この国と原発:第3部・過小評価体質/4 耐用年数「限りなく」<毎日新聞>
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この国と原発:第3部・過小評価体質/4 耐用年数「限りなく」
毎日新聞 2011年11月01日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20111101ddm002040111000c.html
▼全文転載
(1)
「そちらの質問で初めて知りました」。10年12月、金属材料に詳しい井野博満・東京大名誉教授は、経済産業省原子力安全・保安院の課長補佐の回答にあっけにとられた。
質問したのは、九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町、75年運転開始)の老朽化を巡る問題。九電が1 号機の圧力容器について、09年時点の状況を分析したところ、炉心からの中性子を浴びることで材質がどの程度もろくなったかを示す「脆性遷移(ぜいせいせ んい)温度」が「98度」と国内最高を記録し、未知の領域に入った。この数値が高いと、事故時に圧力容器が損傷する恐れがある。93年時点の56度から一 気に跳ね上がり、九電内では「こんなに高いなんて」と驚きの声が上がったという。
原発の老朽化対策は新品への交換が原則だが、圧力容器は交換が難しい。九電は「(国も認める)規定で評 価した結果、損傷が起きる状態まではかなり余裕がある」と説明する。だが、規定が示す損傷の予測式は、定められた条件下での試算でしかなく、井野名誉教授 は「前提条件を変えたり、別の式で評価すると、それほど余裕はない」と話す。
そもそも予測式自体が改定を重ねている段階で、確定した式ではない。長谷川雅幸・東北大名誉教授(原子炉材料学)は「規定に十分な実績があるとはいえない。予想外の温度は何かの兆候かもしれない。慎重に対応すべきだ」と指摘する。
(2)
こうした「老朽化」を日本の原発関係者は「高経年化」と呼ぶ。「必要に応じて設備などを取り換えており、理論上、原発は限りなく寿命を延ばせる。老朽化することはない」(原子力安全基盤機構の資料)との理屈だ。
国内で原発建設が始まった60〜70年代ごろ、主要機器の耐用年数は30〜40年と想定されていた。だ が、原発の新増設が難しくなってきた90年代後半、通商産業省資源エネルギー庁(当時)は、60年運転も視野に長寿命化へかじを切る。30年目を迎える原 発は国に運転継続の認可を申請し、その後は10年ごとに申請する仕組みだ。
今、運転30年を超えた原発は福島第1原発の全6基を含め19基に上り、うち日本原子力発電敦賀原発1 号機など3基は40年を超えている。これまでの原発の歴史は「想定外」の連続だった。圧力容器内の隔壁や蒸気発生器など、設計時に交換を想定していなかっ た重要機器で、取り換えが必要になったケースは枚挙にいとまがない。
今注目されている課題の一つは、原発1基で総延長2000キロにも及ぶ電気ケーブルだ。絶縁体がもろくなって断線すれば、原発を制御できなくなる。全ケーブルの確認は不可能で、細いケーブルは現場で調べる方法すら確立していない。
原子力資料情報室の上澤千尋さんは「ボロボロだが何とか生き延びさせるという発想は、老朽化を軽視している」と批判する。
(3)
野田佳彦首相は就任会見で「寿命がきた原発は廃炉にする」と明言した。だが「寿命」の定義は定かでない。現在、関西電力美浜原発2号機が40年超の、四国電力伊方原発2号機が30年超の認可を求め、保安院の審査を受けている。=つづく
(毎日新聞・連載特集)
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