災害FM発希望の調べ(上) 岩手・大槌町<東京新聞2014年3月>
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災害FM発希望の調べ(上) 岩手・大槌町
2014年3月11日 朝刊
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▼全文転載
東日本大震災から三年。震災後、岩手、宮城、福島の各地に生まれた「臨時災害FM」からは、被災者の支援情報のほか、住民を元気づけ、勇気を与える歌も流れている。ラジオから届く災害FM発のあの歌は、「希望の調べ」として明日への光をもたらしている-。
最大二十二メートルにも達する津波を受けた岩手県大槌町。沖合に浮かぶ蓬蓬莱(ほうらい)島は、放送五十周年を迎えるNHKの人形劇「ひょっこり ひょうたん島」のモデルとされ、町民に愛されてきた。仮設商店街「福幸(ふっこう)きらり商店街」で四十店をまとめる自治会長の山崎繁さん(65)も当時 の放送を見ていた世代で、「うちの町の話だと思って見ていた」と笑う。防災無線から流れる、正午を知らせるメロディーもひょうたん島。商店街にも歌詞が掲 げられ、生活に欠かせない復興のシンボルとなっている。
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きらり商店街がスピーカーを使い、BGM代わりに流しているのが「おおつちさいがいエフエム(FM)」。平日午前九時からの生放送番組「まいにち おおつち」も、オープニングにこの曲をかける。パーソナリティーの金崎伊保子(いほこ)さん(62)が「町民になじみが深い」と提案した。
金崎さんは震災まで放送に縁はなかったが、地元の会合で司会を務めた経験を買われた。現在は、町民を訪ねるトーク番組「しゃべって×2」を担当。 毎週、自ら町民を選び話を聞いている。二月最終週のゲストは、やはり同局で音楽番組「スナック大御所へようこそ」を持つ伊藤陽子さん(63)。中心街で経 営していた同じ名前の店を津波で失った伊藤さんは、震災翌日から撮りためた写真を自費出版して注目を集め、現在は欧米でも講演する、異色の経歴の女性だ。
兄の死を震災半年後に確認した経緯を話す伊藤さんに、「分かってよかったですね」と声を掛ける金崎さん。「そう、骨が見つかれば自分の中でけじめ になる」。痛みを知る者同士でなければできない会話。「われわれはみんな、仏を背負っているからね」。収録後の二人はそんな表現をした。
金崎さんは当初、年配者に昔の話などを聞く番組にしたかったが、みな照れて口が重い。ところが震災について聞くと勢い込んで語りだす。話したいし 聞いてほしいのだ。「仮設にこもる人も、知人の声を聞いて『みんな悩んでる』と分かれば楽になる」と気付き、震災の話中心に切り替えた。金崎さんは、ひょ うたん島の歌詞を挙げ、「『泣くのはいやだ 笑っちゃおう』じゃないけど、悲しい悲しいだけではダメ。傷を共有して、一歩ずつ前に進まないと」。ラジオを 通じて元気を届けるのが使命だと考えている。
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同局は、三月に臨災局免許の更新を迎える。きらり商店街の女性(46)は「地区の会合に出られなくても、FMで何が決まったか分かる。何とか続け て」と、コミュニティーFMへの移行を希望する。しかし、スポンサーになる企業などが津波で流されて運営費の捻出が難しく、地形の問題で山沿いの仮設住宅 では受信が難しいなど、課題は山積みだ。
局の運営を委託されているNPO法人のラジオ班長・清水章代さん(40)は「受信が可能な特別なラジオを仮設に配るなど、町も努力している。パソ コンでも聴けるが、年配者は操作が分からなかったり、もともと持っていない」と、思うように情報が届かないもどかしさを感じている。
神戸市出身の清水さんはボランティアで訪れた大槌に魅了され、立ち上げから局に関わった。清水さんから見ると、大槌は関西と同じ「やる文化」が根 付いているのだという。「自主制作番組の割合が、あり得ないほど高いんです。知り合いが出ているからと車で聴く方も」。継続に向け、この一年が勝負。生活 に欠かせないインフラであることをアピールし、町民の手による情報発信を増やすのを目標にしている。 (前田朋子)
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