「北の山・じろう」時事問題などの日記

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経産大臣に指名したい男が言い続けたエネルギー政策<dot.(AERA×週刊朝日) 2011年7月>

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経産大臣に指名したい男が言い続けたエネルギー政策
(更新 2011/7/13 18:35)
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▼全文転載

 

鎌田 月刊誌「文藝春秋」7月号の「次の総理は」というアンケートで河野太郎と書きました。奇人変人なので、きっとなることはないと茶化しましたが。

河野 光栄です。ハッハハハハ。

鎌田 次の首相の課題は、日本の財政とエネルギー政策の舵取りです。この二つをやれる人は河野太郎だと思った。自民党にいながら、「原発はないほうがいい」と言いつづけるのは大変でしたか。

河 野 議論にならないんです。核燃料サイクルは整合性がとれない。辻褄も合わない。どうするのか聞いても答えが返ってこない。「あいつはうるせえから、 ちょっと外しておけ」みたいな扱いでした。青森県で、「この核燃料サイクルは整合性がとれませんよね」と言うと、自民党青森県連から、「除名しろ」と言わ れた。ただ、政策的な議論をして負けたと思ったことは、一回もなかった。

鎌田 エネルギー問題では民主主義が問われています。原発推進の人も、原発反対の人も同じ土俵で議論をすべきなのに、十数年前から、まともな議論をしなくなった。

河野 3・11のあと、私の顔を見た先輩議員に「やっぱりおまえの言ったとおり事故が起きたな」と言われた。私は、事故が起きる、起きないという話はしてません。核燃料サイクル原発について、一つずつ詰めて議論をしたかっただけです。
  山口県の上関町に原発をつくるという話があって、私は現場を見にいった。帰ってきたら、党内で「どうして行ったんだ」と言われた。反対運動をやっているお ばちゃんがいる祝島(いわいしま)は、岸信介さんが公職追放されたときに住んでいたそうです。かつて自民党の得票率9割を誇っていた。ちゃんと話を聞いて あげればいいと思って島に行っただけで、党内では「あの野郎、とんでもない」と言われた。

鎌田 政治家は生活している人たちの皮膚感覚から発せられる言葉を現地で聞いて、政策に反映することが重要です。

河 野 たぶん最初のころは、原発が必要だという人たちは現地に足を運んで、「国のために協力をしてくれ」と説得したはずです。それがいつの段階からか、「反 対派とは口をきかない」となった。会話もしないのは、やはり違うでしょう。私が祝島に行ったのは夜でした。建設予定地は島の真っ正面。威圧感もあるだろう し、原発ができたら、そこから出る温排水が海に流れる。ここの海産物を食べてくれるだろうか、という島のおばちゃんたちの心配は、とてもよくわかりまし た。なんでおばちゃんたちが反対するのか感じてあげないと、説得もできないと思います。

鎌田 原発には、使用済み核燃料を置くところがな いという現実があります。日本だけでなく世界中の問題です。それをモンゴルに持っていって処理しようなんて話が出ている。原発をつくるときも、お金のない 小さな町に、札束でほっぺをたたくようにして、原発をつくった。核のゴミの処理に困ると外国へ行って、札束でほっぺをたたくのでは、世界は納得しない。

河 野 有害廃棄物を輸出するのもバーゼル条約で規制されています。核のゴミを外へ出すのは文明論的にみても間違っている。日本にできない処理をアメリカが高 いカネをかけてやってあげるというなら議論の余地はあるかもしれませんが、日本で処理できないものをモンゴルで引き受けろというのは、乱暴です。まず国民 的な議論をすべきです。「こっそりやっちゃいました」というのでは、私は、経済産業省原子力問題を扱う資格がないと思います。

鎌田 ぼ くは、この国のエネルギー問題は大事だと思います。かつての清貧の思想みたいに質素に生活するのは、ぼくらの世代の中には魅力を感じる人もいるかもしれな い。でも、若者はかわいそう。元気な日本をつくる経済と、それを支えるエネルギーは大事です。原発をなくしていったときに、新しいエネルギーはどうしたら いいのか、河野さんなりの設計図はありますか。

河野 3月11日に事故が起きたわけですから、国内で新しい原子炉を建てるべきではないと 思います。原子炉の耐用年数は一般に40年と言われます。日本は1970年代から80年代に原子炉をかなり建てていますから、この10年、20年でかなり の原子炉が耐用年数を迎える。2050年には確実に原子炉はゼロになる。原子炉が減っていくスピードに合わせて、再生可能エネルギーを増やしていこうと考 えています。ただ、あまり前倒しを最初から考えるべきではない。
 まず省エネを確実にやることです。電灯をLEDに替えるとか、冷蔵庫やエアコン を買い替えると節電できます。省エネで、おそらく3割、4割カットできる。それから再生可能エネルギーを、地熱、太陽光、風力、小規模水力、バイオ、いろ いろありますが、とにかくこれを増やしていくと明確に政治がシグナルを出す。再生可能エネルギーの買い取り制度を入れ、投資もしやすくします。研究開発も 進めていきます。2050年に原子力がなくなるときには、再生可能エネルギーで電力を100%カバーするのが理想です。相当いけるはず。足りない部分は、 化石燃料のなかでクリーンな天然ガスで補っていく。それが、私は常識的な選択肢だと思います。

◆発電と送電の分離は早く進めるしかない◆
鎌田 この数年は、天然ガスで賄えそうな感じはしますか。今の日本経済を支えられますか。

河 野 天然ガスは、埋蔵量が相当あります。もちろん発電コストは上がりますが、そのコストは吸収をしていかなければいけない。このままウランと石油に依存を していけば、両方とも価格が上がっていく。将来のエネルギーコストを考えれば、再生可能エネルギーを増やす投資を早くやるべきだと、私は思います。

鎌田 電力会社の地域独占や、発電と送電の分離に関しては、どう考えてますか。

河野 発電と送電の分離は当然やっていくべきもので、送電網を別建てにして、それに火力だろうが、太陽光だろうが、どんどんのせていく。発電・送電の分離は大前提です。電力会社の地域独占もやめる。電力産業を普通の産業に近くしていかなければなりません。

鎌 田 資本主義としては、それが自然体ですよね。よその国はみんなそうやって競争しながら、それでも電力会社は、経営も非常にいい会社が多い。それに対し て、日本は電力社会主義です。電力会社にとっても、自由な競争のなかでエネルギー問題を解決するほうがよかった、という時期がくると思います。なぜ原子力安全神話ができたのでしょうか。

河野 立地をお願いするときに、「絶対だいじょうぶだ」と言ってお願いをしていたと思います。そういう ところから本音が言えなくなった。前の福島県知事の佐藤栄佐久さんは、国はいろんなことを約束するけども、実現するかというと、「いや、これから検討しま す」と言うんだ--と、ずいぶん怒っていました。都合のいい口約束はするけれども、張り子の虎です。

鎌田 学者の世界も、原子力村をつくるんじゃなくて、反原発の人たちと同じテーブルで、政治家も含めてもう一回議論をしたほうがいい。

河 野 政治家が先頭に立たなきゃいかんと思います。経産省の人と話をすると、最後は東大の先生に「これでどうでしょうか」と聞きに行く。その答えをお墨付き みたいに言うけれど、振り返ってみると、東大の先生は原子力村の人だから反対するはずがない。全員有罪ですよ。政治家を筆頭に学者も役人も。

鎌田 ぼくもチェルノブイリに20年通いつづけて状況を見てきた。ぼくは河野さんにかなり近い話をしつづけているけど、命を張ってでも止めなくちゃという意識はなかった。雇用を考えれば、簡単に原発は止められないと思った。多くの人に罪があります。

河野 もう一度どうするかをテーブルにのせて議論すべきです。3月11日で安全神話がおとぎ話とわかりました。マスコミも、今までは、電力会社から広告宣伝をもらって何も言えなかったけど、カミングアウトして、ちゃんと議論するようになった。

東電賠償スキームはルールに反している◆
鎌田 今後のエネルギー政策をどうしたらいいか。プロセスをちゃんとすれば、国民の多くの納得は得られます。完全な正解はないにしても、正解に近づけられる可能性はある。

河 野 まあまあの正解をわれわれも国民の多くの皆さんに納得していただく。100かゼロということは絶対にありませんから。鎌田 ぼくは、旧政権の自民党が やってきたことが今回の日本の国難のかなり大きな引き金になったと思います。それに新政権がいくつもの失敗を重ねて、現状をつくりだした。
 両方が協力して国民のために強い基盤の政権をつくって、やれるだけのことをやる。そのあとは、2大政党に分かれる。こんなかたちがいいと思う。そういうことは、できるのですか。

河野 本当は、3月11日の直後に、「与党だ野党だと言っている場合じゃないから一緒にやろう」とすべきだったと、私は思います。これから少し局面が変わるでしょうから、「与党だ野党だ」としばらく言わずに、復興とエネルギー問題をどうするか決めるべきです。

鎌 田 こういう状況になっているのに、政府の国家戦略室から出てきた「革新的エネルギー・環境戦略について」という文書は、何を言おうとしているのかわから ない。結局、最後に原発推進を狙っている。つまりエネルギー問題をやろうとすると、自民党も、民主党も、かなり血が出る。日本の経済の立て直しも、政権は 傷つきます。だから、二つの問題は1年ぐらいかけて、一気にまとめてもらいたいなと思います。

河野 それは政治の責任でまとめますから見 ていてください。皆さん、どっちがいいと思うか考えて、とにかく結論を出しましょう。そこから選挙にしないと。今回の文書には、なんかわけもわからず原発 推進が盛り込まれています。結局、これを入れるために、この文書を出したのが見え見えです。エネルギーの議論をするなら、もっと民主的にやろうよと思って も、推進してきた役所は、今までの手法でやってくる。

鎌田 原発事故の賠償問題で、今取りざたされているようなスキームを河野さんはどう考えてますか。

河 野 私は、今のスキームはまったくだめで、辻褄が合わないと思います。東京電力債務超過にはしないけど、国民負担もしませんという。そうなると、どうな るのかわからない。まずきちんと、被災した方に賠償を、仮払いでも何でもいいからお支払いをする。それをやりながら、東電に、いくら賠償金の負担をしても らわなきゃいけないのかを決める。当然、福島第一の廃炉もやらなきゃいけません。間違いなく東電債務超過で、立ち行かなくなる。そこは法律的にルールが あるわけですから、それに則って、破綻処理をすべきです。賠償金の分は国民にご負担をしていただくかもしれません。税金になるのかどうかわかりませんが、 この部分はどうしても足が出るからご負担くださいと。そのかわり電力供給をきちんとつづけると同時に、政府が入って一時国有化をして、送電部門と発電部門 を分ける。最初は持ち株会社に双方をぶら下げて、次に完全に分離しても問題ありませんよね、という確認をして部門売却をしていく。細かくして、「どうぞ 買ってください」と売却をして、戻ってきたお金で、うまくいけば国民負担を少し穴埋めできる。粛々とやればいい話だと思います。株主を守ろうとか、金融機 関を守るみたいなおかしなスキームをつくる必要はない。

鎌田 今の賠償のスキームは資本主義のルールに反している。こういう状況になったときには資本主義のルールに徹したほうが、世界は納得します。国民も納得すると思います。
  ぼくは、この10年間ぐらい、政治家から心があったまるような演説を聞いたことがない。いつも言い訳ばかり。国民は心が冷えてますから、日本中の国民がみ んな「ぼくたちの国はどうなっちゃうんだろう」と思っています。こういうときに演説がうまく、悪いしがらみを断ち切れるリーダーが必要です。菅さんはメッ セージ力が弱い。次の首相は世界に向けて、日本に対する不信感みたいなものを払拭できるメッセージ力をもったトップが必要だと思う。
 ところで、河野さんが奇人とか変人と言われる理由は何なんですか。

河 野 原子力問題でも年金問題でも一人だけ違うことを疑問としてぶつけているからでしょうか。それでも答えが返ってこない。年金だったら何を聞いても 「100年安心だ」と言うだけで、そりゃ100年安心はいいけれど、中身はカスカス。「ちゃんと議論してください」と言っていると、変人扱いされる。

鎌田 浜岡原発は停止しましたが、原子炉の廃炉のプロセスは、どう決めるのでしょうか。

河 野 浜岡のように、明らかに地震に対して脆弱なものは、安全基準に達しないから止めます。ようするに、そういうルールをつくって、そのとおりにやるのが大 事なんです。原子炉も40年までは運転していいけど、40年で廃炉にしなさいといって、年代順に廃炉にしていく。あとは、どういう安全ルールをつくるか。 そのルールにしたがって一定の線を引いて、その線を超えた安全ではない原子炉は、40年たたないけど止めなさいとする。安全に関する専門家のルールを政治 が適用していくことだと思います。

鎌田 ドイツが22年までに原子力をやめることが閣議決定をされたから、いずれ本決まりになりそうで す。ドイツは経済的な世界戦略があると思います。日本も、経済的な競争でドイツに打ち勝つには、新しい自然エネルギーをつくりだして、それを日本の次の貿 易のいちばん核にするんだ、というぐらいに考える。そこに投資や研究費をつけたほうが、ぼくはかえって日本を救うことになるんじゃないかと思います。

河 野 ドイツは10年間、自然エネルギーを増やしてきました。だから、だいたいの手応え感というのが、ドイツにはある。日本は、発電量に占める自然エネル ギーの比率が1・1%ですから、ほとんどやってこなかった。それでその感覚がつかめてない。太陽光ってどれぐらい増えるんだろう。風力ってどれぐらいいけ るのか。まだわからない。だから、10年やってみて、「これだけできるじゃないか」と。40年もかからないよ、ということになるかもしれません。

鎌田 救国内閣といったらいいのか、大連立なのか、まだわからないけど、民主党で首相になった人は、河野太郎経済産業相をさせたらいい。それだけで、この国は立ち直る可能性があると思うかもしれない。

河野 ああ、もうよろこんでやりますけどね。(笑い)  (構成 本誌・山本朋史)

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か また・みのる 1948年、東京都生まれ。諏訪中央病院名誉院長。91年に日本チェルノブイリ連帯基金を設立し、ベラルーシに20年間で医師団を94回派 遣し、約14億円の医薬品を支援してきた。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』など。ホームページhttp://www/kamataminoru.com
     *
こうの・たろう 1963年、神奈川県生まれ。衆議院議員。96年に初当選し、現在5期目。6月14日に発足した自民党の「エネルギー政策議員連盟」では共同代表を務める。著書に『私が自民党を立て直す』など


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