「北の山・じろう」時事問題などの日記

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この国と原発:第2部・司法の限界/6止 訴訟どう変わる<毎日新聞>

毎日新聞
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この国と原発:第2部・司法の限界/6止 訴訟どう変わる
毎日新聞 2011年09月22日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20110922ddm002040081000c.html
▼全文転載

(1)
 ◇判断厳格化は必至

 「実際の原発事故を目の当たりにすると、認識は甘かったと思う」。高浜原発訴訟の1審で裁判長を務め、93年12月の判決で原告の運転差し止め請求を棄却した海保寛弁護士(74)は、テレビに映し出された福島第1原発事故の光景に言葉を失ったという。

 当時は、海外の原発事故の書籍を読みあさって訴訟に没頭した。「老朽化の激しい蒸気発生器の細管が破断 すれば、炉心が溶けて放射能被害が出る危険が大きい」とする原告側の主張に対し、判決では「細管破断が炉心溶融(メルトダウン)に至る危険性があるとは認 め難い」とした。

 福島第1原発1号機では東日本大震災発生からわずか16時間で、炉心の核燃料の大部分が溶融したとみら れている。高浜原発訴訟で争われた内容とは異質だが、海保弁護士は「原発事故の影響の大きさは観念的には分かっていたが……。原発がここまでもろいとは思 わなかった」と衝撃を隠さない。

 原発訴訟に関わった法曹関係者の間では、福島事故が今後の原発訴訟に変化をもたらすとみる人が多い。

(2)

 福島第2原発3号機訴訟の2審(原告敗訴)で裁判長を務めた鬼頭季郎弁護士(70)は「原発の安全運転に関する行政の基準が厳しくなるのに伴い、 司法判断も厳格になっていくのは間違いないだろう」と推測する。女川原発訴訟の1審(同)に関わった塚原朋一弁護士(66)は「『1000年に1度の巨大 津波』をどう想定に織り込んでいくのか。今後、審理はますます難しくなる」とみている。

 原発訴訟に的確に対応できるよう、工夫を求める声もある。

 専門性が高いとされる税金や知的財産に関する訴訟では、関係省庁から一時的に裁判所に籍を移し、裁判官をサポートする「調査官」が活躍する。福島第2原発1号機訴訟の2審(同)に関わった木原幹郎弁護士(72)は「原発専門の調査官を設けてもよいのではないか」と話す。

 裁判官の大半は法学部出身。女川原発訴訟1審判決で陪席裁判官を務めた六車明・慶応大法科大学院教授(59)=環境法=は「理系出身者がもっと裁判官になってもいい」と指摘する。「裁判官の研修でも、原発問題を学ぶ機会を設けてはどうか」と提案した。

 最高裁によると、大震災以降に起こされた原発関連訴訟は少なくとも20件に上る。訴訟に携わってきた原告側の関係者は、今こそ司法が原発に厳しい目を向けるべきだと期待を込める。

(3)

 福島第2原発1号機訴訟の原告で、今も避難生活を強いられている早川篤雄さん(71)は「本当は司法の責任を果たせなかった裁判所を訴えたいくらい」と言いつつも、「憲法の番人としての本来の役割に目覚め、国民の命を守ってほしい」と望む。

 志賀原発2号機訴訟の1審で住民側を勝訴に導いた元弁護団長の岩淵正明弁護士(61)も訴える。「福島の状況を見ても『想定外だから仕方がない』というのか、『想定外でもあってはならないことだ』というのか。裁判所は被害を直視しなければならない」=おわり

      ◇

 この連載は伊藤一郎、和田武士、野口由紀、篠原成行が担当しました。

(毎日新聞・連載特集)
この国と原発 アーカイブ(2011年)
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