「北の山・じろう」時事問題などの日記

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崩れた一体改革 禍根残す社会保障棚上げ(6月16日)北海道新聞 社説

北海道新聞 社説
崩れた一体改革 禍根残す社会保障棚上げ(6月16日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/380415.html

 懸念していた通り「一体改革」は「社会保障棚上げ・増税先行改革」に姿を変えた。

 民主、自民、公明の3党は社会保障と税の一体改革関連法案の修正で合意した。

 消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる。

 一方で、年金など社会保障制度は「改革国民会議」で継続協議する。

 民主党が看板政策に掲げてきた「最低保障年金制度創設」などは事実上白紙となった。与野党が談合し、社会保障改革を先送りして増税を決める政治の姿にあぜんとする。

 社会保障の全体像を示して財源を求めるのが筋だ。それを先延ばしするなら増税も棚上げすべきだ。

*許されない増税先行

 増税さえ合意できれば社会保障についてはこだわらない―。野田佳彦首相はそんな思いだったのではないか。わずか1週間でまとめた3党合意の経緯を見るとそう考えざるをえない。

 2段階で増税することで自民党と大筋合意すると、社会保障制度は譲歩するよう民主党内に指示した。

 この結果、一体改革は崩壊した。

 岡田克也副総理は国会で「国会に提出している7法案(の修正)を各党と議論しており(社会保障を)先送りしてはいない」と強調した。

 子ども・子育て新システムなどを盛り込んだ7法案は残るので一体改革は維持していると言うのだろうが、この説明は無理がある。7法案は一体改革の一部でしかないからだ。

 政府が2月に閣議決定した一体改革大綱は、新たな最低保障年金制度の法案を13年に国会提出することなど社会保障全体に言及している。

 法案提出していなくても年金制度などの根幹がいったん白紙になるのであれば一体改革は崩れたことになる。そもそも年金の将来像などを示さないまま増税法案を先行させたことが問題だ。

 消費税の増税分5%はすべて社会保障に充てると言うが、子ども・子育て新システムなど新たな政策に振り向けるのは1%分にすぎない。残り4%は現行政策の財源不足を穴埋めする。

 年金制度は今後どんな形になるか分からない。これでは「社会保障財源が足りなくなったので増税する」と言うのと同じだ。

 社会保障改革を増税の隠れみのにしていると野党だけでなく民主党内からも批判が出るのは当然だろう。

 民主、自民、公明3党は社会保障制度の理念も具体策も隔たりが大きい。国民会議をつくってもまとめるのは容易ではない。暮らしの安心を描かないままの増税は許されない。

*玉虫表現は国民愚弄

 3党合意では今国会での後期高齢者医療制度廃止も棚上げされた。

 09年の衆院選で民主党が掲げたマニフェスト政権公約)は総崩れと言っていい。

 その一方でマニフェストになかった消費税増税を野党と組んで強引に進めようとする。

 民主党は衆院選で「無駄をなくせば財源は生み出せる」と訴えた。当時の鳩山由紀夫代表(元首相)は任期中の4年間、消費税増税をしないと表明した。

 政権交代に希望を託して民主党に1票を投じた有権者は与野党の増税合意に戸惑うばかりではないか。

 実際の増税は衆院の任期後だという野田首相の釈明は、民主的な手続きを軽視しており認められない。

 3党合意は社会保障について各党の考え方をつぎはぎした内容だ。

 自民党が「民主党マニフェストの撤回」と主張する一方で、民主党も「公約の旗は降ろしていない」と都合よく説明できる。国民生活に関わる重要な課題だ。玉虫色の表現で愚弄(ぐろう)するのはやめてほしい。

*行革はどこへ行った

 置き去りとなったのは社会保障政策だけではない。

 野田首相は09年夏に出版した「民主の敵」(新潮新書)で、行政改革を断行しないで消費税増税を安易に認めると「そこで思考停止し、今のからくりの解明はストップしてしまう」と警鐘を鳴らしていた。

 今まさに首相が危惧した状況を自らつくり出しているのではないか。

 一体改革大綱は消費税増税の前提として公務員総人件費削減や特別会計改革、国有資産見直しなど「自ら身を切る改革」を実施すると明記している。

 国家公務員人件費は平均7・8%削減したが、2年間限りで目的も復興財源だ。民主党が旗印とする「地域主権」の柱となる国の出先機関改革も進まず無駄削減はほど遠い。

 このまま増税を決めれば行革への意欲も衰えるだろう。

 首相は21日会期末の今国会で関連法案の成立を目指している。民主党小沢一郎元代表に近い議員らは造反を辞さない構えだ。

 党内の主導権争いとするのではなく、一人一人の議員が選挙で託された民意や国民との約束を果たしているかどうかを考え、法案の取り扱いを党として再考すべきだ。