卓上四季 依存症 <北海道新聞2014-2>
北海道新聞
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卓上四季 依存症
2014・2・27
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▼全文転載
<喫 (の)む者が阿片(あへん)を見棄てることは極めて稀(まれ)だ。阿片がすべてをめちゃめちゃにして、喫む者を見棄てることはよくある>。ジャン・コ クトーは、そう書いている(堀口大学訳「阿片」求龍堂)▼詩人、劇作家、小説家、映画監督…。どの分野でも天才の名をほしいままにしたコクトーは、アヘン 中毒治療のため入退院を繰り返してもいた。実体験から絞り出された冒頭の言葉は、「依存症」の本質を鋭くついている▼そこから滴る“おいしい汁”を一度で も味わったことのある人たちにとって、「核エネルギー」もまた「アヘン」のごときものなのか。そうでも考えなければ、政府の原発への異常な執着、耽溺(た んでき)、偏愛ぶりは理解不能だ▼安倍晋三政権が示した「エネルギー基本計画案」なるものは、原案にあった「ベース電源」との記述を「ベースロード電源」 と言い換えただけで、「原発と縁は切れぬ」との宣言に変わりはない▼「原発依存度を可能な限り低減させる」とは、「ゼロにはしない」というメッセージでも ある。目標や期限を定めずに、「いつかはやめよう」などといっていて、依存から足を洗えるはずもなかろう▼制御不能に陥った原発の恐ろしさをたった3年で 忘れるのか。たとえ困難であっても脱原発は挑戦しがいのある挑戦だ。愛する故郷をこれ以上<めちゃめちゃ>にされたら、私たちは生きる場を失う。
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