この国と原発:第1部・翻弄される自治体(その2止) 原発マネーが侵食<毎日新聞>
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この国と原発:第1部・翻弄される自治体(その2止) 原発マネーが侵食
毎日新聞 2011年08月19日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20110819ddm010040004000c.html
◎全文転載
(1)
■電源3法交付金
電力会社から徴収する電源開発促進税(電促税)を財源に、立地道県や市町村、周辺自治体に交付される。 電促税の概要を定めた「電源開発促進税法」▽交付金について定めた「発電用施設周辺地域整備法」▽交付金を支出する特別会計について定めた「特別会計に関 する法律」−−に基づく制度。道県にも交付されるため、原発から離れた市町村や住民も一定の恩恵を受けている。
財源の電促税は、一般家庭からも電気料金に上乗せして徴収されている。税率は何度か変更され、現在は1000キロワット時あたり375円。1世帯あたりの月平均消費電力300キロワット時で計算すると、1世帯あたり月113円の負担となる。
交付金のほとんどは「電源立地地域対策交付金」。当初は使途が公共施設やインフラ整備に限定されてい た。立地市町村の庁舎が立派な造りで、スポーツや文化施設も充実しているのはこのためだ。維持管理に使えず、市町村の財政を圧迫したため、03年に使途の 制限が大幅に緩和された。現在は「公共用施設整備」と「地域活性化」に大別され、福祉などの「ソフト事業」にも使われている。
(2)
例えば、福島第1原発5、6号機のある福島県双葉町は09年度、ごみ処理や消防など広域事務組合の負担 金1億1910万円のうち1億1830万円▽食事の宅配や介護用品給付など高齢者福祉サービス5176万円のうち3520万円−−などに交付金を充てた。 住民生活に密着した分野にまで原発マネーが入り込んでいる形で、原発への依存が深く進んでいることの裏返しでもある。
家庭や企業に直接支給する交付金もある。「原子力立地給付金」と呼ばれ、立地市町村と周辺地域が対象。原発の出力が大きいほど多額になる。福島第1原発では1世帯あたり年8400円が振り込まれ、「電気料金の実質的な割引」(経済産業省資源エネルギー庁)が目的だ。
自治体への交付金にはさまざまな加算もある。プルサーマル受け入れ▽定期検査間隔の拡大▽運転開始後30年以上経過している−−などで、一言で言えば、住民が不安になる条件を引き受けるほど高額になる。
■固定資産税
原発運転開始後は、発電設備の固定資産税が立地市町村の大きな収入源となる。使途に制限はなく、自治体 にとっては使い勝手がいい。ただ、発電設備は時間の経過によって価値が下がる「減価償却資産」のため、税収は年々減り、5年後にはほぼ半減する。原発は耐 用年数が15年間と財務省令で定められ、16年後以降は最低限度額(最初の評価額の5%)に対してしか課税されない。
(3)
原発立地自治体でつくる「全国原子力発電所所在市町村協議会」(全原協、事務局・福井県敦賀市)のモデ ルによると、立地市町村には建設費4000億円の原子炉1基で、初年度は35億円余りの税収があるが、耐用年数経過後は1億円余りになってしまう。実際に は30年を超えて運転している原子炉もあり、全原協は毎年、法定耐用年数の延長を国に要請している。
■寄付
電力会社から直接自治体にもたらされる原発マネーもある。
新潟県柏崎市の「柏崎・夢の森公園」は、里山を復元し、研修施設などを備えた約30ヘクタールの公園。 「『持続可能な暮らし方』を実践するためのモデル作りと情報発信」(同公園ホームページ)を目指しているという。この公園は東京電力が97年、柏崎刈羽原 発の全号機完成を記念して造成を始め、07年に市に寄付した。総事業費60億円。うち18億2000万円は維持管理費として現金で寄付された。ハコモノと 維持費をそっくり東電がプレゼントした形だ。
四国電力は伊方原発建設の際、交付金制度ができる直前の3年間、愛媛県伊方町に計57億円寄付した。寄付が交付金と同じような役割を果たしていた形だ。
(4)
現在でも、交付金代わりになっているケースがある。電力10社で構成する電気事業連合会(電事連)は今 年3月、海外から返還される低レベル放射性廃棄物の受け入れに伴い、青森県が出資する財団に2年間で総額10億円を寄付することを決めた。最終的には交付 金対象外の県内25自治体に配分される。
億単位の寄付が匿名で行われることも多い。交付金制度には本来、こうした不透明さを払拭(ふっしょく)する狙いもあった。電源3法が審議された74年5月の衆院商工委員会で中曽根康弘通産相(当時)はこう述べている。
「寄付金というような場合はややもするとルーズで恣意(しい)的な性格があります。そういう面から見まして、私は交付金というような折り目筋目を正したやり方でやるほうが筋としてはいいんじゃないか」
その後30年以上、脈々と寄付は続いている。
■核燃料税
原発を抱える自治体が、運転中の原子炉内の核燃料を対象に電力会社に課す地方税。福井県が76年、安全 対策や地域振興などを目的に初めて創設し、現在は原発のある全13道県が導入している。核燃料の価格に対して12〜14・5%の税率を課している。これま でに6700億円余りが13道県にもたらされた。福井県では今年7月、停止中の原発にも課税することで、実質税率が全国最高の17%となる新条例が成立し た。
(5)
使い終わった核燃料にも重量単位で課税する「使用済み核燃料税」もある。市の独自課税で、新潟県柏崎市と鹿児島県薩摩川内市が03年から導入。燃料の使用中は県が、原子炉から出されたら市が取る形となる。
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■自治体に流れた「原発マネー」総額(判明分)
電源3法交付金総額 9152億8300万円
道県の核燃料税 6749億6820万円
原発に伴う市町村税 8920億1299万円
電力会社からの寄付 530億3814万円
合計 2兆5353億 233万円
※電源3法交付金総額は経済産業省資源エネルギー庁編「電源開発の概要 2010」より集計。電力会社からの寄付には都道府県への寄付も含む
■核燃料税を導入している道県の累計税収額
導入年度
北海道 139億 900万円 89
青森 1362億 円 93
宮城 158億5115万円 83
福島 1238億3581万円 78
新潟 522億7900万円 85
茨城 258億7000万円 78
静岡 370億2500万円 80
石川 93億2900万円 93
福井 1568億 円 76
島根 166億3324万円 80
愛媛 264億9400万円 79
佐賀 350億6000万円 79
(6)
鹿児島 256億8200万円 83
合計 6749億6820万円
※2010年度までの累計額
(毎日新聞・連載特集)
この国と原発 アーカイブ(2011年)
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