「北の山・じろう」時事問題などの日記

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隠蔽 無責任 生々しく/検証、東電テレビ会議 <河北新報>

河北新報
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隠蔽 無責任 生々しく/検証、東電テレビ会議
2013年04月02日火曜日
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130402_02.htm
▼全文転載



使用済み燃料プールへ放水するため集結した緊急消防援助隊。東電本店に設けられた事故対策統合本部の指示が彼らを振り回した=2011年3月18日午後、いわき市四倉町
http://www.kahoku.co.jp/img/news/2013/20130402019jd.jpg
白煙を上げる福島第1原発3号機。格納容器の破損を指摘する声が早い時期に社内で出ていた=2011年3月16日午後(東京電力撮影)
http://www.kahoku.co.jp/img/news/2013/20130402020jd.jpg

 東京電力福島第1原発事故後、社内テレビ会議で交わされたやりとりは超一流企業とされてきた東電の真の姿を教えてくれる。経営陣は事故の当事者とは思え ない発言を繰り返し、組織全体で悪い情報を表に出さないよう腐心していた。2011年3月12日から同年4月11日までの録画映像のうち、一般に公開され ていない部分を中心に事故対応の様子を再現した。(肩書は全て当時)=原子力問題取材班=

◎決死の放水の陰で/幹部ら的外れな雑談

 東京消防庁ハイパーレスキュー隊が中心となった緊急消防援助隊による3号機使用済み燃料プールへの放水は、放射線の恐怖と戦いながら任務に当たった隊員に称賛が集まった。その裏で東電本店では、現場の決死の覚悟を踏みにじるようなやりとりがあった。
 3月19日午前0時半すぎ。吉田昌郎所長がやや高揚した口調で話した。
 「プール内のいいところに水が入っているとの報告です」
 本店の海江田万里経済産業相と勝俣恒久会長、武黒一郎フェローらは手をたたいて喜んだ。東電のホームページで公開されている映像はここで終わっているが、その後、消防や警察、自衛隊の関係者が聞いたら怒り出しそうな会話をマイクが拾っている。
 武黒フェローと勝俣会長は放水している部隊を自衛隊と勘違いした上で、おしゃべりを始めた。
 武黒フェロー「オペレーションの精度が2けたくらい、警察や消防と違う。軍隊はすごい」
 勝俣会長「注文を具体的に出してくるよね」
 武黒フェロー「規律も厳しくやっているんですよね。朝も早起きして。ものすごく地域に気を使っている」
 勝俣会長「北海道は雇用の問題があるでしょ。(自衛隊には)購買力あるわけだ。防衛懇談会の座長をしているときなんかさ、千歳市だなんだって、市長や町長さんが陳情に来るんだよ。動かさないでくれって」
 武黒フェロー「むつなんかもそうです。あそこは自衛隊で持っているようなものです」
 放水開始から15分後。今度は海江田経産相の指示に現場はあぜんとする。
 海江田経産相「(放水を)いったん止めて。(うまく入るのが)分かったでしょ。きょうはそれが目的だった」
 武黒フェロー「これでできることが確認できたので、止めてほしいと考えています」
 吉田所長は「はあ?」と大きな声を上げ、抗議するかのように大きなため息をついた。
 武黒フェローは「分かるからさあ、私どもから消防に伝えるから」ととりなしたが、後ろで海江田氏は言い放った。「大至急やって。はい。そう。それでいいよ」
 隊員は暗闇の中、被ばくの恐怖と戦いながら放水した。原発内の東電社員は消防隊との調整に朝から走り回った。やっと成功した注水をすぐ打ち切ることに不満が出るのは当然だ。福島県庁の現地対策本部にいた高津浩明常務も放水を止める理由が分からない、という表情を見せた。
 0時50分ごろ、吉田所長は伝達した。「いま停止命令を出しました。消防の方も『止めていいのか?』という返答がありましたが、海江田大臣から停止命令が出ていると申しまして、停止の操作に入りました」。放水開始の報告の際とは対照的な、抑揚のない口調だった。

◎格納容器破損/現場、早くから悲観論

 1~3号機の原子炉の状態について、現場や技術者からは早い段階で悲観的な見方が出ていた。
 3月16日朝から蒸気が噴出した3号機。第1原発の所員は蒸気が出る原因を「格納容器が破損しているからではないか」と分析した。背後に「穴開いちゃっているんだよ」との声も入っている。
 本店は否定的だった。圧力容器内の圧力が格納容器よりも高いことを理由に、3号機の格納容器は無事だと主張。武藤栄副社長も同意した。
 3号機は17日早朝、圧力抑制室の圧力が急激に上昇。現場は異常事態を疑うが、本店は「炉心への注水量が多くて格納容器が水で満たされてきた」と判断。1、2号機と併せて注水量を減らした。
 テレビ会議に参加していた柏崎刈羽原発(新潟県)の横村忠幸所長は、この対応に疑問を呈した。
  「水素が漏れたことを考えると、格納容器は既に気密性がない。排気塔より格納容器周りから出ている蒸気が多いので、海水はスプレー状態で蒸発し全て大気に 放出されている。ドライウェル(格納容器)が満水に近づいているなんて、夢のまた夢物語。燃料は空だき状態。注水量を絞るのには反対だ」
 横村所長の指摘を証明するように、1号機と3号機の状態は悪化する。
 20日午前8時前、3号機の原子炉内が三百数十度になっていることが判明。午後2時には1号機も圧力容器周りが400度近くに達していることが確認された。
 現場は慌てて注水量を増やした。だが、空だきになって過熱した燃料に水が触れると、一瞬で蒸気となって圧力が上がる。格納容器が壊れていれば放射性物質が放出される。注水量を絞ったことが事態を悪化させた可能性がある。
 21日夜、武藤副社長は記者会見で格納容器が無事かどうかを尋ねられた。正面から答えず「格納容器の圧力などに大きな変化がなかった」とはぐらかした。
 そのころ、第1原発では深刻なやりとりが交わされていた。
 「1号機は炉心に水が入りにくい状況になっているようだ」
 「1号機の炉心損傷割合がここ数日増えている。(水が)チョロチョロ注入でカラカラの状態で運転されている可能性が高い」
 「炉心損傷の割合、いま8割ぐらい。ここ2、3日で上がり傾向だ。1号機に水を入れないと」
 東電が昨年6月に公表した社内事故調査委員会の最終報告書は17日以降の原子炉がどんな状態だったかに、ほとんど触れていない。

◎後手の被ばく対策/作業員の安全二の次

 原子炉の損傷が進んで原発周辺の放射線量が上昇する中、被ばく対策は後手に回った。
 3号機原子炉建屋が爆発し、2号機の原子炉水位も低下していた3月14日午後1時すぎ。本店の高橋明男フェローは2号機の注水作業を急ぐよう指示した。
 「官邸からとにかく急げと電話があった。『線量のことも構わないで、500ミリまでいいんだからやれ』って」
 当時の現場の社員の被ばく上限は100ミリシーベルト。間もなく250ミリシーベルトに引き上げられたが、協力企業の社員に適用する場合は契約を結んで承諾を得る必要があった。
 2号機の状態が気掛かりな高橋フェロー。思わず「契約なんて後で何とでもなるんじゃないの。こんなときに」と口走った後、つぶやくように「本人が嫌だと思うなら仕方ないけど」と付け加えた。
 事故対策統合本部が設けられ、多くの人が原発に派遣されるようになると、マスクや防護服が足りなくなった。16日は全面マスクが不足し、福島県楢葉町のJヴィレッジで除染したものを再利用していた。
  17日朝、本店の担当者が音を上げた。「マスクが129個しかない。いろいろかき集めているがどこにもない。万策尽きた」。この日は400人以上の作業員 が原発に入る計画だった。相談された武黒一郎フェローも「現場の作業ができないってことだね。うーん、うーん」とうなるしかなかった。
 原子炉が何とか冷却できるようになって復旧工事が本格化すると、線量の高いエリアでの作業が増える。
 24日。3号機タービン建屋の地下で作業していた協力企業の3人が、高い線量の汚染水に触れ、被ばくする事故が発生した。
 福島労働局は東電に作業員の安全を確保するよう求めた。テレビ会議では労働局の要請が紹介された。「われわれが現場に出向くことはできないので、東電が自主的に取り組んでほしい」。監督官庁の及び腰の姿勢が見て取れる。
 厚生労働省原発に立ち入ったのは5月になってから。福島労働局は「事故の拡大を食い止める作業が混乱の中で実施されていた。労働局が立ち入るよりも、東電に適切な線量管理を行わせるよう指導することが効果的と判断した」と話す。
 だが、4月1日に本店担当者が全体会議で報告した内容は、東電の管理がずさんだったことを証明している。当時、警報付き線量計(APD)を代表者にしか携行させていないとの批判が出ていた。
 原発内のAPDは津波で水没するなどして320台しか使えなくなった。ほかの電力会社から450台を借りたが、警報値を設定する機器が手に入らなかったため放置されていたという。
 3号機での被ばく事故の直後に労働局が現場を確認していれば、もっと早く全員の線量管理が徹底できたはずだった。
 福島労働局は「当時の判断は現在でも間違っていなかったと考えている」と話している。

◎担当者も危機感薄く/非常時の本店発言は他人事

 東電本店では、非常事態のさなかとは思えないような発言がしばしば飛び出した。
 警視庁機動隊による4号機使用済み燃料プールへの放水準備が進められていた3月16日午後1時半ごろ。本店で指揮を執っていた武黒一郎フェローに社員が尋ねた。
 「念のための確認ですが、4号機(使用済み燃料プール)に海水が入ります。将来(青森県の)六ケ所(村)に持っていく可能性がある燃料が入っています」
 この期に及んで核燃料サイクルへの影響を懸念する担当者。武黒フェローは「いま死んじゃうか、後で死んじゃうかという問題は、今死なないようにしましょう」と答えた。
 担当者は武黒フェローの言葉を「燃料を生かせ」と勘違い。「では真水を注水するということになりますけど…」と続けると、武黒フェローに「いやいや違う、違う。使える物は何でも使って、今死なないようにしてから、後で死ぬかどうか考えましょう」とたしなめられた。
 政府の指示で原発に駆けつける外部の人が増えると、被ばく量を少しでも下げるために原発構内の情報を求められた。
 18日昼すぎ、本店の担当者が吉田昌郎所長に伺いを立てる。「いろんな活動をするのに一定の情報を開示する必要があります。GA(機器配置図)を開示しようと思いますが、問題ありますか」
 吉田所長は「必要な情報はどんどん開示して持っていくのは当たり前でしょう。そんなもん」とあきれていた。

◎東電のテレビ会議映像

 東電のテレビ会議システムは本店と福島第1、第2、柏崎刈羽の各原発やオフサイトセンターなどを結び、同時進行でやりとりができる。
 福島第1原発事故に関しては事故直後の2011年3月11日夕方からの録画があるが、12日午後11時ごろまでと、15日午前0時6分~16日午前3時18分は音声が欠落している。
  東電は12年8月から3度にわけて、事故後1カ月間約800時間の録画を報道関係者に公開している。ホームページでは27時間37分のダイジェスト版を公 表している。社員のプライバシー保護を理由に、取締役や発電所長以外の個人名に「ピー」という音をかぶせるマスキング処理をした。
 東電は報道関係者に限定して公開する理由として、マスキング処理にかかる手間と費用を挙げる。河北新報社は「さまざまな分野の人による検証が事故の全容解明につながる」と考え、全面公開を求めている。

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