「北の山・じろう」時事問題などの日記

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3・11後のサイエンス:原発「ゴミ処理」も語れ=青野由利(2012年11月27日)<毎日新聞>

毎日新聞
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3・11後のサイエンス:原発「ゴミ処理」も語れ=青野由利
毎日新聞 2012年11月27日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/news/20121127ddm016070003000c.html

▼全文転載

 

 その施設は、福島第1原発1号機のそばにある。通常の配置図ではわかりづらいが、海側に位置している。ほとんど注目されていないこの施設が、今後、原発政策の鍵を握るかもしれない。使用済み核燃料の「乾式貯蔵施設」である。

 事故当時、使用済み核燃料の保管場所は3種類あった。一つが原子炉に併設されたプール貯蔵で1〜4号機 に合計2724本。もう一つが敷地内の「共用プール」で6375本。さらに金属のキャスクと呼ばれる容器に収め空気で冷却する方式で408本が保管されて いた。これが「乾式貯蔵施設」だ。

 今回の事故では、閉じこめ機能のないプール貯蔵のリスクに心底ぞっとした。4号機のプールが空だきにな らなかったのは運がよかっただけという話は、以前にこの欄で書いた通りだ。では、乾式貯蔵はどうか。津波をかぶったものの大きな異常は見つかっていない。 もちろん、さらなるチェックは必要だ。それでも、プール貯蔵に比べてリスクが低いとすれば、全国の原発でできるだけ早く乾式貯蔵に移行するのが得策だ。世 界の潮流も乾式に向かっている。

 もうひとつ乾式貯蔵に期待したいのが、再処理や廃棄物処分問題に一石を投じることだ。

 「再処理をやめると、青森県の再処理工場に貯蔵されている使用済み核燃料を各原発に持ち帰ってくれということになる。そのことはお忘れなきよう」。事故後、核燃料サイクルの幕引きを主張したとたん、電力関係者からそうクギを刺された。

 従来の全量再処理を前提とする国策のもとでは使用済み核燃料はすべて「資源」だ。ところが再処理をやめたとたん「ゴミ」となる。青森県は「資源」は受け入れても「ゴミ」は引き取らない。だから、持ち帰ってくれとなる。

 一方、多くの原発で貯蔵プールは満杯に近づいている。昨年9月のデータでは平均すると貯蔵容量の7割。満杯になれば、もう動かせない。だから、電力会社は「資源」として青森県に送り出し続けたい。

 こうしてみると再処理は、原発を動かし続けるための装置であり、原発の「ゴミ」処分を永遠に先送りする 装置として働いてきたことがわかる。だが、さすがに再処理政策は限界だ。ゴミの最終処分まで含めた原発政策を現実のものとして考えるには別の仕掛けがい る。前置きが長くなったが、それが乾式貯蔵ではないかと思うのだ。

 

 米国はすでに、最終処分までのつなぎとして300年までの長期保管を検討している。日本学術会議も9月 に数十〜数百年の「暫定保管」を提案したが、いずれもプールではなく乾式貯蔵を考えないわけにいかないだろう。昨年、民主党有志の勉強会がまとめた報告に は、乾式貯蔵による「責任保管」という新概念が登場する。最終処分のめどがつくまで責任を持って保管するという考えで、各都道府県に保管場所を置くという 案も示された。廃棄物を原発立地地域だけにまかせていいのか。原発の受益者も引き受けなくていいか。乾式貯蔵による保管は、そうした議論も迫る。

 衆院選に向け各党が原発政策を打ち出している。焦点はもっぱら原発をゼロにするかどうかだが、核の「ゴミ」をどう処分するのかは原発政策への覚悟を示す指標である。ぜひ、これも語ってほしい。(専門編集委員)

 

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