原発事故関連死(12)失望から強い憤りへ 医師対応に募る不信{福島民報(連載記事)
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「原発事故関連死」
原発事故関連死(12)失望から強い憤りへ 医師対応に募る不信
2013/03/05 12:06
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/03/post_6426.html
▼全文転載
このままでは病院をたらい回しにされかねない。「東京に母を避難させたのに、こんなことで死なせるわけにはいかない」。東京都練馬区の篠美恵子さん(65)は、郡山市の避難先から引き取った母・山本ハツミさん=当時101歳=の診療を渋る医師をなじった。
「診てもらえないなら、福島に母を連れて帰るしかないわね」
医師への失望は、強い憤りに変わっていた。衰弱していく母を見ていられなかった。
問答の末、医師は「それじゃあ」と言って、渋々診察を始めた。結果は心筋梗塞と肺炎。心臓の血管がふさがるか、細くなるかして血流量が少なくなっている可能性が高いということだった。
食事も歩行も排せつもできた母。「双葉町の老人ホームを追われ、避難先を転々とした疲労がたたったのか」。美恵子さんは天を仰いだ。同時に「何とかしてもらいたい」とすがる思いだった。
だが、医師は静かに告げた。「この病院にはカテーテルの設備がない。他の病院に行ったほうが良い」
総合病院で心臓カテーテルができない? そんなことがあるのか-。他の病院に行かせるために、心筋梗塞と診断したのではないか。美恵子さんは診断そのものさえ疑うような気持ちだった。「カテーテルの治療はしなくても結構です」と転院の打診を断った。
ハツミさんの容体は回復せず、即日入院することになった。用意されたのは1日2万500円かかる個室。医師からは相部屋は満杯で個室しか空いてないと説 明された。美恵子さんと夫の常雄さん(65)は個室を承諾したが、「母は被ばくの疑いを持たれて隔離されたんだ」と思った。
福島民報社の取材に対し病院は「看護日誌には当時の入院患者総数の記載しかなく、なぜ個室を使用したのか記録にない。男性医師は既に退職している。病室の稼働状況と患者の容体などを医師が総合的に判断したのだと思う」としている。
ハツミさんはがらんとした個室のベッドで目を閉じていた。寝顔を確認した美恵子さんらが自宅に戻ろうとしたところ、男性医師から声を掛けられた。
「このまま(ハツミさんを)引き取りに来ない、なんてことはないですよね」
ため息しか出なかった。「悔しいやら情けないやら。でも、何とか母を助けてもらいたかったから...」。何も言い返さずに足早に病院を後にした。
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