この国と原発:第1部・翻弄される自治体/5 最終処分場問題に揺れる北海道・幌延町
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この国と原発:第1部・翻弄される自治体/5 最終処分場問題に揺れる北海道・幌延町
毎日新聞 2011年08月24日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20110824ddm002040034000c.html
◎全文転載
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◇交付金20億円、消えぬ誘惑
使用済み核燃料から出る「核のゴミ」である高レベル放射性廃棄物。いまだ最終処分地は決まらないが、その貯蔵研究施設建設に80年代、全国で唯一名乗りを上げた北海道幌延町が6月、「原発マネー」を巡って揺れた。
建設計画は住民や周辺自治体の反対で頓挫し、放射性物質持ち込みを禁じる協定を町、道、事業者の3者で結んだ。今は処分技術を研究する日本原子力研究開発機構の「幌延深地層研究センター(深地層研)」が建つ。
6月16日の町議会。宮本明町長は経済産業省資源エネルギー庁が公募している最終処分場建設へ向けた「文献調査」について、「これから検討する課題」と答弁し、波紋が広がった。
深地層研があることで、町には年間1億円超の電源3法交付金が入る。文献調査を受け入れると、さらに年 間10億円を限度に最大20億円の交付金が得られる。財政規模四十数億円の町には魅力的だ。町長は町民の批判を受け発言を撤回したが、「将来、深地層研を 有効利用した関連施設の誘致が考えられる」と含みを持たせた。
(2)
協定は、深地層研を最終処分の事業主体に譲渡・貸与することを禁じている。だが、処分事業主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は昨年、事業 報告書で「深地層研で今後、共同研究を検討中」と記載(市民団体などの抗議で後に削除)。エネ庁も文献調査について「協定があるからといって北海道を除外 することはない」と説明する。
深地層研が7月に開いた住民説明会。住民からは「福島の事故も収束できないのに、10万年も保管する最終処分の安全性を保証できるのか」など追及が相次いだ。だが、国や事業者の間には、最終処分場事業を進めたいとの思惑がちらつく。
一方、使用済み核燃料の再処理工場と一時貯蔵施設を抱える青森県六ケ所村。県は「青森県を最終処分場にしない」との確約書を国と交わし、村も「約束は必ず守ってもらう」との立場だ。ただ、既に大規模な施設がある村の空気は、幌延町とは微妙に違う。
ある村議は「どこにもできないんだからやむを得ないという気持ちの人はかなりいる」と明かす。
一時貯蔵施設は、高レベル放射性廃棄物を固めたガラス固化体1457本を保管する。建物はコンクリート 造りで、元村幹部は言う。「災害やテロに遭ったら被害は福島の比ではない。一時貯蔵であっても地下に施設を造る必要がある。国を守るため、そのまま最終処 分場になってもやむを得ないと思う」
(3)
住民を二分する論争を経て核燃料サイクル施設を受け入れ「国策」に未来を託した村。交付金と固定資産税で潤い、全4500世帯に23億円かけてテレビ電話を設置するほど財政は豊かだ。村商工会幹部は菅直人首相の「脱原発」発言に憤る。
「石油コンビナートや原子力船『むつ』など、国は何度もバラ色の計画を打ち出しては破綻させた。我々は 翻弄(ほんろう)されてきたんです。今度は核燃サイクルをやめろという話になるなら『じゃあ、ここにある廃棄物を持ち帰ってください』という強硬姿勢だっ てあり得ますよ」【横田信行、袴田貴行】=つづく
(毎日新聞・連載特集)
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