、なぜか不自然に見える。板についていない。いずれにしても、オランド大統領はこう して自国だけで戦争を始めた。そして確かに国民も、それを支持しているようにみえた。

(2)

 その日の午後、攻撃は開始された。まもなく主要都市コンナ解放のニュースが流れた。パイロットが1名戦死。12日も空爆が続き、13日にはさらに4機の戦闘機が前送された。

 翌14日、フランス政府は「戦闘は間もなく終わるだろう」と発表した。しかしこの日に、イギリスとドイツは、フランスに対する兵站援助を表明したのである。ただし派兵はしないと、両国は断言した。

 さらに翌15日、フランスは、兵隊を3倍以上の2500人に増強することを発表した。この日、オランド大統領はアブダビを訪問していたが、フラン ス軍の最高司令官として、そこから指揮を続けた。「テロリストたちを見つけたらどうすべきか? 殺すか? それともできれば生け捕りに? いずれにして も、我々の未来が二度と脅かされないようにしなければいけない」と意気込みながら、またしても強い大統領を演じていた。

 同じころ、パリでは戦死したパイロットの葬儀が、粛々と行われていた。国民は、イスラム過激派との戦いはそれほど簡単にいかないのではないかと気づき始めていた。作戦が長引けば、NATOの同盟国も次第に戦闘に引き入れられていく。

 16日、戦闘は地上戦へと拡大した。ドイツの輸送機トランスアルが2機、マリへ向かった。オランド大統領は国民に向かって、「この作戦は我々の義 務である。決して私たちの権益を守るためではない」と主張した。そして、午後、アルジェリアでの人質事件が起きたのだ。テロリストたちは、フランスに即刻 マリから手を引くよう要求していた。

テロがヨーロッパ大陸まで拡張する可能性も

 サハラ砂漠には、トゥアレグ族が住んでいる。色が浅黒く、頭も顔も布で巻き、長い衣装を着て、ラクダを連れている。まさに砂漠の遊牧民だ。実際、 中世にはサハラ交易を支え、しかも好戦的民族として恐れられたという。今も布の間から覗いている目は鋭く、体全体から勇猛さがオーラのように染み出てい る。女性の顔も勇猛だが、イスラムにしては不思議と、頭の被り物がない人が多い。

トゥアレグとは、「神から見捨てられた人々」という意味だという。この種族は、イスラム教徒ではあるが、他のアラブ人ほどその戒律を厳しく守らず、宣教活動もしない。それを定住型のアラブ人から軽蔑され、この不名誉な呼び方が定着したらしい。

トゥアレグ族の数は100万から350万の間といわれる。あまりにもいい加減な数字だが、ラクダと一緒に国境を超えて動き回っているので、詳しい ことは何もわからない。そのトゥアレグ族の一部が過激化し、武装集団アザワド解放民族運動となり、そこにAQIM(イスラームマグリブ諸国のアル=カー イダ機構)とか、アンサール・アッディーンなどという、サラフィスト(イスラム原理主義者)たちのグループが三つ巴、四つ巴になり、広大な砂漠に群雄割拠 している。

(3)

 活動範囲はモーリタニア、マリ、アルジェリア、ニジェールリビア、モロッコと、西ヨーロッパがすっぽり収まるほど広い。だいたい国境自体が、 ヨーロッパの列強がアフリカを分割した時に地図の上に線を引いて決めただけだから、川があるわけでも山があるわけでもない。ほとんどは砂だけだ。私たちが 考える国家という概念は、おそらくそこに住む彼らにはないだろう。

 要するに、今ではテロリストたちは、悠久の砂漠を自分たちのテリトリーとして、自由に動き回っている。マリとアルジェリアの国境は1000キロ、マリとモーリタニアの国境も2000キロ近い。

 イスラム過激派の軍資金は、欧米人の誘拐で得る身代金と、麻薬の密輸だ。アラブの春の後は、武器の売買でさらに豊かになった。多くのトゥアレグ族 や、他のイスラム過激派が、リビアの内戦で反カダフィ側に付いて戦い、襲撃した政府の武器庫から武器弾薬をどんどん砂漠の自分たちの基地に運んだ。当時、 西側諸国はこの過激派イスラムを、民主派として支援していたのだ。

 いずれにしても、現在オランド大統領が敵に回しているのは、資金を潤沢に蓄え、一級の武器を持った、戦闘能力のある砂漠のテロリストたちなのである。

 このテロリスト集団を束ねている頭目は、モフタール・ベルモフタールといって、今年41歳のアルジェリア人だ。アフガニスタンで片目を失った。もちろんサラフィストだが、資金集めの天才で、お金のためなら、どんな残酷な誘拐も厭わないことで有名だ。

 その彼が、フランスのマリ派兵後、西洋人はすべて敵とみなすと宣言した。そして、アルジェリアで、それが現実となったのだ。マリに派兵の5日後にして、何千キロも離れた場所でガス施設を乗っ取ったという事実は、彼らの連携力と、神出鬼没の機動力を証明している。

 この事件は、フランスが、躊躇するアルジェリア政府を説得して、フランス戦闘機のアルジェリア上空の飛行許可を取り付けた途端に起こった。つまり ガス施設のテロは、フランスに協力したアルジェリアに対する報復だ。この調子でいけば、今後、フランスの作戦に協力した国は、皆、テロリストに狙われると いうことになる。しかも、テロ活動はアフリカ大陸だけに限られず、ヨーロッパ大陸にまで拡張する可能性もある。オランド大統領は、悪夢を見ているような気 分に違いない。

イスラムの過激派はそう簡単には諦めない

 フランス兵の数は今後さらに増員されるという。オランド大統領は、「この地域に治安が戻るまで我々は引き揚げない」と言うが、そう簡単にここに治 安が戻るとは思えない。イスラムの過激派は一度敗れても、必ずまた出てくる。フランスは、アフガニスタンから撤退することさえままならないのに、またもや 次の泥沼に足を突っ込んでしまったのではないか。アフガニスタンとの違いは、ここが峻険な山岳地帯ではなく砂漠だということだが、イスラム勢力にしてみれ ば、どちらも慣れ親しんだ土地である。

(4)

 マリは豊富な地下資源を持つ。南アフリカ、ガーナに次いで、世界で3番目の金の生産国であり、最新の金の精錬所がようやく去年始動したばかり。金鉱は国の南部にあるので、まだかろうじてマリ政府の勢力下だ。

 また、ウラン、ボーキサイト、銅も豊富で、中でもボーキサイトは、世界一の埋蔵量だという。しかし、これだけの地下資源を持ち、生産が年々伸びて いるというのに、マリは貧乏国のままだ。利益はヨーロッパに吸い上げられている。オランド大統領が、派兵は「我が国の利益のためではなく、友好国マリのた めだ」と強調しているが、ここでは未だに植民地のメカニズムが働いているのではないか。

 フランスは自国の核産業のためのウランの3分の1を、マリの隣国ニジェールからの安いウランで賄っている。マリがイスラム勢力の手に落ちると、ニ ジェールも危なくなる。つまり、それらの利権の保護のために、マリをイスラム勢力の手に渡すわけにはいかないのだという話もある。ニジェールもマリと同じ く、フランスの旧植民地である。かつて多くの黒人が奴隷船に積まれてアメリカ大陸に渡ったのも、この近くのシエラレオネセネガルの港からだった。

 視点を変えれば、砂漠の民は、自分たちの土地を取り返し、そこを自分たちの価値観で仕切り直そうとしているだけのようにも見える。テロという方法 はもちろんよくないが、「他にどんな方法が残されているか!」ときっと彼らは言うだろう。そして現実として、罪のない人々がそのテロの犠牲になる。

 いずれにしても、イスラムの過激派はそう簡単には諦めない。彼らは死を恐れていないだけに強い。世界を恐怖に陥れるポテンシャルを持っている。私たちの悪夢は、今、始まったばかりだ。

 末筆ながら、アルジェリアでの犠牲者の御安眠を心からお祈り申し上げる。

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