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ドイツのエネルギーシフト<【河野太郎公式ブログ】 ごまめの歯ぎしり 2013年11月21日>

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ドイツのエネルギーシフト
2013年11月21日 12:26
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▼全文転載

ドイツ出張報告

ドイツのエネルギーシフトは、一朝一夕に実現したものではなく1970年代から積み重ねてきた長い歴史の上に成り立っている。

1970年代には、オイルショックの経験からドイツでは原子力発電が積極的に推進された。原発に異議を唱える者は少数であり、国民の大多数は原子力政策を支持していた。

しかし、1980年の世論調査ではすでにエネルギーヴェンデ(エネルギーシフト)という言葉が使われ始めている。

ドイツで原発推進の流れを転換させたのが1986年のチェルノブイリ原発の事故であった。ドイツも原発事故のフォールアウトにさらされ、ドイツ国民の原発に対する考え方が変わりはじめ、次第にドイツ国民の多数が脱原発を支持するようになっていった。

ドイツでも民意の変化になかなか政治がついていけなかった。CDU/CSUとFDPの連立政権原発を推進し続けた。その中で脱原発を唱える緑の党が国民の支持を増やし、国政にも参画するようになっていった。

チェルノブイリ事故から12年を経て、1998年に国民の過半数の意思が議会に反映された。SPD/緑の党の赤緑連立が成立し、脱原発及び再生可能エネルギーの積極的な推進が始まった。

事業者との脱原発交渉が始まり、2000年に19の原発を2022年までに保証なしで稼働停止することが合意され、2002年に議会で法制化された。

原発停止に伴い、化石燃料の使用が増えないようにドイツ国内での再生可能エネルギーの普及支援策が導入され、気候変動に対する対策として始まったEUの排出権取引もこれを後押しした。

しかし、その後、脱原発に対する揺り戻しが起こり、再び議会の過半数を握ったCDU/CSU/FDP政権は、国民の過半数が依然として脱原発を支持していたにもかかわらず、2010年12月に2040年代まで原発稼働を延長することを決めた。

ところがそれから間もなく、2011年3月11日に福島第一原発事故が起こり、ドイツは再び脱原発路線に舵を切る。

フクシマ直後に行われたバーデンビュルテンベルク州の選挙では、当初優勢と言われたCDUが事故直後から支持を急速に落とし、緑の党がSPDと組んで政権を奪取し、緑の党の州首相が誕生した。

電力事業者やガス事業者をはじめとする公益事業者の連合体BDEWは、2011年4月8日に、政府に対して脱原発路線に戻ることを要請する決議を採択した。電力事業者もこの決議に反対せず、棄権した。

今回の脱原発合意は、すべての政党が合意したものであり、前回と違って安定した合意である。原発を推進してきたCDUでさえ、党内にまだわずかに脱 原発に反対する声があるものの脱原発かどうかという議論は終わり、いかにエネルギーシフトを達成するかという手段の議論になったと認識している。

再生可能エネルギーの普及はかなり早く進んだ。2012年には太陽光4.2%、バイオマス6.1%、風力8.1%、水力3.5%、その他0.8%、合計して約23%まで再生可能エネルギーの発電量が伸びた。

2013年1月の世論調査では、ドイツ国民の90%がエネルギーシフトは重要であると答え、重要でないという回答は9%にすぎない。しかも、エネル ギーシフトがうまくいっていると考えるドイツ国民は40%にとどまり、56%がエネルギーシフトのペースが遅すぎると考えている。

当面の再生可能エネルギーの発電量の目標は、2030年までに50%、2050年までに80%だが、現在の連立交渉の中でもエネルギーシフトに関してさらに高い目標を掲げて、それを加速する方向で議論されている。

他方、従来型の発電所を保有する電力事業者が、連立交渉中の両陣営に従来型の発電所を維持するための補助金を求めている。補助金なしでは人員削減をせざるを得ないと電力事業者は主張している。

エネルギーシフトのため、当初はすべての再生可能エネルギーへの投資は同様に扱われ、20年間の固定価格での買い取りが行われた。

その結果、ドイツ国内では、再生可能エネルギーの中でも太陽光と風力の二つが適していると結論づけられるようになった。

水力発電はすでにドイツ国内では量的な限界に達し、バイオマス発電をこれ以上ドイツ国内で拡充しようとすると食糧生産あるいは自然保護と相反することになる。地熱発電はドイツ国内では限定的な投資しか行われなかった。

風力は、ドイツではヨーロッパの他の地域ほど適してはいないが、それでも十分拡充の余地があり、同様に太陽光も南欧ほどの日照時間はないが、同様に今後、拡充していくことができると考えられている。

今後のドイツのエネルギーシフトは、太陽光と風力を中心に進んでいくことになる。将来的には太陽光で低電圧/中電圧への供給を行い、風力で中電圧/高電圧への供給が行われることになるだろう。

ドイツ国内で、ここまで再生可能エネルギーを増やすのは技術的には難しくなかった。しかし、太陽光と風力を中心に、再生可能エネルギーの発電量が25%に達した今日、ドイツはエネルギーシステムそのものを変換する必要に迫られている。

ドイツのエネルギーシフトを支える太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーにはいくつかの特徴がある。

一、 太陽光や風力は、需要に応じてではなく、天候によって変動する。
二、 太陽光と風力は、極めて出力変動が大きい。
三、 太陽光と風力は、初期投資はかかるが、運転費用がほぼゼロである。

例えば、ドイツ国内には33GWの太陽光発電設備容量があるが、天候によって出力がゼロから25GWまで短時間で変動する。風力も同様に、天候に応 じて出力が変動する。その結果、従来型の発電所の出力調整も激しいものになる。実際に昨年のある一日に、従来型の発電所で65,274MWの設備容量が朝 方に必要になり(その時点で必要な発電容量の98%)、その後、太陽光と風力の出力が上がって従来型発電の必要量は14,405MWまで落ち込んだ後、6 時間後には39,353MWまで伸びたという例がある。

さらにエネルギーシフトが進んだ2020年ごろに太陽光が70GW、風力が48GWぐらいの設備容量になると、これらの発電量がベースロードに食い込んでくることになる。

2030年に再生可能エネルギー比率が50%に達すると、太陽光と風力の発電量の合計は需要を上回ったり、天候によっては需要の2%程度しか供給できなかったりということが起こりえる。

これに対応するために電力を貯蔵しようとしても、貯蔵コストはまだ高く、量も十分ではない。例えばドイツでは揚水発電の容量は38GWしかなく、これはドイツ全体を30分カバーする量でしかない。

再生可能エネルギーがベースロードに食い込んでくると、従来型の発電所のフレキシブルな運用が必要になってくる。石炭やガス発電は、出力調整が比較 的容易にできるが、褐炭は出力を調整しにくい。そのために石炭やガスを燃料とする従来型の発電所はこれまで需要の変動に合わせて運転されてきたが、今後 は、需要だけでなく再生可能エネルギーの変動にも合わせていく必要がある。それは、従来型の発電所が、時には一日に六時間程度しか運転されないことを意味 する。

発電量の変動を緩和するためにも、これまでとは逆に、需要量を発電量に合わせる仕組みが必要になってくる。そのためにスマートグリッドによるデマン ドマネジメントとこれを可能にする市場メカニズムが必要になる。スマートグリッドはこうした状況に対応できるように、新しい思想で整備されなければならな い。ドイツ国内の送電網が整備されるほど、発電の調整が容易になるため、ドイツ国内の南北の送電網と汎欧州の送電網の整備が必要になる。

今後、エネルギーシフトをさらに加速していくために、ドイツでは二つの政策転換が必要になる。
一、 再生可能エネルギーの変動は蓄電だけで吸収できないため、従来の電力システムをなるべく早く再生可能エネルギーに対応したシステムに転換する必要がある。
二、 再生可能エネルギーも、種類による選別が必要になってくる。これまでの経験からエネルギーシフトは太陽光や風力に集中すべきということがはっきりしてき た。バイオマスは、太陽光や風力と比べ、四倍のコスト高であり、あくまで補助的な役割にとどまる。現在の固定価格での買取りも市場メカニズムに変えていく 必要がある。

エネルギーシフトの将来は分散型の電力供給が中心になり、すべてのプレイヤーに開かれた市場メカニズムとスマートな規制が必要になる。

ドイツ国内では、これまでのエネルギーシフトですでに発電者の形態が変わり、設備容量の50%は個人や組合が所有するようになり、消費者は同時に供給者でもあるようになった。これがエネルギーシフトがドイツ国民に支持されている理由の一つでもある。

再生可能エネルギーが増えても従来型の発電所は安定供給のために必要であるが、稼働時間は極めて短くなる可能性がある。

そのためにアメリカ等では供給の安定性を保つための設備容量のための「キャパシティマーケット」が創設されている。ドイツでも電力市場に加えて設備容量市場を創設することが議論されている。

設備容量市場とは、電力量を売買するのではなく発電するための設備容量を売買するものである。長期的に適正な電力供給を維持するために、電力会社に 対して需要を満たすために必要な供給能力(設備容量)を確保しておくことを義務づけることにより、電力会社は余剰設備容量を持つ発電事業者に対して支払い をすることにより、その設備容量を維持することができる。これにより、いざというときに必要な従来型の発電施設を維持することができる。

エネルギーシフトが進んだ結果、風力、太陽光は化石発電とコストの差がなくなってきた。将来的には風力は6-9ユーロセント/kWh、太陽光は9ユーロセント/kWh以下の発電コストになると予測されている。

最近、イギリスで新設が決まった原発では、35年間のインフレ対応を含む価格保証が求められた。これはドイツの20年間の固定価格買い取り制度に換算すると18ユーロセント/kWhに相当し、ドイツの太陽光、風力の買取価格より大幅に高い。

現在の電力卸市場では、理論的には、運転コストが安い発電から順番に並べて、供給量が需要量と一致した点の価格ですべての供給量が取引される。燃料費がかからず、運転コストが最も安い再生可能エネルギーの導入が増えたことで、電力卸市場の価格は下がり続けている。

ドイツでは2008年比で電力卸市場価格は半額になった。ドイツでは大企業は卸市場で電力を購入できるため、電力コストは大きく下がり、また、エネルギー集約型企業は再エネ賦課金が免除されているため、電力コストは半減し、エネルギーシフトの勝者といえる。

もっともこの結果、欧州委員会では、競争政策上、ドイツのエネルギー政策はドイツの大企業にEU市場に中で不当なメリットを与えかねないと警告している。

このまま電力価格が下がり続けると、従来型の化石燃料による発電所は維持することができなくなる。しかし、安定供給のための従来型の発電設備は必要なため、前記の設備容量市場(キャパシティマーケット)という考え方が生まれた。

ドイツが脱原発を決めたとき、他国では、周辺国からの輸入に頼るようになると考えた人が多かった。しかし、現実には電力の輸出が拡大し、2013年 には23TWhと過去最大となる。また、2012年にドイツの電力輸出時の平均価格は55ユーロ/MWhに対し、ドイツが電力を輸入した平均価格は52 ユーロ/MWhと、価格面でもドイツが優位になっている。

ヨーロッパでは電力需要は昼がピークであり、電力価格も昼が一番高い。ドイツは太陽光で昼のピーク時の発電量が増え続けているため、この時間帯の価 格は下落し続けている。そのため、周辺国はピーク時には自前で発電するよりもドイツから輸入したほうが安くなる。周辺国はピーク時にドイツから電力を輸入 し、ドイツが電力を輸入する場合はピーク時ではないため、この価格差が生まれる。

ドイツは2022年までに脱原発をすると決めたので、使用済み核燃料を再処理する意味はないため、2002年に再処理をしないことを決定した。

法令的にも使用済み核燃料は一定期間プールで冷却された後、ドライキャスクで保管されている。

ドイツも使用済み核燃料の処分地は必要であるが、これまで候補地とされてきたゴアレーベンの岩塩抗は適切ではないという評価が出されたため、代替地 の選定が必要になった。そのため、今年の夏、高レベル放射性廃棄物と使用済み核燃料の処分のためのサイト選定に関する法律が制定され、今後、20年間の調 査を行ってサイトを選定することになる。

この法律に基づき、政治家、研究者、国民の代表などからなる委員会が設置され、クライテリアの決定や国民の参加の方法などを決める。政治家は発言できるが議決権はない。

今回、ベルリンとともに訪問したバーデンビュルテンベルク州は、ドイツ国内でも特にエネルギーシフトに前向きである。

バーデンビュルテンベルク州では、原発依存度がかつて50%だったが、2013年のフクシマ直後の州選挙で政権交代が起きた。これが引き金になって ドイツ全体が脱原発に動いた結果、バーデンビュルテンベルク州の原発はすでに三基停止して、原発の発電割合は30%以下になった。2019年に残りの一部 が停止し、2022年にドイツ国内で最後に残りが停止する。原発をどのように停止するかは連邦議会の問題で州政府の問題ではない。

バーデンビュルテンベルク州は自動車産業をはじめとする製造業が強いが、電力コストは平均すると製造業のコストの2-3%に過ぎない。化石燃料に 頼っていては、今後、中国やインドの経済成長に伴って化石燃料価格が上昇した時にまともに影響をうけることになる。エネルギーシフトを進めることにより、 バーデンビュルテンベルク州では、再生可能エネルギーが右肩上がりで増えていき、しかも、燃料コストはかからなくなっていく。

原発の割合が高いフランスでは、産業用の電力コストがドイツより四割安いが、それでドイツより経済が発展しているわけではない。ドイツでは電力コス トが高い分、フランスより省エネが進み、電力コストトータルでは、価格ほどの差はない。kWhあたりの価格より、実際のトータルコストを重視する必要があ るというのがバーデンビュルテンベルク州政府の考えだ。

バーデンビュルテンベルク州では年間80テラワット時を必要とするが、原発を停止すると州内では60テラワット時しか発電できない。ドイツ北部に 30ギガワットの発電容量がある風力発電の電力を南にもってくる送電線の設備が必要になる。200-300億ユーロの投資が必要になるだろう。高圧電線が 通るのを嫌がる住民もいて、送電線がどうひかれていくのかまだ決まっていない。それでもこのコストはkWhあたり1ユーロセント以下にとどまるだろう。

バーデンビュルテンベルク州では再生可能エネルギーの余剰電力を揚水で蓄電してきたが、すでに限界に達した。余剰電力を水素の形で利用していく研究を進めている。

福島第一原発の事故を受けた原発停止の影響で、火力発電の焚き増しにより、2012年度に燃料費が3.1兆円増えたと経産省は主張している。

経産省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会第2回資料によると、2012年度実績という欄に、原発停止による燃料費の増加が3.1兆円と明記されている。

しかし、これは嘘だった。

経産省は、2008年度から2010年度の原子力発電電力量の平均2748億kWhから、泊3号機と大飯3、4号機の2012年度の発電電力量156億kWhを除いた電力量、2592億kWhを火力発電で代替したと仮定した。

その火力発電の内訳を石炭153億kWh、石油1206億kWh、LNG1234億kWhとして経産省が計算したのが3.1兆円という数字だ。

しかし、実際には、節電や省エネルギーへの取り組みが進んだこともあり、火力発電の焚き増しは1827億kWhに過ぎず、経産省の計算の前提よりも現実は766億kWhも焚き増しは少なくて済んでいる。

現実の焚き増しによる燃料費の増加は2.1兆円にとどまる。しかも、この中には原油価格の上昇に連動したLNGの価格上昇分も含まれているため、自 然エネルギー財団の試算によれば、原発停止の影響による焚き増しのための燃料費の増加は1.4兆円から1.6兆円と、経産省が「実績」と称している額のお よそ半分に過ぎない。

経産省は、2013年度の原発停止による燃料費の焚き増しは3.8兆円にも上るとしているが、その数字も信憑性が低いと言わざるを得ない。

 

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2013年11月21日 12:26
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