「北の山・じろう」時事問題などの日記

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落合博実「消費税増税を煽りながら自分たちは『軽減税率』を求める新聞が読者から見捨てられる日」

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経済の死角
2013年01月25日(金)
落合博実(元朝日新聞編集委員)「消費税増税を煽りながら自分たちは『軽減税率』を求める新聞が読者から見捨てられる日」
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▼全文転載


(1)

 新 聞記者OBとしてひじょうに気がもめることだが、新聞への反感と不信がかつてないほど広がりつつある。全国紙がこぞって「消費税増税を決断せよ」と政府の 尻を叩きながら、その一方で、日本新聞協会が「新聞に軽減税率の適用を」と大運動を展開してきたからだ。「さんざん消費税の増税を煽っておきながら、自分 たちだけは助けてくれとは恥知らずにもほどがある」という怒りは長く尾を引きそうだ。

 

永田町と霞が関の動きに敏感に反応した新聞業界

朝日新聞社の木村伊量社長は今年1月4日、大阪・中之島フェステイバルタワーで開かれた新年祝賀会で社員向けの年頭挨拶を行った。筆者が朝日新聞 記者時代の後輩にあたる編集局幹部によると、木村社長は経営全般にわたる課題を具体的にあげながら全社員の奮起を促したが、特に印象に残ったのは、消費税 増税に対する経営面の強い危機感だったという。この後輩のメモによると---

 「2014年春と15年秋に予定される消費税増税の大波を乗り切ることです。体力のない新聞社がギブアップして新聞業界の地図が塗り変わるようなことも頭に入れておく必要があります。なんとしても勝ち残る。それが当面する最大の経営課題です。

 増税分はそのまま新聞購読料に転嫁して読者の皆様にご理解いただくのが筋だと考えます。ただし1989年の消費税3%の導入や97年の5%への引き上げの時とは国民のフトコロの余裕が違います。読者が新聞購読をやめるきっかけになりかねません」(要旨)

 木村社長はこう訴え、「各部門が連携してあらゆる知恵を絞るように」と檄を飛ばしたという。

 もちろん読売新聞、毎日新聞など同業他社も事情は変わらない。新聞各社にとって今、消費税の増税は経営上の最大課題となっている。こうした瀬戸際回避、危機緩和の切り札として新聞各社が期待を寄せているのが、消費税増税時の「軽減税率」制度の導入による新聞へ適用だ。

民主党政権下の昨年8月、消費税増税を柱とする「社会保障と税の一体改革関連法」が民主、自民、公明3党などの賛成多数で参議院で可決、成立した。現行5%の消費税率は2014年4月に8%、15年10月には10%と、2段階で引き上げる大増税が決まった。

 消費税増税に向けた永田町と霞が関の動きをにらみながら新聞業界は敏感に反応した。

(2)

 まず昨年3月、超党派の国会議員でつくる「活字文化議員連盟」の総会に日本新聞協会幹部が出席し、新聞への軽減税率適用を訴えた。

 続いて増税法案可決後の昨年10月、青森市で開かれた日本新聞協会主催の第65回新聞大会で、「知識への課税強化は民主主義の維持・発展を損なう」として新聞に消費税の軽減税率を適用するよう求める大会決議を採択している。

 今年1月15日にも日本新聞協会が消費税増税時に「軽減税率」の適用を求める声明を発表した。声明はこう述べる。

 新聞は、国の内外で日々起きる広範なニュースや情報を正確に報道し、多様な意見・論評を広く国民に提供することによって、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与しています

 知識への課税強化は確実に『国のちから』(文化力)の低下をもたらし、わが国の国際競争力を衰退させる恐れがあります

一般国民の生活は視野に入っていない

 一連の動きの中で登場する「日本新聞協会」というのは、新聞105社、放送23社、通信4社が加盟(日本新聞協会ホームページから---2011 年11月16日現在)している業界団体だ。放送各社も加わっているが、中心メンバーは朝日、毎日、読売、日経、産経の全国紙で、現会長は朝日新聞前社長の 秋山耿太郎氏である。

 日本のような単一税率の消費税は所得の大小にかかわらず税負担額は同じなので、低所得者ほど負担割合は重くなる。この「逆進性」を緩和するために特定品目に限って税率を低くするのが「軽減税率」制度だ。

 この逆進性緩和の現実的な方策として、付加価値税(日本の消費税にあたる)が行き渡っている欧州各国では、不動産取引や医療、教育など国民の生活を支える分野を非課税にしたり、食料などの生活必需品について「軽減税率」を導入している国が多い。

 対象品目も税率も国によって差があるが、例えばドイツでは標準税率が19%だが、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍などについては7%に、標準税率19.6%のフランスでは食料品等が5.5%、新聞、雑誌、医薬品等を2.1%に抑えている。

(3)

 日本新聞協会は、この欧州税制を軽減税率適用を求める有力な根拠として持ち出し、こう強調する。

欧州各国では、民主主義を支える公共財として一定の要件を備えた新聞、書籍、雑誌にゼロ税率や軽減税率を適用し、消費者が知識を得る負担を軽くしています。『知識には課税せず』『新聞には最低の税率を適用すべし』という認識は、欧米諸国でほぼ共通しています(1月15日の声明)

 しかし、この声明では、欧州の軽減税率が食料品や水道などの「生活基盤」を主たる対象にしていることにはまったく触れず、新聞だけをことさらク ローズアップしている。大増税に苦しむことになる一般国民の生活は視野に入っていない。これでは、「自分たちだけ助かろうという魂胆か」とたちまち見透か されてしまうだろう。

 そして、なによりも、全国紙各紙は「異様」と表現できるほどの熱意で消費税増税を煽り続けたことを強調しておかねばならない。

民主党が敗北しても増税路線はびくともせず

 OBとして朝日新聞を例示する。

 税率3%から5%への消費税増税時、朝日新聞社説(96年6月23日付)はこう書いている。

 「安易な増税路線に向かうのではないかとの懸念を抱かざるをえない」と指摘し、「長引く不況に苦しんだ庶民の暮らしに五%は決して軽くない」と結んでいる。国民目線の妥当な指摘だ。それが今回の大増税では様変わりしてしまう。

 「消費税増税なしに安心は買えぬ」「やはり消費税増税は必要だ

 消費税の増税は不可避だと訴える一連の社説の中でも昨年4月6日の社説は突出している。

 増税論議で気になっている言葉がある。『まずはむだの削減だ』『まずはデフレ脱却だ』の『まずは』である。『何をやるか』ではなく『どんな順番でやるか』で争うばかりで堂々巡りが続く。

 確かに野田政権のむだ削減の努力はまったく足りない。新幹線などの大型公共事業を次々に認める。議員歳費の削減すらまだできない。こんな姿勢で増税を求めるのは許しがたい。


(4)

 だが一方では残念ながら行革で削れる金額は桁が違う。今年度に新たに発行する国債は44兆円。たとえ民主党が公約した16兆8千億円のむだ削減ができても借金財政のままだ。『まずは』と言っているうちに借金はどんどん膨らむ。

 増税も経済の立て直しも、むだの削減も、すべて同時進行で進めて答えを出さねばならないと私たちは考える(要旨)

 この社説を書いた朝日の論説委員氏は「増税も、経済の立て直しも、むだの削減も、すべて同時進行で進めろ」とおっしゃるが、筆者に言わせれば、こういうのを「言葉の遊び」、あるいは「悪い冗談」という。

 官公庁の途方もない無駄遣いは目に余る。天下りもいっこうに改まらない。過去、何度も行政改革が叫ばれてきたが、霞が関官僚の抵抗でつぶされてき た。時の政権が不退転の覚悟で時間をかけて取り組む大課題なのだ。経済の立て直しも一朝一夕で解決できる問題ではない。「同時進行」という言葉でひとくく りにできたら苦労はない。

 また、社説は「まずは」に怒りを向けているが、民主政治では政策決定の優先順位とプロセスこそ大事なのではないか。「まずは」を無視して暴走するのは、ひじょうに危険だと思う。

 そして極めつけは次の一節だ。

 「有権者の審判は消費税増税を決めた後に仰げばいい。民主党の公約違反の責任はそのときにとってもらおう」と言い切ったのである。大げさでなく唖然とした。

 これでは国民生活に重大な影響のある消費税増税について国民が選挙で判断し意思表示をする機会を奪ってしまえということになる。もはや大胆を通り越した暴論であり、筆者が社史編纂担当なら消しがたい汚点として朝日新聞社史に残さねばならない。

 案の定、消費税増税は国民の審判を経ずして決まり、昨年12月の総選挙で国民を騙した民主党は壊滅的な敗北を喫したものの、肝心の増税路線はびくともせず、やがて負担増が国民にのしかかってくる。

世論調査では50%以上が消費税増税に反対

 5%増税時との極端な論調の落差---朝日新聞上層部と論説委員室内部でどんな雲行きの変化があったのか、一線の取材記者だった筆者にはわからな い。ただ、97年秋の編集委員会議で編集局幹部から「我が社は行政機関との距離を保つために政府の税制調査会や審議会に人を極力出さないように抑制してき たが、このために読売や日経に比べて政治、経済界への影響力がどんどん低下している。今後、この規制を緩和したい」という発言があって驚いたことがある。 以降、政府へのもろもろの気遣いの度が増していったように記憶している。

(5)

 新聞各社は販売部数と広告収入の減少に苦しみ、経営は楽ではない。ここで消費税増税分を新聞購読料に上乗せすれば部数減に拍車がかかりかねない。さりとて増税分の価格への転嫁を見送ればコストが大きくなり、いずれも経営を圧迫する。

 それでいながら新聞はなぜ、経営上の難題としてのしかかってくる消費税増税に度を超した肩入れをしたのか、筆者の理解をはるかに超えている。

 消費税増税で一番苦しむのは一般の国民であり、低所得者ほど苦境に立つ。朝日新聞は昨年9月末、「消費税10%で家計負担は・・・内閣が初試算」という見出しで次の記事を掲載している。

 「野田内閣は、消費税率が10%に引き上げられた場合の家計負担の試算をまとめた。年収500万円の4人家族(会社員の夫、専業主婦の妻と子ども2人)では、消費税の負担が年間11万5千円増加。社会保険料なども含めれば、年間33万8千円の負担増が家計にのしかかる

 また、朝日新聞の昨年1月の世論調査では57%が消費税増税に反対し、民主党・野田政権による増税法案提出を前にした昨年6月の世論調査でも56%の人が法案に反対している。

 他紙はいざ知らず、朝日新聞はこうした国民の側に立って安易な大増税に異を唱えてほしかった。読者離れを少しでも食い止めるには、国民世論に寄り添うのが何よりの良策だと思うのだが、増税に慎重な姿勢を示したのは東京新聞など一部の新聞に限られた。

 経営上の不利をもたらすことは覚悟の上で「国の財政状況は厳しく国家・国民のために消費税増税が必要だ」というのなら、いかに苦しかろうとも、歯 を食いしばって耐えねばならない。今さら「新聞を特別扱いしてほしい」と軽減税率に期待をかけるのは論外である。読者の反発を招き、新聞離れに拍車がかか るだろう。

 事実、筆者の周囲でも全国紙への怒りの声をよく耳にする。

 「新聞協会が軽減税率を求める声明の中で『新聞は国民生活の向上に大きく寄与しています』と胸を張っていましたが、どの面さげて、こんなことが言 えるのかと思いました。世論を無視して増税路線を突っ走った新聞が国民生活の向上を一番阻害しているのに」とあきれる知人は朝日新聞を長年購読してくれた 人だが、最近、購読を中止したという。

 ネットの世界でも怒声と嘲笑が飛び交っている。いくつか紹介すると---

 「日本新聞協会のお笑い声明」「臆面もなく、よく言うよ」「さもしい」「どんな神経をしているのだろう」「勘違いっぷりが度を超している

(6)

 近年、新聞への批判は強くなる一方だが、ここにきて単なる怒りの域を超えて「嘲笑」の度が増してきたように感じる。記者OBの一人として情けなさがこみ上げてくる。

軽減税率制度の導入は事実上「先送り」

 さて、新聞業界が期待を寄せる「軽減税率」の行方はどうなるのか。

 新聞報道によると、連立政権与党の公明党は税率8%への引き上げ段階から軽減税率を導入するよう求めてきたが、自民党は受け入れず、低所得者対策 として1人あたり約1万円を給付する方針。そこで公明党は「15年10月に税率を10%に引き上げる段階での導入を税制改正大綱で明記してほしい」と求め た。

 自民党は、軽減税率の対象範囲の決め方など制度設計が難しいことなどを理由に渋り、結局、税制改正大綱に「消費税率10%への引き上げ時に軽減税 率制度の導入を目指す」という表現で盛り込むことで合意したという。あくまでも「目指す」だけであり、要するに先送りである。新聞がどうなるかは、まった くの未定だ。

 もし仮に近い将来、何かの風の吹き回しで新聞に軽減税率が適用されることになっても、読者の反応はいっそう厳しさを増し、経営面での差し引きの「そろばん勘定」は合わないのではないだろうか。

 「軽減税率」が導入されると課税事業者の事務量が増大するなど、いくつかの弊害が指摘されている。しかし、筆者は「逆進性」を少しでも緩和するた めのやむを得ない現実的な手段だと考えている。低所得者への「1万円給付」などという投げ銭のごときバラマキよりは、よほどましであり、消費税増税が避け られないのなら欧州各国のように食料品などの生活必需品だけは軽減税率の対象とすべきだと思う。

 しかし、新聞業界の利己的な運動がたたって「軽減税率」のイメージがすっかり悪くなってしまった。残念なことである。

 

落合博実 (おちあい・ひろみつ)
1941年生まれ。東京都出身。産経新聞記者を経て70年、朝日新聞社に入社。東京本社社会部記者時代、大蔵省(現財務省)、国税庁、会計検査院を長く担 当。併せて官公庁の税金むだ使い、不正を追及した「公費天国」など社会部の大型キャンペーンにも加わる。その後、東京本社社会部次長としてリクルート事件 の担当デスク、編集委員時代は警察の組織的な不正経理追及などに取り組む。2003年退社。以降、フリーランス。記者生活を通じて税の徴収―予算執行―税 の使途、と一貫して「税金」をテーマとした報道に携わる。著書に『徴税権力・国税庁の研究』(文藝春秋)など。

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