「北の山・じろう」時事問題などの日記

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待ったなしの日本原電の資金繰り! 安倍政権は不都合な真実を隠さず、今こそ原子力政策全体の改革を断行せよ

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町田徹「ニュースの深層
待ったなしの日本原電の資金繰り! 安倍政権不都合な真実を隠さず、今こそ原子力政策全体の改革を断行せよ
2013年01月15日(火) 町田 徹
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▼全文引用

(1)

 東海第2発電所の深刻な被災と敦賀発電所2号機の活断層問題に揺れる日本原子力発電(原電)が新たな難問に直面している。

 発電事業の再開にめどが立たない中で、1,000億円規模の借入金の借り換え期限が3月末に迫っており、資金繰りのめどが立たなくなっているというのである。

 同社は、東京、関西など電力9社、Jパワー(電源開発)などが大株主の民間企業だ。

 関係者によると、これまでは、原子力で発電した電気の売買契約のある上位5位までの大株主が債務保証をすることで借り入れを受けてきたが、東日本 大震災以降、定期点検入りした原発の稼働再開がままならない中で、原電そのものだけでなく大株主5社も収益が悪化しており、金融機関が借り換えに難色を示 しているという。

 本来ならば、資金繰り倒産として破綻処理をすれば済む話だが、原電の場合、問題が通常の企業のような債務整理にとどまらない。というのは、原電が 破綻・消滅した後も、使用済み核燃料の中間貯蔵、最終処理、原子炉の廃炉処理を誰かがきちんとやらないと福島第1原発のような大事故を誘発して しまうリスクがあるからだ。

(2)

安倍政権は、参議院選挙まで国論を真っ二つに割るような難問には触れない構えを決め込んでおり、原電問題にも素知らぬ顔を決め込んでいるが、事態 は待ったなし。核燃料サイクル政策の全容を構築しないまま、原子力発電を民間企業の事業として推進してきた政府の安易な姿勢が再び重大な事故を招きかねな い事態になっている。

存続の意義を見い出せない原子力発電事業

 そもそも日本原電は、原子力開発を巡る政府と電力9社の主導権争いの妥協の産物として、1957年 に設立された会社。その名残で、2011年3月末の株主構成をみても、東電、関電など電力9社が全体の85.04%を、政府主導で設立されたJパワーが同 じく5.37%を出資する状態が続いている。残りの9.58%は、原子力関連メーカーなど143社が出資している。ちなみに、資本金は1,200億円。

 原電は、原子力発電事業のため東海、敦賀の2発電所に3基の原子炉を保有しているほか、東電と共同出資の「リサイクル燃料貯蔵株式会社」を通じて、青森県むつ市で使用済み燃料の中間貯蔵・管理事業も手掛けている。

 このうち原子力発電事業は、3基そろって稼働していないばかりか、いずれも運転を再開するめどさえ立っていない。

 順に説明すると、まず、東海第2は茨城県那珂郡東海村にあり、東電・福島第一原発と同様に東日本大震災の揺れと津波の直撃を受けた原発だ。激しい揺れで原子炉は自動停止したものの、想定外の津波で残った非常用電源が停止して全電源喪失に直面した。

 福島第一のようなメルトダウンや水素爆発は回避したものの、冷温停止までに3日と9時 間54分を要する綱渡りを経験した。現在まで、緊急安全対策、さらなる安全向上対策、シビアアクシデント対応措置などに追われているのが実情だ。

 こうした事情は、福島第2原発の直面したものに近く、短時間で3原子炉がそろって冷温停止を達成した東北電力女川原発や定期点検中で無傷だった 同東通原発とは比較にならないほどの状況だったと言える。地元の東海村村長が廃炉を主張しており、運転再開も論外とみなされている。

(3)

 一方、福井県敦賀市にある敦賀第1は、一昨年1月の定期点検に伴い運転を停止した。これといったトラブルは報告されていないが、この原子炉は日本 で初めての商業発電用の軽水炉として1970年3月に営業運転を開始したもので、すでに建設から40年の歳月が経過した基本設計の古いプラントだ。

 そして、原子力規制委員会が重要施設の下を活断層が走っているとの判断を示しているのが、敦賀第1と同一サイト内にある敦賀第2である。それ以前 に、原電の説明を言い分通りに記すと、「(一昨年)5月7日より、1次冷却材中の放射能濃度の上昇に伴う漏えい燃料の特定検査のため」プラントを停止。同 8月29日より、第18回定期検査もあわせて実施中という。

 補足しておくと、東日本大震災以前から、同社が会社の存続を懸けて計画していた敦賀第3、第4の新設計画は、完全に宙ぶらりんとなったままだ。

 つまり、以上の説明でわかると思うが、原電とその原子力発電事業は、存続の意義を見い出すこと自体が困難な状況が続いているのである。

電力業界が真っ二つに割れる異常事態

 こうした原電の状況に、週刊誌や新聞は早くから、疑問を投げかけていた。

 たまたま私がコメントを求められた記事だったので手元に残っているのだが、例えば、週刊ポストは2012年11月16日号に『「発電量ゼロ」の原 子力マフィアの総本山に1,440億円!』と題する記事を掲載し、電力を供給していない原電に対して、東電や関電が基本契約分の料金を支払い、それが庶民 の電気料金に転嫁されている問題を指摘している。

 また、今年に入ってからは、原電が関東財務局に提出した半期報告書で、そうした"眠り口銭"のような支払いによって、2012年4〜9月期の連結 純利益が前年同期比24%増の209億円だったことが判明。新聞各紙がインターネット版などで「日本原電、発電量ゼロでも24%増益、12年4〜9月」 (日本経済新聞)、「日本原電、発電せず最高益 上半期、電力5社から基本料」(朝日新聞)といった批判的な記事が相次いだ。

 しかし、新聞各紙が指摘する最高益問題は一時的、あだ花的な現象に過ぎない。むしろ本質的な問題は、週刊ポストが示唆したように、国の意向で、電 力の供給を受けなくても電力会社に負担を強いる契約を、政府が電力会社に課してきた点にある。これは、原子力政策の矛盾のひとつなのだ。

(4)

 そうした中で初めて明らかになったのが、本稿で取り上げた原電の債務借り換え問題である。

 事業そのものにもはや存在価値がなく、会社として存亡の危機に瀕している原電の信用力を憂慮して、金融機関は、3月末の約1,000億円の借り換 えに難色を示しているという。これまで、原電と電力供給契約のある電力5社(東電、関電のほか、中部、北陸、東北の各電力)が債務保証をすれば、原電への 融資に応じてきたが、この5社の債務保証では今後融資に応じられないと、態度を硬化させているというのだ。

 原電が破綻の危機に瀕しているにもかかわらず、政府・経済産業省は、参議院選挙までは、国論を2分するような政策判断を伴う案件を封印したい安倍政権の意向を受けて、この重要問題に素知らぬ顔を決め込んでいる。

 関係者によると、水面下では、この危機を回避するため、供給を受けている電力5社が思い余って、供給を受けていない5社(出資比率の大きい順に、 Jパワー、九州、中国、北海道、四国の各電力)にも債務保証に応じるよう要求しているという。供給を受けている電力5社は、原電に対する出資額が大きく、 破綻すれば、財務的に大きなダメージを受けるというお家の事情があるからだ。

 ところが、これは、供給を受けていない5社にとって、とんでもない話。そんな債務保証に応じれば、会社に被害を与えるものとして、株主代表訴訟を 受ける恐れがあると猛反発。電力業界は真っ二つに割れているという。仲間意識、ムラ意識の強いこの業界でこうした対立が起きるのは、過去に例のない異常事 態だ。

今こそ原子力政策全体の改革を断行すべきとき

 国民の立場から見れば、原電が破綻しようが、紙くずになる原電株の償却で電力会社の収益が落ち込もうがたいした問題ではないだろう。

 しかし、原電が破綻し、燃料プールの冷却や使用済み燃料の中間貯蔵・最終処理、原子炉の廃炉などに責任を持つ主体が無くなるのは、福島第1原発事故並みの惨事と被害を生みかねない問題であり、絶対に放置できない深刻な事態だ。

 しかも、原電の東海第2、敦賀第1、同第2はすでに述べたように、廃炉への道程を速やかに決定して、その作業に着手する以外の道がなさそうな原発である。

(5)

 例えば、原電の破綻処理に際して、株主に一定の負担を求めたうえで、使用済み核燃料の処理や廃炉事業を、六カ所村などで進める再処理事業などと統 合し、国の事業として継承。それを、今後、相次ぐと見られる原発の廃炉のモデルケースとする決断をすべき時と言わざるを得ない。

 ところが、安倍政権は、この問題ばかりか、東電国有化の構造的欠陥の見直し問題も先送りする構えだ。紙幅が限られているので詳細は省くが、これ は、昨年11月に、東電自身が破綻処理のリスクも承知で、現行の国有化・救済スキームの不十分さを指摘して、その見直しを求めていた問題である。放置すれ ば、数10兆円、数100兆円の国民負担にも繋がりかねない問題だ。

 興味のある方は、以前に、このコラムで触れているので、そちら(『国営東電が認めた2次破綻リスク! 原発事故被害者も免れない理不尽な国民負担を強いる前に、自らが賠償の無限責任を全うせよ!』http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34026 2012年11月13日付)を参照して頂きたい。

 昨年の総選挙でマニフェストを打ち出す以前は、自民党は、各原発の安全性を厳格に調査したうえで、存続させるものと廃炉にするものを峻別するよう、当時の民主党政権に要求していたはずだ。

 今こそ、民主党政権時代のように国民に耳触りのよいことだけを言って、不都合な真実を隠すのをやめて、最終処分まで含めた核燃料サイクルなど、原子力政策全体の改革を断行すべきではないだろうか。

 ひとたび矛盾に満ちたパッチワークに手を染めれば、自らの手でそれを正すのは困難なだけに、今が正念場のはずである。参議院選の勝利という党略に固執しない決断を、安倍首相に望みたい。

著者:町田 徹
『東電国有化の罠』
(ちくま新書、税込み798円)
重版決定!

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