【私説・論説室から】2012年10月8日 ロシアと尖閣問題
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【私説・論説室から】2012年10月8日
ロシアと尖閣問題
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▼全文引用
尖閣諸島問題で中国との対立が深まるなかで、目を離せないのが北方領土問題でわが国と溝の深いロシアの出方だ。プーチン政権は音無しの構えだが、報道関係者や学者の訪ロ団の一員として先月訪れたモスクワで、ロシア側の本音の一端に触れる機会があった。
政府関係者や識者らは紛争の長期化を懸念し、ロシアは尖閣問題には関与しない、との見方を異口同音に強調した。「北東アジア情勢の不安定化や、軍 拡競争を招きかねない」。外交アカデミーのバジャーノフ学長はそう指摘し、極東・シベリア開発計画の推進に悪影響が及ぶことを懸念する政権の見方を代弁し た。
印象的だったのは、一部の元政府高官らが中国への警戒心を隠そうともしなくなったことだ。国際関係大でのシンポジウムで報告した元外交官は「中国 は尖閣諸島だけでなく南クリール(北方領土)やサハリンも自国領だと考えている」と述べ、北方領土問題は中ロ問題にもなる可能性があるとの珍説を真顔で述 べた。
千島と中国はもとより無関係だが、エリート層の一部にある拭いがたい対中不信を見事に示したといえるだろう。強大化した中国がいつの日か、帝政ロ シアに割譲された極東などの返還を要求する。これこそロシアにつきまとう悪夢だ。戦略的連携関係にあるが、一皮むけば相互に疑心暗鬼の二大国の狭間(はざ ま)でどう動くか。日本外交の構想力が問われる。 (常盤伸)
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